第1話 ちんちん喪失
物事には順序があると思う。
セックスの前には前戯があって、
前戯の前には会話とか、部屋の掃除とかがあるように。
だから、まずは僕のつまらない語りから聞いてほしい。
どうして僕が、ちんちんを失ったのか――
◇
何もない空間で、僕は鼻をほじってた。
人差し指の爪で鼻くそを引っかけて、奥からずるっと取り出す。
汚くない、健康的な鼻くそが出てきた。
……こういう動画、好きなんだよな。
角栓を抜くやつとか。
耳かきをするやつとか。
僕は、鼻くそを丸めて捨てようとした。
真っ白い空間だ。
一つくらい鼻くそがあったところで、バレやしないさ。
そうして人差し指で鼻くそを弾いた、そのときだった。
ピピピピピッ!!
「どわぁ!?」
けたたましいアラームの音で目が覚める。
僕は、いつもの自室にいた。
「なんだ夢かぁ」
安堵のため息を吐く。
思い返してみれば、僕が鼻くそを弾くなんてありえない。
鼻の穴が大きくなったらダサいからと、昔から気をつけているんだ。
「……ん?」
安心したのも束の間。
僕は、思わず首を傾げる。
股間に、違和感があった。
服の上から手でなぞってみる。
上に……下に。
?
おかしい。
僕の股間の上が、こんなに滑らかなはずがない!
「嘘だろ、おい……っ!」
ズボンを脱ぐ。
ちょっと迷って、パンツも脱いだ。
ない。
どこにも、ない。
「そんな……僕の、ちんちんが……」
パンツを握りしめた手が震える。
寝る前まではあったはずなのに、いったいどうして……。
物事には順序があると思う。
セックスの前には前戯があって、
前戯の前には会話とか、部屋の掃除とかがあるように。
だが、世の中には順序をかっ飛ばしてやってくる事象があるのだ。
中学二年生にして、僕は初めてそれを理解した。
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