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#77 脱出

 レイ、マッチョ、ピエロの三人がGHの本部を目指して山林を駆けている。


「!!」


 彼らの目の前には二人のGHが立ち塞がった。一人は髪の長い綺麗な女。もう一人は前髪で目を隠した陰湿そうな男だった。


「やっと会えた、死装束の幽霊。ああ、会いたかったわ。これで大ちゃんの復讐ができる。あなたは私が殺してあげる」


 髪の長い綺麗な女、美玲が狂気的な顔で刀の神器を顕現させた。


「小生も貴公たちのことをここで祓う。さあ、小生の力を試させろ!」

 

 前髪で目を隠した男、裕樹は短剣の神器を顕現させた。


「あの女、殺すだなんて面白いですね。俺たちとっくに死んでるよ。ケタケタケタ」


 ピエロが美玲に向かって皮肉を言った瞬間、彼らの後ろから屈強な男が斧の神器を振り下ろしてきた。


「残念。見えてるね、見えてるよ」


 斧の神器がピエロの後頭部に当たる直前に、笑顔のピエロが突然現れて屈強な男、剛の腕を掴んだ。


「うおっ、お前さん、頭の後ろにでも目がついているのかい」


「ケタケタケタ」


 笑顔のピエロと剛が力比べの拮抗状態となる。


「おいお前さんたち、そこらで糸目の馬鹿を見なかったか?」


「見たよ。私たちの仲間がきっと今頃やっつけてる」


「ははっ、そうかい」


 剛が冷や汗をかきながら軽く笑った。


「ナイスだピエロ! おおおおお!!!!」


 マッチョが剛の腹目掛けて勢いよくパンチを繰り出した。その凄まじい威力に剛はよろめく。


「ぐおっ」


「そこの笑ってるピエロ、この男はワタクシたちで相手するぞ!」


 闘志に燃えるマッチョに向かって、笑顔の太っちょピエロがゆっくりと頷いた。


「良いですよ、良いでしょう! それでは、俺たちはこの二人を相手しながら先を急ぎましょう。良いですね? レイ」


「うん」


 レイが短く返事をして美玲と裕樹を睨みつけた。


「やる気満々って感じですな。小生も全力で相手しよう」


「死装束の幽霊は私が殺すんだから、裕樹くんは手を出しちゃダメよ」


「むむぅ、それでは小生はピエロを相手しよう」


 美玲と裕樹が神器を構えた。


「ケタケタケタ、ではでは行きましょう。さようなら」


 ピエロはそう言うと、ジャンプをしてその勢いで地面に潜り込んだ。透過したのだ。


「あっ、ずるいぞ」


 裕樹が慌てて叫んだ。ピエロの行動を見たレイは自分も透過して地面に潜り込もうとする。相手は人間だ。そんなところまで追って来れる訳がない。

 すると、美玲が何も言わずにコートのポケットから札を取り出してそれを手放した。札はひらひらと自由落下していき、地面に触れる。


「ぎゃう!!」


 その瞬間にピエロが地面から飛び出してきた。


「ビリビリビリビリ。痺れるぅー」


 ピエロがふざけたように小刻みに体を震わせる。


「私たちは対幽霊の組織よ。そんな小賢しい手が通用する訳ないでしょ」


 その様子を見てレイは透過するのをやめた。それと同時にGHの恐ろしさを再認識した。こんな奴らに勝てるのだろうか。いや、倒せなくてもいい。達海を助けることさえできれば。


「ピエロ! 走るよ!」


「ええ! 本部を目指しましょう」


「だから君たちのことはここで祓うって……」


 レイとピエロが走り出すとピエロの下から楽顔ピエロが現れた。ピエロは楽顔ピエロの顔を踏み台にして高く飛ぶと美玲と裕樹を飛び越える。レイもピエロに続いて楽顔ピエロを踏み台にして彼らを飛び越えた。


「ああーー!!」


「…………」


 レイは着地すると軽く後ろを振り向いた。


「マッチョ! 絶対、達海を連れ帰るから! 死なないで!」


「……ああ! 任せたまえ!!」


 剛の攻撃を避けながらマッチョが答えた。レイとピエロは本部に向かって走っていく。


「早く追いかけないと! おああ?」


 レイとピエロを追いかけようと走り出した裕樹は、何かに躓いたかの様によろめいた。地面に仰向けで寝そべる楽顔ピエロが裕樹と美玲の足を掴んでいたのだ。


「鬱陶しい」


 美玲が楽顔ピエロ目掛けて刀を振り下ろす。すると、楽顔ピエロは「ふにゃーーーー」という奇声を発しながら消滅していった。

 美玲は少し振り返って剛を横目に見ると冷たい声を淡々と発した。


「剛さん、ここは任せました。私と裕樹くんはあれを追いかけます」


「ああ、行ってこい」


 剛はマッチョと笑顔ピエロに向かって斧を構えた。


 


