#78 破壊と創造
レイがGH本部を目指していると、前の方から暗視ゴーグルのようなものを身につけて、アサルトスーツを着た男たちが十数人やってきた。
「見つけたぞ! 死装束の幽霊だ!」
先頭にいたリーダー格の男が叫ぶ。彼らもGHの仲間なのだろう。
「総員、神器を発動せよ」
「はっ!」
すると、彼らが身につけている指輪から虹色のサバイバルナイフのようなものが出現した。
「この人たちもか……!」
レイは速度を緩めると、彼らを避けるように大きく膨らんで進む方向を変えた。
「逃すな、広がるようにして取り囲め!!」
リーダー格の男が叫ぶと、彼らは横に大きく広がってレイの行手を阻む。
「ちっ」
レイが舌打ちをして立ち止まると、その直後に後ろから刀が振り下ろされた。美玲がもう追いついて来たのだ。既のところでレイは気がつき、仰け反るようにして避ける。しかし、刃の先が少し頬を掠めてしまった。
「痛っ!」
その様子を見てアサルトスーツの男たちが、一斉にレイに飛びかかろうとした。
「動かないで!!」
美玲の叫ぶように発せられた言葉に、男たちは動きを止める。
「これは私の獲物よ」
「しかし美玲殿。それでは……」
「黙ってなさい! あなたたちはあくまで私たちのサポートのはずよ。でしゃばらないで」
「はっ!」
男たちが一歩下がって隊列を整えた。
「この刀、大ちゃんから返してもらったの」
美玲が刀をうっとりと眺めながら、刀身を艶かしく指でなぞった。
「私が前に使っていた時よりも強力になっている気がするわ。うふふ、愛の力かしら。……この刀であなたを切る。そして達海のことも。必ず私が!」
「!!」
絶望的な状況ではあるが、彼女の言葉で少なくとも重要な情報を得ることができた。達海はまだ生きている。
「絶対にそんなことはさせない! 達海と一緒に皆んなで帰るんだ」
レイは美玲に向かって拳を構えた。
達海の少し先には白髪で綺麗な顔立ちの女、カモクが佇んでいた。
彼女一人か。こちらに気づいている? 此処で戦わなければいけないのか。いや、彼女は神器の指輪をしていない。彼女は武器を持ってはいない。戦う必要はない。ただ彼女の横を通り抜ければいい。レイたちのところに急がなければ。
達海は全速力で走った。今までで一番速く。カモクの横を通り抜けた。
その瞬間。突然地面からマーブル柄で虹色の大きな棘が四本、勢いよく突き出してきた。
体が動かない。早くレイたちのところに行かなければならないのに。動け、動け、……どうして動かない。
達海は自分の右手に目をやった。そして、彼の顔は青ざめる。地面から突き出た棘は、手のひらを貫通して天高く伸びていた。左手も右足も、そして左足も。大きな棘が貫通して体に穴を開けている。そう理解した途端にじわじわと痛みが襲いかかってくる。
この虹色の武器……神器と同じ? でも彼女は指輪をしていない。神器を持っていないはずだ。どこから出した? どうやって出した? 達海の頭に様々な疑問が駆け巡った。
「大輝の死体を運んでいた車が、悪霊に襲われたそうだ」
後ろからカモクの声がする。その声は段々と達海に近づいて来ているようだった。
「その直後、大輝の死体が付けていたネックレスが消えたそうだ。彼の死体とそれを運んでいた警官は無事だったようだけれどね」
「あ、あ……」
達海が呻き声を出した。体が熱くなっていく。頭の中で声が響く。
——たっちゃん——
「……神器は如何なる衝撃を与えても、絶対に破壊される事はない。けれど、大輝が所有していた刀の神器、君との戦闘直後に見てみたら少し欠けていたんだ。神器としての機能も失ってしまっていた」
——たっちゃん、たっちゃん——
頭の中で響く声が強くなっていく。熱い、熱い。息が荒くなっていく。
カモクが達海の視界に横から入ってきた。
「要するに僕が言いたいことは……」
カモクが達海の正面に立つ。彼女は手に太い棘状の、神器のようなものを出現させると、それをゆっくりと達海の腹に近づけていった。
「どうして君がそんな力を持っているんだい?」
ズプリ
あ……死……
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
達海は叫ぶのと同時に、体を丸めるように手足を前方向に思いっきり引っ張った。
バキッ!
達海の手足に突き刺さったそれぞれの棘は、手のひら部分、足の裏部分でポッキリと折れて抜け落ちた。手足の患部からは、血液が噴き出して白い煙のようなものが昇っている。そのようすを見たカモクは驚いて目を見開いた。
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」
達海がその場でしゃがみ込んでカモクのことを睨みつけながら、怯えるように体をぶるぶると震わせる。
「ははは……君と戦うのは骨が折れそうだ」
「あああああああああ!!!!」
達海は叫び声をあげながら、苦笑いのカモクに飛びかかった。




