愛花視点:贖罪
「……愛花ちゃんが好き」
中学の時、私は告白された。
女の子に
彼女の真っ赤な頬からそれは友情の類いではないことがすぐに分かった。
前々から可愛い子だと思っていたから告白を受け入れた。
嬉しくて私は周りの友達に吹聴した。
当時は女同士がどうとかそういう意識は全く無かった。
友人たちは好意的に受け入れてくれた。
付き合って暫くして、その友人の一人から「実は私も愛花ちゃんが好きだった」と打ち明けられた。
だから私は二人と付き合うことにした。
そうすると他にも私が好きだという子が現れて、その子も恋人に加える
仕舞いには五人のカノジョが出来た。
最初のうちは「愛花ちゃんはみんなのもの」というルールが働き上手くいっていたが、それは長く続かなかった。
次第に誰々が抜け駆けしたとかそういったことで、カノジョ同士が憎しみ合うようになり、最後には私に矛先が向き「そもそもお前が浮気するのが悪い」と責められた。
その通りだから必死に謝るが、カノジョ達は許してくれない
だから私は身体で償った。
不器用に愛を語って、甘酸っぱいキスをした放課後の空き教室は、ただのヤリ部屋になった。
放課後になるとその部屋に行って罪を償うのが日課になった。
最初は「来るのが遅い」と怒られていたが、次第に遅れなくなり、最後には私が一番早く来て待つようになる。
やがて部屋には誰も来なくなった。
罪を償い終えたのではない、呆れられたのだ
私の償いは欲求を満たす為の言い訳に過ぎなかった。
足りなかった。可愛い子を見るとセックスをしたくなった。
その欲求を必死で抑える。浮気性の私はその子を傷つけてしまうし、自慰は欲求を満たすだけで贖罪にならない
どうしても我慢できなくなった時は自分で自分を傷つけた。
高校はあえて女子校を選んだ
その方が自分を傷つける回数が増えて贖罪になるからだ
その日も欲求が抑えきれなくなりそうだったからトイレで自傷した。
洗ってトイレから出ようとするといきなり手首を掴まれる。
「こういうことをするのは止めなさい」
それが麗奈との出会いだった
当時は一年生で麗奈とは別クラスだったので、名前も知らなかった。
その場はなんとか誤魔化したが、これ以降彼女は私に付きまとうようになった。
麗奈を疎く思うと同時にドス黒い欲求も湧く
澄ました顔をしているが、少し甘い言葉を吐いてキスすれば簡単に落ちるだろう
彼女もそれを望んでいるから私に構うのだ、と考えるようになってしまった。
このままでは中学の時の二の舞になると思い
麗奈を人気のない所に連れていき、彼女を遠ざける為に自分の過去を話した。
「それは好都合ね」
麗奈は少しも表情を変えることなくそう言い放つ
好都合とは私の予想通りで、彼女は私が好きで私の恋愛対象が女だから口説く手間が省けたと言いたいのだろうか?
「……やりたいならやっても良いよ。恋愛はもうしないけどね」
ブラウスのボタンを外される
……結局こうなるのか
もう抗わないで情欲に身を委ねても良いのかもしれない
「痛っ」
首筋を急に噛まれた。
噛むんなら予め言えよ
意外と面倒なタイプなのかもしれない
こういうタイプは深入りしない方が良い
これっきりにしよう
「これでどうかしら?」
「えっ?」
顔を上げた麗奈が嫌に真剣に私を覗き込む
「痛覚を与えると同時に性欲を解消したわ。古来から伝わるショック療法だから効いたハズ」
噛まれた箇所を摩る
確かに私の欲求は収まっていた。
後で色々な文献を調べたがそんなショック療法は存在しなかった。
でも確かに私には効いた。
「私がいつでも噛んであげるから自傷はもうやめなさい」
スマホを差し向けられたので呆然としながらも連絡先を交換する。
それ以降、麗奈は私の求めに応じて何度も噛んでくれた。
噛まれる度に仲良くなって、ついにはボランティア部に誘われた。
今思えば彼女の「好都合ね」という台詞は、ボランティア部に誘う障害が無くて好都合だという意味だったんだろう
「……女の子と抱き合う部活」
「ええ、愛花なら抵抗ないでしょ?」
「そんなことしたらまた我慢できなくなるよ」
「いつでも私が噛んでくれるとは思わないことね。女性に対してリハビリなさい」
「いつでも噛んでくれるって言った」
「卒業するまでは付き合うわよ。それまでに耐性を付けなさい。今、入部すれば人気インフルエンサーも付いてくるから」
「あはは、誰それ?」
こうして私はボランティア部に入った。
実際に女の子に対して抵抗が付いたのか、麗奈に噛んでもらう頻度は減っていった。




