第65話:女神の帰還。ご褒美と化した『お仕置きの抱き枕刑』
ズタズタに引き裂かれた障子。羽毛が雪のように舞い散る、惨状と化した別荘の和室。
超次元の枕投げバトルによって完全に崩壊したその空間を、太陽が爆発したかのような、目も眩む『白銀の閃光』が完全に飲み込んだ。
ピキィィィィィィィィィンッ!!!!
閃光と共に放たれたのは、空間の熱量を強制的に奪い去る『絶対零度の波動』。
乱闘を繰り広げていた五人の美少女たちの動きが、凄まじいプレッシャーによって一瞬にして静止する。
宙を舞っていた水弾枕も、見えない粘糸も、すべてがカチンッ!と音を立てて凍結し、床へと落下して砕け散った。
「……あ、……」
「な、なに……この、匂い……っ!」
五人が息を呑んで見つめる視線の先。
光が収束した布団の中心から、ゆっくりと立ち上がったのは。
ジャージ姿の凡庸な少年ではない。
純白の薄衣を纏い、光を乱反射する白銀の長い髪を揺らす、絶世の女神。
この世のすべての美と残酷さを凝縮した、生態系の頂点たる大妖怪。
日高清春の真の姿にして、彼女たちの魂の主――『白鐘の姫』であった。
「……随分と、楽しそうに泥遊びをしているじゃない。私の、ベッドの上で」
姫は、爛々と輝く金色の蛇の瞳で、五人を冷酷に見下ろした。
その声は鈴を転がすように美しいが、耳にした者の魂を直接凍りつかせるような、圧倒的な神威と怒りを帯びている。
雪山の極限の冷気と、脳髄を麻痺させる猛毒の甘い蜜の匂いが、爆発的に部屋中に充満した。
「あ、あぁっ……お姉様……っ!」
「神様……っ、清春様……っ!!」
五人は、その圧倒的な存在感を前に、その場に崩れ落ちるようにして両膝をついた。
だが、彼女たちの表情に『恐怖』は微塵もなかった。
あるのは、ついに姿を現した自分たちの「唯一の神(マタタビの原液)」に対する、限界を突破した歓喜と、狂おしいほどの情欲だけだ。
「……黙りなさい、汚らわしい雌犬ども」
姫が、白い足袋に包まれた足で、ドンッ!と畳を強く踏み鳴らした。
それだけで、別荘全体が地震のように揺れ、五人の口が物理的な冷気によって強制的に塞がれる。
「……いいこと? 私が最も嫌うのは、私の平穏な睡眠が脅かされることよ。……それを、お前たちはシフト制だの協定だのとふざけた御託を並べ、あまつさえ私の寝床を戦場に変えた。……万死に値するわ」
姫の怒気は本物だった。
事なかれ主義の少年としての限界のストレスが、大妖怪としてのサディズムと完全に融合している。
「……罰を与えてあげる。お前たちの、その浅ましい人間の自尊心を徹底的にへし折る、屈辱的な罰をね」
姫は、白く細い指先をスッと五人に向けた。
「お前たちは今から、人間でも眷属でもない。……ただの『物』よ。私の安眠を補助するための、ただの『寝具(家具)』として、朝まで微動だにせず私に奉仕しなさい」
その瞬間。
姫の『念動力』が発動し、五人の身体が目に見えない巨大な手に掴まれたように、空中にふわりと浮き上がった。
「えっ……きゃあっ!?」
「ひゃんっ!」
抵抗などできるはずがない。圧倒的な力の差の前に、彼女たちはされるがままに、姫の布団の周囲へと強制的に配置されていく。
「まず、水無月結衣と猫宮珠希。お前たちは『両腕の抱き枕』よ」
ドサッ、と。
結衣と珠希が、布団の左右に配置され、その間に姫が滑り込む。姫は二人の身体に両腕を回し、完全にホールドする形で抱き寄せた。
「次に、八束綾。お前は『足の掛け布団』よ。私の冷たい足を温めるために、ただの重りとして巻き付いていなさい」
「あっ……!」
綾の身体が、姫の足元から腰にかけて、下半身を覆うようにピッタリと密着させられる。
