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⑬ 愛しい人がみているところでするの?

 ここはパーティー会場から離れた部屋のバルコニー。真ん丸の月が浮かんでいる。夜風が気持ちいいのは肩の荷が下りたからか。

 しばらくは言葉も交わさずに、星々に囲まれる月をふたりきりで、ただ眺めていた。


「ほらよ」

 貝殻をいつの間にか回収していたらしい、彼は私の手にそれをぽんと乗せる。


「あ。これ、借り物だというのにすっかり忘れてたわ」

「さぁ、帰るか」

「そういえば、あなたはパーティーを何も楽しまれてないですよね」

「ずっと働かされていたからな。もう疲れたわ」


「私、これで王宮に戻っても大丈夫かしら」

「あの場にウワサ好きの連中もごろごろいたしな。誰に頼むでなくとも翌朝から早速話が出回って、お前の汚名もまぁ晴れるだろ」

「じゃあ久しぶりに、王宮の私の部屋に帰ろうかな……」


 そよ風を受ける彼が、ドレスに着替えた私をエスコートする。令嬢のふりをして会場を抜け、馬車にとび乗った。

 ん? いや私、本物の令嬢だったわ! もうすっかり平民気分でいたから……。


「本当に疲れました……」

 心地よく揺れる馬車の中、彼の肩を枕に私は即刻、眠りこけてしまったわけだが────。





「えっ……ええええ────!!」


 まっ、また朝の光と小鳥のさえずりで目覚めたら、下着姿の自分! 大きなベッドにふたつ枕!!


「いつまで寝てるつもりなんだお前は……」

 デジャブ──!? 身支度を終えたエルネスト様が優雅にコーヒーを飲みながら本を読んでいる!


「なっ、なんで……また……」

「ん? お前も夜明けのコーヒー飲むか?」


「なんで私、またエルネスト様の部屋にいるんですか────!?」

「お前の部屋に送り届けるなんて一言も言ってないぞ」

 嫁入り前に二度も男性宅で目覚めたなんて父が知ったら、脳卒中を起こしてしまいます……。


「まぁでもどうせ、何もないのでしょ。もうからかうのは止めてください……って、え??」

 ベッドから這い出ようとした私を、エルネスト様は突として押し倒した。


「まだ何もないぞ。まだな」

 そして上にかぶさって来て────。


「やっ……。また冗談ばっかり!!」

「この状況で冗談だと思ってるなら、ずいぶん楽観的だな」

 私を抑え込んだ彼は、上から不敵な笑みを浮かべる。


「………………」

「なんで抵抗しないんだ?」

「……あそこ」

 彼の下で私は、ベッドの反対側の壁に掛かった、小さな肖像画を指さした。


「少し遠いからよく見えないけど、あれ女性のですよね」

「……ああ」

「彼女が見てるところでするんですか?」


「……嫌なのか?」

「ええ~~……私のいいの嫌なのなんて最初から聞く気ないくせに」


 私がいいか嫌かではなくて、あなたがいいのか聞いているのに。……あれ、私自身はどうなんだろう。からかわれるの嫌じゃないの? からかわれてなければいいの? この人は私の結婚相手じゃないのに……。


「でも今回うまくいったのは、あなたが助けてくれたおかげですから。キスくらいならOKです! もう1回しちゃってますしね!」

「この体勢でキスくらいならって上から言える神経が分からない」

「下から上から言ってすみません?」

「もういい口閉じろ」

「~~~~っ」


 もう1回しちゃってるから何回したってきっと一緒! でもなんでキスするのか分からない……この人はキス魔なの? そんなこと聞けない、絶対怒られる。でもなんでか知りたいっ……。ああもう顔が……唇がすぐそこに……。



────きゅるるる~~。


「キュル? なんだ?」

「おっ……」

「お?」

「お腹痛い……」

「はぁ!?」


「お腹痛い~~っ!! おっ、お手洗いはどこですかっ!」

「あっ、だからお前、チョークなんか食うから!! 出てまっすぐ左だ!」

「お手洗いお借りしますぅ……!」

「ひとりでいけるかっ?」

「大、丈、夫っ……」





***


「まったく。ふざけるのも大概にしろ」

「だってカルシウムなのに……」


 なんとかギリギリ無事にコトは済み、今は休憩のため、彼のベッドで右側を下にして寝ている。お腹痛い時は右が下、聖女の豆知識だ。


「昼過ぎまで人のベッド陣取るとか、いったいお前は何様なんだ」


 隣で寝っ転がった彼が本を読みながら延々と嫌味をぶつけてくる。病人相手に、大人げないです。


「もうすぐ復活するので、そうしたら王宮の私の部屋まで送ってください……」

「……はァ……」


「…………」

 やっぱりこのベッドから小さな肖像画が目に映る。ここからだとうっすらだけど、穏やかな微笑みをたたえる、淑やかそうな女性。


 私はそれをぼーっと見ていた。少しちくちくするような胸の重みを抱えつつも、それがこの隣にいる彼を知る手掛かりになるのだろうと、縋りつきたい思いに駆られている。


 あれ? 私の目標は、とにかくあの人魚を海に帰して、王子の婚約者の座に再び就くことなんだけどなぁ……。


「やっぱりまだ身体がだるいです……もうひと眠りします~~」

「ああ、おやすみ」


 戦いはまた後で。今はこの暖かいところで、ゆったり時を過ごしましょう。



              ~to be continued??





お読みくださいましてありがとうございました。

ブクマ、評価、感想ダメ出しなど、励みにさせていただきます。(拝)


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― 新着の感想 ―
[一言] エルネスト様ドンマイw それは聖女の呪いなのです。 もはや手遅れ⋯⋯あきらめましょう。 完結おめでとうございました。
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