23.防壁を作ることに 〔ウィルアム視点〕
皆様、こんにちは。
私は魔族ウィンアーク伯爵家が三女であるメルーアお嬢様にお仕えする執事でウィルアムと申します。
以後、お見知りおきを。
さて、私たちは現在魔族の国にある死の砂漠の中心地に新しい土地を開発しております。
なぜこのようなことになったかというと、メルーアお嬢様のお二人の姉君であられるどちらかがお嬢様を亡き者にしようと動いたのです。
私とメルーアお嬢様は危険を察知して逸早くウィンアーク伯爵家から逃亡しました。
しかし、快く思わないのか刺客を送ってくる始末。
私たちは荒野まできましたが、逃げ切れないと悟った私は死を覚悟して刺客と戦うことを決意しました。
そこで偶然出会ったスティクォン様に私たちは命を救われたのです。
スティクォン様は父親から追放を受けて人間族の国からやってきたとか。
少々変わった面をお持ちですが、私たちにとってはまさに救世主でございます。
スティクォン様の持つ【現状維持】により私たちはある意味では一線を越えた存在へとなったのです。
そのあとはメルーアお嬢様の提案で死の砂漠を越えることに。
正直内心では無謀だと思いましたが、死なない身体に無限の体力と満腹度がこれほどすごいことに感服いたしました。
死の砂漠の中心地に到着するとメルーアお嬢様の【地母神】で土地を作ります。
そこで新たなる出会いがありました。
ドラゴン族のシディア様です。
私たちの土地作りに興味を持ち知己になりました。
それからドワーフの国に赴き、ホビット族のリル様、ドワーフ族のファリー様、ノッカー族のクレア様を新しく迎え入れたのです。
リル様は【農業神】、ファリー様は【製造神】、クレア様は【鉱石創造】とそれぞれ有能なスキルを所持しております。
必要な農具、工具、食用植物の種を手に入れるといよいよ本格的な土地開発を始めることになりました。
手始めにファリー様の【製造神】で現在仮家を建築中でございます。
『さて、ファリーが頑張って家を建てている間に我らもできることをしよう』
「それで次は何をするんだ?」
『ここからは農業組と防壁組の二手に分かれて作業をする。 農業はリルを中心にスティクォンとメルーア、防壁はクレアを中心に我とウィルアムだ』
シディア様は私たちに次から次へと的確な指示を出します。
さすがは長き時を生きるドラゴン、知識と経験が豊富ですな。
メルーアお嬢様、スティクォン様、リル様は集まるとどこに溜池を作り、穀物・根菜・葉菜・果物を作るかを話し始めました。
『ウィルアム、ファリー、我の背中に乗れ』
私とファリー様はシディア様の背に乗ります。
シディア様は翼を羽搏かせるとこの土地と砂漠の境目を目指して飛行しました。
30分後、私たちは土地と砂漠の境目に到着します。
土地と砂の境界線のところまできた私たちはまずどのような防壁を作るかを話し合うことに。
『さて、ここに防壁を作成するが良いアイデアはないか?』
「一般的な防壁ならレンガ造りですな」
シディア様の言葉に私は即座に答えます。
『ふむ・・・人間族や魔族の建物に使っているあれか・・・我からしてみれば3つの弱点があるがな』
「3つですか?」
『1つ、上空から乗り越えることができる。 2つ、破壊して突入できる。 3つ、地下深くを掘って侵入できる』
「まぁ、たしかにそうですな」
シディア様の指摘は的確です。
「え? 1つ目と2つ目はわかりますけど、3つ目はする人がいるのですか?」
対照的にクレア様は理解できていないようです。
『どの国でもそうだが地上は目を光らせていても、地下は侵入し易いからな。 如何に難攻不落な巨大都市といえど地下数十メートルからなら容易に侵入できる』
「そ、そうなんですか?」
『うむ、実際我がやった戦法だからな。 間違いない』
私とクレア様の目が点になります。
「シディア様は城攻めをしたことがあるのでしょうか?」
『あるぞ。 かれこれ1000年以上前の話だがな。 如何に地上を強固にしようが地盤を緩めるだけで呆気なく崩壊したものだ』
シディア様の実話を聞いて私とクレア様は苦笑いをするしかありませんでした。
『もし興味があれば話をしてやる。 だが、今は防壁作りが最優先だ。 我としては巨大な板状の物を埋めたいと考えている』
「板でございますか?」
私は【鑑定】で砂漠の底までの距離を即座に確認します。
「ここからでは砂漠の底まではおよそ200メートルくらいでございます」
『200メートルか・・・そうすると高さは少なくとも300メートルはほしいな』
「地下に埋もれる部分を差し引いて100メートルの高さの防壁となると普通の10倍はある計算になりますな」
それだけあれば空を飛ばない限りは侵入は不可能でしょう。
『クレアよ。 まずは幅1000メートル、高さ300メートル、厚さ1メートルのオリハルコンの塊を生成してみてくれ』
「えっと・・・」
「クレア様、少々お待ちください」
私は【鑑定】を使って木の棒で地面に線を引いていく。
30分後、シディア様とクレア様のところに戻ってくる。
「クレア様、お待たせしました。 このくらいでございます」
「う、うん・・・」
『クレアよ。 イメージできそうか?』
「が、頑張ってみます」
クレア様はイメージを固めると【鉱石創造】を発動してオリハルコンの塊を生成し始めます。
5時間後、私たちの目の前にシディア様が指定したサイズのオリハルコンの塊の生成に成功しました。
『うむ、見事だクレアよ。 この調子で同じ物を生成してくれ』
「はい!!」
「ところでこれをどのように埋め込むのでしょうか?」
『それについては我が何とかするので気にするな』
こうして私たちは外壁作りの1歩目を踏み出しました。




