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22.物作りに目覚めて

「お、お待たせしました・・・」

『うむ、戻ってきたか』

「大丈夫ですか?」

「な、なんとか・・・」

【現状維持】で体力を維持して疲れはしないが、12歳の身体では体力がなさすぎる。

シディアは呆れてはいるがスティクォンにアドバイスをした。

『スティクォンよ。 もう少し体力を向上させてから維持するべきではないか?』

「ぼ、僕もそう思います」

『ならば我が鍛えてやろうか?』

「どんな特訓ですか?」

『なに簡単なことだ。 身体を極限まで酷使するだけだ』

シディアの考えはいたってシンプルだ。

身体が壊れる寸前まで酷使して一気に回復させる。

すると飛躍的に体力が伸びるらしい。

スティクォンの顔が蒼褪める。

「えっと・・・できれば手加減をしてもらいたいのですが・・・」

『何を言う? それでは意味がないではないか?』

「そうですが・・・」

『安心しろ、ちゃんと考えてある。 それよりも今はこの場を一刻も早く去ることだ』

シディアがここにいる危険性を訴える。

「それでこれをどうやって持って帰るのですか?」

『そこはファリーに任せる』

「わ、私ですか?」

『うむ、【製造神】を使ってこれらが入る頑丈な箱を作るのだ。 我の背中に載せても問題ないものをな』

「わ、わかりました」

ファリーは納得したのか、買ってきた斧ですぐに近くの木を伐り始める。

まるで手順がわかっているようで箱となるパーツを作ると組み立てていった。

そして、あっという間に完成する。

「で、できた・・・初めてなのに身体が勝手に動いていつの間にかできあがってる・・・」

「それがファリー様のスキルである【製造神】なのでしょう」

「これが私のスキル・・・」

ファリーは手際よく箱を作ったことに驚いていた。

『問題なさそうだな。 それでは戻るとしよう』

シディアは背中にスティクォンたちと購入した荷物を載せると翼を羽搏かせて空へと飛んだ。

荷物が落ちないように行きよりも慎重に戻っていくのであった。

無事に砂漠に戻るとファリーがうずうずしている。

「ファリーちゃん、どうしたの?」

「えっと・・・この箱を作ったときに感動しちゃってね、その・・・早く何か作りたいなぁって・・・」

ファリーは恥ずかしそうにそんなことを言った。

「ほっほっほ、良いことではないですか」

「そうだな。 できれば家を作ってほしいところだが」

「そうですわね。 家があれば雨・・・はここでは降らないでしょうが風を防げて眠れますわ」

メルーアとしては早く安眠できるところがほしいのだろう。

今はスティクォンの【現状維持】で皆覚醒状態を維持している。

ファリーに家を作ってもらえばメルーアの悩みが解決するのだ。

『家を作るのは構わんが場所はよく考えたほうがいいぞ。 これから農業もやるのだからな』

シディアの指摘にスティクォンたちは真剣に話し合う。

中央の巨木を中心にしてどこに家を建てるか、どこに農作物を育てるか、どこに各種施設を作るかだ。

まず全員が一致したのは建物は北側に作ること。

話し合った結果、少しでも快適に過ごすために北西側に建てることになった。

農作物は南西に決定したが、各種施設は今のところは要検討状態だ。

「それじゃ、早速作ろうと思いますけど、木材がないと作れませんね」

「それなら問題ないですわ。 1平方キロメートル毎に植えてある木を使えば良いのですわ」

ファリーの指摘にメルーアが堂々と応える。

「だけど、あれは1平方キロメートルの目安にしているのだろ? それを引っこ抜いて大丈夫なのか?」

「問題ありませんわ。 その場所に今度は果物の種を植えますから」

「え? どういうこと?」

メルーアの言っていることがわからないスティクォンたち。

執事であるウィルアムすら首を捻っている。

「メルーアお嬢様、私も理解できていないので説明をお願いします」

「そ、そうね。 まずはこの場所を見て巨木以外は全部同じに見えてしまいます。 そこで目印の木を変更するのです」

『なるほど、メルーアが言いたいことがわかったぞ。 それぞれの通りに別の木を植えることで今どこにいるかを区別するのだな?』

シディアの言葉にスティクォンたちも理解する。

「その通りですわ。 現在地もわかりますし、そこに育った果物も収穫できますし、一石二鳥ですわ」

今の言葉から目印はついででメルーアは木に実った果実がお目当てのようだ。

だが、メルーアの言については賛成である。

現在位置を知るには良い目印になるからだ。

『木は北西から使っていくのがいいだろう。 運搬は我に任せよ』

こうして1平方キロメートル毎に植えた目印の木をシディアが引っこ抜き、そこにメルーアは新しい果物の種を植えて【木魔法】で育成した。

それらは後に『林檎通り』、『桃通り』、『蜜柑通り』など果物に関する通り道として呼ばれるようになる。

ある程度の木材を用意するとシディアがファリーに問いかける。

『ファリーよ。 この程度で木材は足りるか?』

ファリーは【製造神】を発動して現在の木材で家が建てられるか思考する。

「えっと・・・はい、簡素な仮家3軒建てるのであればこれで十分です。 まずは試しに建ててみましょう。 誰の仮家から建てましょうか?」

「わたくしの家をお願いしてもいいですか?」

「メルーアさんとウィルアムさんの家ですか? わかりました」

ファリーはメルーアとウィルアムから家の構造を聞くと【製造神】を発動して家ができるまでの時間を割り出す。

「えっと・・・できあがるまで1軒につきおよそ1日かかりますけどよろしいですか?」

「問題ありませんわ」

「ええ、むしろ早いくらいです」

「それじゃ、いきます。 お願い、【製造神】」

ファリーは【製造神】を発動すると家を作り始めるのであった。


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