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第六章-2 夜の知らせ

 それから数日、王城は表向き、何事もなく過ぎていった。

 ルークは首都の近郊にあるサムロール領に視察のためジークと数名の騎士を連れて出かけていた。


アリーシャは一人執務を行なっていた。

そして、夕方、政務を終え、居室へと戻ろうとしたところで、一人の文官がアンナへと一通の短い書状を渡してきた。

封は簡素で差出人の名は、記されていない。

だが、内容を見た瞬間、誰のものかはわかった。


西のサムロール領について、急ぎ、姫に伝えるべきことがある。

王配殿下は、現在視察に出ていると聞く。

今は、余計な耳を入れたくない。

夜、庭で――君が案内してくれれば、それでいい。


 アンナは、手紙を握りしめた。

宰相に伝える前に、姫様本人が知っておくべき内容かもしれない。


(……わたしが、動くべき)


 そう思った時、自分が“誘導されている”ことに、アンナは気づいていなかった。





 ネリーは、その夜、異変を感じていた。

理由は、はっきりしない。

 ただ、カインとサロンで話した後から、アンナの動きがほんのわずかに違う。

声も、態度も、いつも通り。

だが、浮足立っているようにみえる。


「アンナ、姫様の湯の準備は――」


「はい、すぐに」


 返事は早い。

だが、どこか上の空だった。

ネリーは、それ以上踏み込まなかった。

確かな根拠はない。

問いただす理由もない。

――それでも。


(……何を考えているの?)


 その感覚だけが、胸に残った。

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