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絶望の箱庭~鳥籠の姫君~  作者: 神崎 ライ
第Ⅷ章 崩れ始める世界

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第16話 過去から続く因縁

 空中に佇んだまま顔を真っ青にして固まっていると、冬夜が立ちはだかるように目の前に現れる。何が起こっているのかわからず、ヒイロが問いかける。


「いったい何が起こったのですか? それにいつの間に……」

「あなたとの戦いは一次中断です。もっと()()()()()に……見つかって……しまったから……」


 背後から震える声で問いかけるヒイロに対し、前をまっすぐ見つめたまま答える冬夜。すると、前方に広がる煙の中から不敵な笑い声が響き渡る。


「ふふふ……まさか私の存在に気が付かれているとは思いませんでしたわ。できればもう少し長く戦っていただけたほうが都合が良かったのですが」

「お前の都合なんざ、知ったことじゃない! 気配を上手く消したつもりかも知れないが……にじみ出る殺気までは抑えることができなかったようだな。それよりも、さっさと姿を現したらどうなんだ?」


 未だ煙の中から姿を見せようとしない人物に対し、声を荒げる冬夜。


「うふふ、ずいぶんご機嫌斜めですね。でも、本日はあなたに用事はありませんの、残念ながら」

「なに? それはどういう意味だ!」


 返ってきた言葉を聞いた冬夜に一瞬の隙が生まれた時だった。背後にいたヒイロが声を上げる。


「あ、危ない! 間に合って、不可干渉(アンタッチャブル)領域(・ドメイン)


 ヒイロが叫ぶと同時に、冬夜の前に虹色の壁が出現する。その直後、一筋の光が見えると同時にけたたましい金属音が響き渡る。


「な……いったいなにが……」

「危なかった……彼女を甘く見てはいけませんよ。障害となるものは誰であろうと排除しますので……たとえ相手が誰であろうと。ですよね、()()()()

「ああ、私のことを覚えていたのですね……可愛い、ヒイロ」


 声が響くと同時に無数の光が走り、目の前に広がっていた煙が霧散する。そして、中から姿を表したのは笑みを浮かべ、右手にポイズニング・ダガーを持ったアビーの姿だった。二人の姿を見ると口元にダガーを近づけ、舌を出して舐めるような仕草を見せる。


「ついにこの日が来たのですね……あなたが姿を眩ませてどれほど探し回ったか。ようやくこの手に……」


 アビーが光悦とした表情で語り始める中、ヒイロは冬夜の後ろに隠れるように身をひそめる。先程まで全身に纏っていた禍々しいオーラは消え去り、怯えた子犬のように体を震わせて小さくなっている。


(いったいどうしたんだ? ヒイロさんがここまで怯えるなんて……)


 あまりの変わりように冬夜が戸惑っていると、二人の様子を見たアビーが怪しげな笑みを浮かべながら語りかけてくる。


「なぜそんなに怯えているのでしょうか? 私はとても嬉しいのですよ、再びヒイロに出会えたことが……さあ、こっちにいらっしゃい」


 満面の笑みを浮かべたアビーが左手を差し出し、一歩踏み出した時だった。冬夜が構えを取りながら行く手を阻むように立ちはだかる。


「一体何のマネでしょうか? あなたに構っている時間はありませんの」

「お前に時間が無くとも、このまま素直に退くわけにはいかない。明らかに再会を待ち望んでいたとは思えないからな」

「やれやれですわ……ヒイロと私の関係を何も知らないあなたが、なぜ介入してくるのでしょうか?」


 壁のように立ちはだかる冬夜の姿を見て、アビーがわざとらしく大きなため息を吐く。


「お前の事情なんか知ったことじゃない。こんなに怯えているのに、『はい、わかりました』と差し出すバカはいないだろうが!」


 まっすぐアビーを睨みつけると、冬夜の全身から黒いオーラが溢れ始める。そして、その力に呼応するように目が赤く染まり、胸元のロザリオも輝きを増していく。


「こ、この魔力は……」


 高まっていく冬夜の魔力に気がついたヒイロが顔を上げると、思わず声が漏れる。そして、奥底に眠っていた記憶が蘇っていく。


「この感覚、間違いない……ルナと同じ……だけど、何かが違う。()()()()()()()()()()、どういうこと?」


 彼女の目に映ったのは、冬夜の全身を覆う黒いオーラの中にほんの僅か見たこともない光り輝く魔力が混ざっていた。


(なんで光の魔力が混ざっているの? ルナは純粋な闇の魔力持ちだったはず……冬夜くんが引き継いだとしてもありえない……だって、光の魔法は……)


 ありえない光景を目の当たりにし、目を見開いたまま固まってしまうヒイロ。彼女の変化に気がついた冬夜が前を向いたまま、声を掛ける。


「ヒイロさん、大丈夫でしょうか? ずいぶん怯えていらっしゃったので……」

「え。あ、はい。ご心配かけてすみません……」


 予想していなかった声に驚き、絞り出すような声で返事をしてしまう。なんとか落ち着きを取り戻そうと、軽く左右に頭を振って震える声で問いかけるヒイロ。


「あの、どうしても聞きたいことが……」

「ヒイロさん、一度地上に降りてもよいでしょうか? この装置がいつまで持つか保証がないですし、このままアイツと戦うのはちょっと分が悪いので」


 ヒイロの質問が聞こえていない冬夜が、言葉を被せるように話しかける。


「は、はい……大丈夫です」

「ありがとうございます。それでは俺に捕まっていてください」


 ヒイロの返事を聞いた冬夜が笑顔で振り返り、右手を差し出す。その手を握り返すとメイのいる辺りに向けてゆっくり降下し始める。二人の様子を見ていたアビーは、目を細めながら呟く。


「あらあら、あなたも私の邪魔をするわけですか……うふふ、さあ楽しい宴の幕開けですわ! 愛しのヒイロ、今度こそ逃がしませんよ」


 アビーの狂気じみた声と高笑いが、空間内に響き渡る。

 この直後、ヒイロを巡る新たな因縁が明らかになることを彼らはまだ知らなかった……

最後に――【神崎からのお願い】


『面白い!』、『楽しかった』と思って頂けましたら、『評価(下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります)』を是非宜しくお願い致します。

感想やレビューもお待ちしております。

今後も本作を書いていく強力なモチベーションとなります。感想を下さった方、評価を下さった方、本当にありがとうございます!

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