第二章-3 兄王の遺言
ケイネスの亡骸は綺麗に清められエンバーミングを施され、厳かな棺へと納められた。
棺は国葬が執り行われるまで大聖堂へと安置される。
夕方、アリーシャの下へ宰相の遣いが訪れる。
アリーシャはサロンにて宰相を待っていたが、現れたのは宰相と、ルーク・アリスターであった。
アリーシャの席の前にルークが、その隣に宰相が座る。
「……突然、このような話をする無礼をお許しください」
宰相からの提案は、アリーシャをさらに混乱に落とすものであった。
「皇国は中立の姿勢を守るものと、国力を上げ他国への圧力をかける考えのものに割れております。
陛下は我らと共に中立の姿勢を貫いておられましたが、陛下亡き今、均衡は崩れつつあります。
陛下はお亡くなりになる直前に、このルーク・アリスターに殿下を支えお守りする様に命じられました。」
一泊置いて、声低く言った。
「アリーシャ殿下には……この者と、婚姻を結んでいただきたい」
息が、止まった。
(なぜ……!?兄の遺言と言うこと……?)
「…ごめんなさい。一から説明をしてください」
真意が全くわからないまま、そう問うしかできなかった。
「陛下亡き今、最も尊きお方は殿下です。
陛下がご存命であれば殿下はどなたか高貴な方のもとへ嫁がれることになりましたでしょう。
陛下には跡継ぎはおられませんでした。
貴方がお迎えなさる方がこの皇国の行末を左右します。
私どもはこのルーク・アリスターを推挙致します。
この者であれば、武力に驕らず、殿下を補佐し支えていけるでしょう」
ルークの表情をみると、真っ直ぐにアリーシャを見つめていた。
困惑するアリーシャに対し慮ってくれているのであろう、立ちあがり右手を胸に当て、一礼した後、ゆっくりと口を開く。
「ルーク・アリスターと申します。
陛下から、貴方様の夫として、公私共にお支えするよう命じられております。
ご決断を急かすようなつもりはございません。
…よくお考えください。
どのような決断をされたとしても、我ら臣下は殿下をお支えすることには変わりはありません。」
葛藤の末、アリーシャは唇を噛みしめ、静かに答えた。
「……考える時間をください」
そう、答えることしか出来なかった。




