第13話 あんま思い詰めんなよ
机につっ伏している田所。
その顔は、僕の方へ向けられている。
だから、異変にはすぐ気づいた。
「……なんで」
閉じたまぶたの下には、濃いくまが出来ていた。
彼の腕から、なにかがチラリと覗いている。
よく見てみると、それらは怪奇事件の新聞や雑誌だった。
昨日、田所が何をしていたのか――。
それを想像するのに、さほど苦労はしなかった。
「んぉ、蒼井」
じっと見つめていたからか、僕の気配を察知した田所が目を覚ます。
まだ寝ぼけているらしい。
口元がだらしなく緩んでいる。
「もう怒ってねぇの?」
「あ……あれは、僕が悪かったんだ。
ごめん」
田所は大きなあくびをすると、ぐぐっと背筋を伸ばして言った。
「……考えたんだけどよ」
「うん」
「ちんちんって、ないとダメか?」
「え……?」
呆気にとられて、開いた口が塞がらない。
そりゃあ、ないとダメだろ。
「男でもちんちんない奴がいるんだと。
ニューハーフとか、手術してとってるとか」
「……それは、性別に悩みがあるからだろ。
僕は男のままがいいよ」
「ちんちんがない男でいいだろ。
俺の目には、蒼井は普段となんも変わんねぇのに……なんでちんちんにこだわるんだよ」
「それは……」
言いかけて、詰まった。
改めて考えてみると、漠然とした衝動のように思える。
ふと、奥田さんのことが脳裏をよぎった。
僕は、彼女に胸を張れる男でいたい。
そのためには、ちんちんがないといけない気がした。
なんで?
「……ちんちんがないと、セックスできないから?」
「んなことねぇだろ」
ぷは、と田所が笑う。
つられて、僕も小さく笑った。
「あんま思い詰めんなよ」
「うん。……田所も」
視線を新聞や雑誌に移す。
それに気づいた田所が、慌てて机の上に覆いかぶさった。
「わ、わざわざ言うな! 恥ずいだろ!」
顔を赤くする田所を見て、笑いが堪えきれなくなっていく。
「笑うんじゃねぇー!!」
田所の情けない声が、教室中に響いた。
ところで……
――ちんちんがないと、セックスができないから?
――んなことねぇだろ。
雰囲気で笑ってしまったけど、
ちんちんがないセックスって、なんだったんだろう。
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