24.野菜を育てよう
スティクォンとメルーアはリルを中心にどの区画に何を作るかで迷っている。
「僕としてはこういうイメージなんだけど」
スティクォンはメルーアが【土魔法】で出してくれた土を使ってジオラマを作る。
そこには区画ごとに段々畑になるような感じだ。
その隣には野菜用の畑を作った。
「まずはここに野菜用の畑を作る。 最初はなるべく育て易い野菜からにしよう。 余裕ができたらここに溜池を作るとしてここから水路を通して田んぼを作るのがいいのかな?」
「はい、そうすれば麦が作れます」
「ならば、野菜畑、田んぼの順番に作成しよう」
スティクォンの案にメルーアとリルが頷く。
スティクォンたちは野菜畑の予定地へと移動する。
「リル、ここの土地一画を耕してくれないか? 野菜を育てるためには開墾が必要だ」
「わかりました。 それでは私はここの土地を耕していきます」
「耕し終えたらみんなで野菜の種を蒔いていく。 メルーアは【水魔法】と【木魔法】である程度発育するように頼む」
「わかりましたわ」
「それじゃ、始めよう」
リルは鍬を持つと【農業神】を発動する。
するとすごい勢いで土を耕し始めた。
「リル! あまり無理はするな!」
「リル、1人で大丈夫?」
「大丈夫です! これくらいなら平気です!」
それからリルは10平方メートルを耕し終わる。
普通に耕せば1日はかかるほどの広さをリルはあっという間に耕した。
さらに今度は肥料を混ぜながら再度耕していく。
メルーアが作った土地はリルの力で植物を育てるのに最適な環境へと変化する。
「こんなところでしょうか」
「ああ、試すにはちょうど良い広さだ」
「それで最初は何を育てるのがいいかしら?」
「ちょっと待ってください」
リルは【農業神】を発動して野菜の種を見ていく。
「そうですね・・・野菜ならこのトマトにピーマン、ジャガイモ、ナス、人参が育てやすいようです」
「早速種を蒔こう」
リルはまずトマトの種を手に取ると【農業神】を発動する。
「えっと・・・このトマトですが種を植える間隔はだいたい50センチであまり水をやりすぎないほうがいいらしいです」
「なるほど」
「まずは育つかどうかですわね」
「試しに植えてみますね」
リルは耕した土地に3つほどトマトの種を植える。
「こんな感じでしょうか。 スティクォンさん、メルーアさんもこのような感じで種蒔きをお願いします」
「わかった」
「お任せください」
スティクォンとメルーアはリルの指示通りトマトの種を植える。
「それではメルーアさん、水をお願いします」
「たしか水は少なめがいいのでしたわね。 行きます」
メルーアは【水魔法】を発動すると軽く地面が濡れる程度に水を撒いていく。
「これぐらいでいいかしら?」
「大丈夫です。 これくらいなら問題ありません」
「育つまでどれくらいかかるんだ?」
「えっと3~4ヵ月ほどです」
普通なら時間をかけて根気よく育てないといけない。
しかし、ここにはメルーアがいる。
メルーアは【木魔法】を発動すると地面のトマトの種の成長を促進させた。
するとトマトが発芽して見る見るうちに育っていく。
ある程度育つと魔法を止める。
「このくらいでどうかしら?」
「枝が垂れ下がってるな」
「支えが必要です」
スティクォンは木を持ってきて支柱になるように木を加工する。
程なくして支柱をいくつか作成した。
リルは支柱をとりつけてトマトの枝を固定する。
「メルーアさん、もう少しトマトを育ててもらえませんか?」
「わかりましたわ」
メルーアは【木魔法】を再度発動してトマトの成長を促進する。
それからしばらくすると花が出て実が出来上がり、少しずつ大きくなっていく。
実は最初青かったが少しずつ赤みを帯びて、やがて真っ赤に育つ。
「このくらいかしら?」
「十分です」
「もう育ったのか・・・メルーアの【木魔法】はすごいな」
「ありがとうございます。 せっかく育ったのですから食べてみましょう」
真っ赤に育ったトマトを3つ収穫するとスティクォンたちは実に齧りつく。
「「「不味い!!」」」
酸味が強すぎ、苦みが口内に広がる。
普通に考えれば食べられるだけマシではあるが・・・
「普通に市場で売っているトマトはもっと甘みがあって美味いんだけどなぁ・・・」
「何か足りないものがあるのではないでしょうか?」
「調べてみます」
リルは【農業神】を発動してトマトを見る。
「うーん・・・土が酸性であるか土の栄養が足りないのか水の栄養が足りないのか、それとも受粉に問題があるかもしれません」
「受粉?」
「花が育った時に受粉せずにそのまま育てた結果酸っぱいトマトが出来上がった可能性があります」
「なるほどね・・・とりあえず味については保留として、この場所で野菜が育つことは確認できたのは大きいことだ」
「そうですわね」
スティクォンたちは頷きあう。
それからピーマン、ジャガイモ、ナス、人参を育ててみたが味以外は問題ないことが発覚した。
「どの野菜も無事に育つのは確認できました」
「問題は味ですわ。 要改善ですわ」
「これからここで生活するなら味の改善は必須だな」
スティクォンたちはその場で考える。
「受粉させるには昆虫が必要ってことだな」
「そうですわね」
「けどここには昆虫なんていませんよ?」
「そうなると外部からまた連れてくる必要があるな」
「とりあえず爺に相談してみましょう」
スティクォンたちは野菜の改善のためウィルアムのところに向かうのだった。