「もう追いつかれそうだよ」


 レイが走りながら後ろを振り向くと、美玲と裕樹はすでに十メートルほどの距離にまで迫っていた。


「仕方ありません。レイ、あなたが囮になってください。俺は先に進みます。ケタケタケタ」


「いやだ! 私も本部に行って達海を助けるんだ」


 レイは自分よりも少し前を走るピエロに向かって憤怒した。それと同時にレイには莫大な不安が襲いかかってきた。

 ピエロとは利害が一致しただけであり、完全な協力関係ではない。ここで切り捨てられてしまっても不思議なことではないのだ。


「冗談です。あなたは此処で除霊されるべきではない。俺にもっともっと面白いものを見せておくれ。このまま真っ直ぐに進めば本部が見えてくるはずです。さあ、進みなさい進むのです」


 ピエロがくるっと方向転換をして立ち止まった。


「……!! 私が行って良いの?」


 驚いたレイは立ち止まって、追い越したピエロの方を見た。


「さっさと行きなさい。俺が此処で彼らの足止めをします。さあ」


「今だけは……ありがとう!」


 レイはピエロに礼を言うと本部を目指して走っていった。



「やあああああああ」


 ピエロに追いついた裕樹が飛びかかり短剣を横に振った。ピエロはそれをさらりと避ける。


「貴公、一切報告で聞いていない容姿をしているが何者だ?」


「俺はピエロ。楽しいことを求め、退屈を嫌う道化師」


 ピエロが裕樹からの質問に口角を上げながら答えた。


「今回の俺の役回りは終わりました。さあ、俺に最高の絶望を見せておくれ。さあさあさあさあ、準備が整っていく。ドキドキドキドキ。最高のショーが始まる予感」


「むっ? 貴公は何を言っているんだ時間稼ぎか?」


「大切な家族のすれ違い。それは悲劇? それとも喜劇? 最高じゃないですか。さあ、俺に見せておくれ。醜く美しい人の心を……」


バシュ!


 ピエロが両腕を目一杯に広げて戯言を言う最中、彼の首は宙を舞った。美玲が刀を薙ぎ払ってピエロの首を飛ばしたのだ。


「五月蝿い。邪魔だよ」


 ピエロの首がぼとりと地面に落ちると、その生首は嗤った。

 ケタケタケタケタ。

 段々と生首も胴体も消えていく。生首が完全に消えるまで薄気味悪い笑い声が辺りに響いた。

 その様子をゴミを見るような目で眺めていた美玲は、ぽつりと暴言を吐き捨てた。


「……気持ち悪い」



「おや、霊魂が見当たらない」


 裕樹が辺りをキョロキョロと見渡す。


「そんなのどうでもいいよ。早く死装束の幽霊を追おう」


 美玲はレイが走り去って行った方向を睨みながら言った。




 達海はGH本部からの脱出を試みていた。辺りを警戒しながら慎重に出口を目指して進んでいく。

 今のところは見張りの警察官の数は少なく、案外すんなりと進むことができている。美波が言っていた通り、此処にいた殆どの警察官がGHの補助に行ったのだろう。

 達海はエントランスまで辿り着いた。そこは受付嬢が一人いるだけで簡単に突破することができそうだ。しゃがんで通れば受付台の死角でこちらの事は見えないだろう。あとは、自動ドアさえ通り抜けることができれば。

 達海は息を整えると、腰を屈めて一気に入り口に向かって駆け抜けた。センサーが達海の体に反応して自動ドアが開く。


「え? ……何? 幽霊? ……な訳ないか。ここ結界はってるって副局長が言ってたし。誤作動……かな」


 受付嬢が閉じていく自動ドアを凝視して独り言を呟いた。


 

 達海はGH本部からの脱出に成功した。

 早く、早くレイたちのところに行かないと。その一心で山林を駆け降りる。

 達海は途中、あることに気がついてその場に足を止めた。彼の行手の少し先には、白髪で綺麗な顔立ちの女が佇んでいた。

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