「そして、波澄澪と御子柴天音。お前たちは『フットレスト(足置き)』よ。そこで私の足を下から支え、泥のように這いつくばっていなさい」
最後に、澪と天音が、布団の最下部にうつ伏せで配置され、その頭や顔の上に、姫の両足がズンッと容赦なく乗せられた。
結衣と珠希を腕で抱き、綾を足に絡ませ、澪と天音を足置きにする。
五人の美少女を完全に物理的な『寝具』として固定する、人間としての尊厳を完全に無視した、最恐の女神によるお仕置きの配置。
「……どう? 身動き一つ取れず、ただの物として扱われる気分は。……自分の無力さと愚かさを噛み締めながら、朝までここで凍えていなさい」
姫は、自らのサディスティックな処刑に満足し、目を閉じた。
これで、彼女たちは屈辱に震え、身の程を知るだろう。自分はあとはこのまま、温かい(物理)寝具に包まれて、朝まで泥のように眠るだけだ、と。
――しかし。
姫(清春)は、致命的な勘違いをしていた。
すでに彼女たちの魂は、誇りや自尊心などという安いものはとっくに捨て去り、完全に『神のマタタビを貪る変態』へと進化しきっていたということを。
「……はぁっ……あぁぁぁぁっ……!」
沈黙の密室に、震えるような、とろけきった熱い吐息が響いた。
右腕に抱き抱えられている水無月結衣だった。
「お姉様……っ、キヨくん……っ。私の身体を、ただの抱き枕だなんて……っ。そんな、そんな最高の扱いで私を縛り付けるなんて……っ!」
結衣は、屈辱に震えるどころか、姫の腕の中で完全に発情の限界を突破し、白目を剥きそうになりながら身悶えしていた。
「あぁっ、お姉様の極上の匂いが……ゼロ距離で、私の全身を包み込んでる……っ! 私、もう人間じゃなくていい……! 一生、お姉様の専用抱き枕として生きるわぁぁっ!!」
「結衣だけずるいっしょ!!」
左腕の珠希も、負けじと姫の胸元に顔を押し当ててきた。
「んんっ、はむっ! ちゅぷ……っ! キヨっちのドレス越しのおっぱいの匂い、最高……っ! あたし、もっとキヨっちの体温吸い取るっしょ! れろぉ……っ」
珠希の化け猫のザラザラとした舌が、姫の鎖骨や首筋を、ドレスの上から狂ったように舐め回し始めた。
「ちょっ……!? な、何をしているの! お前たちは物よ! 動きなさいとは言っていないわ!!」
姫が慌てて冷気で威圧しようとするが、彼女たちの『悦び』の熱量は、絶対零度のプレッシャーすらも溶かしてしまいそうなほどに高まっていた。
「……ふふっ。清春くんの、足の冷たさ……。私の身体で、全部温めてあげるからね……っ。んちゅ……じゅるる……っ」
下半身に巻き付いた綾が、ただの掛け布団であるはずなのに、まるで蛇のようにウネウネと動き、姫の太腿やふくらはぎに、服の上から執拗に口づけを落としてくる。
「ひゃんっ!? や、八束……そこはダメ……っ!」
姫の口から、威厳のない可愛らしい悲鳴が漏れる。
だが、本当の地獄は、さらにその足元にあった。
「……あぁっ。神の、御御足が……。私の顔を、この汚らわしい水棲生物の顔を、直接踏みつけてくださっている……っ!」
「んぐっ、んんんっ……!! ご主人様……っ! もっと、もっと体重をかけて、私の顔を潰してください……っ! そして、この足の裏の極上の汗を、私に……っ!」
足置き(フットレスト)にされた澪と天音が。
姫の足の裏に顔を踏みつけられながら、歓喜の涙を流し、その足の指や裏を、二人がかりでズブズブと音を立てて舐め回し始めたのだ。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?!?」
生態系の頂点たる絶対的女神が、完全にドン引きして悲鳴を上げた。
罰のつもりだった。物理的に拘束して、屈辱を与えれば大人しくなると思った。
だが、現実は真逆だった。
ゼロ距離で神に接触し、さらには「物として扱われる(ドMの琴線に触れる)」というオプションまでついたこの状況は、五人のマタタビジャンキーたちにとって、文字通り『天国(ご褒美)』でしかなかったのである。
「や、やめなさい! 私を舐めるな! お前たち、狂っているわ! 離れなさい!」
「……ダメよ、お姉様。だって私たち、お姉様の『寝具』なんでしょ?」
結衣が、蕩けた笑顔で姫の腕にさらに強く絡みつく。
「寝具は、持ち主から離れないっしょ! さあキヨっち、朝までたっぷり舐め回して、綺麗にしてあげるからね!」
珠希が、姫の耳たぶを甘噛みする。
「んちゅ……ちゅぷ……っ、ご主人様、もっと足を押し付けて……っ」
天音が、完全にメス堕ちした声で足裏を貪る。
「あああああああああっ!!!!」
姫(清春)の、絶望の叫びが夜の別荘に響き渡る。
逃げようにも、自分の念動力で五人を自らの身体にガッチリと密着させてしまったため、解除する隙すら与えられない。
絶対零度の威圧も、発情しきった変態たちには全く効果がない。
『……マスター。見事な自爆ですね。まさか自ら進んで、五匹の飢えた獣の檻の中に入り込み、自らを拘束するとは。……この「圧倒的舐められ地獄」は、あなたの判断ミスが招いた結果です。朝まで存分に、可愛がられてください』
シキの音声すらも、完全に清春を見捨てていた。
右から左から、上から下から。
五人の美少女たちによる、限界突破の愛撫と、唾液による妖力の搾取。
罰を与えるはずが、結果的に最高級の『マタタビの原液』を身体を張って提供する羽目になった女神は、涙目で喘ぎながら、永遠にも思える夜を耐え忍ぶしかなかったのである。
◆
翌朝。
鳥のさえずりが、破壊された和室に差し込む。
「……んん……ふふっ、お姉様……」
「……キヨっち、好き……」
布団の周りには、五人の美少女たちが、それぞれに満足しきった、極上の幸せに包まれた寝顔で眠っていた。
彼女たちの肌は昨日以上に発光するほど美しく、完全に「致死量の妖力」を摂取して昇天している状態だ。
そして、その中心。
「……」
変身が解け、元のジャージ姿に戻った日高清春が、虚空を見つめて仰向けに倒れていた。
その身体は、全身が五人の銀色の唾液でベトベトに汚れ、キスマークだらけになり、服ははだけ、変身の反動と、一晩中身動きが取れなかったことによる激しい筋肉痛で、指一本動かすことすらできなかった。
「……シキ」
『はい、マスター。おはようございます。現在のマスターの生命力は残り2%です』
「……俺の、平和な日常って……どこにあるんだろうな……」
清春の目から、一筋のツーッと乾いた涙がこぼれ落ちた。
事なかれ主義の少年の、完全なる敗北。
温泉別荘での特別監視合宿は、五人のヒロインたちに「神の抱き枕になる」という究極の成功体験(ご褒美)を与えただけで、何一つ解決することなく幕を閉じた。
学園に戻れば、またあの地獄の『共同管理協定』が、今度は「あの夜の味が忘れられない」というさらなるエスカレートを伴って再開されることは想像に難くない。
白鐘の姫の圧倒的な力すらも、狂気的な愛の前では無力である。
出口のない五等分のマタタビ地獄は、清春の胃壁が完全に消滅するその日まで、まだまだ続くのであった。
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次回お楽しみに。




