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5. 荷物持ちだって大事さ

 


 ダンジョンに潜った俺達を待ち受けていたのは。トカゲに囲まれ大ピンチ ━━━━━ の少年少女だった。


「ちょっと!モタモタしているううちに囲まれたわ」


「お前らが痴話喧嘩するから」


「ユーミルが生意気だから」


「いい加減にしろよ」


 仲間を一匹殺されたトカゲは怒っている。カミル曰く直ぐに通りすぎれば、わざわざ追いかけても来ない相手だった。だがその場で喧嘩を始めたので、他のトカゲに気付かれた様だ。


「なあ、あれ大丈夫か」


「うむ、馬鹿な人間は少し痛い目をみた方が良いのだ」


 寄ってくるトカゲを手持ちの検やナイフで蹴散らすが、致命傷にはならず余計に怒りを買っている。手前の奴を三匹程倒したところで奥からトカゲがやって来た。このままでは切りがない。


「テオ、カミル、助けてやってくれ」


「………… 」


「えー、面倒くさい」


 二人共凄く気が乗らないみたいだ。するとエレノアが弓を放った。ヒュン、と小気味の良い音がして、トカゲの眉間を貫いた。小型の弓だけど魔石を使っていて、凄い威力がある。そのまま五匹も倒せばトカゲは逃げて行った。

 少年達は駆け寄って来た。


「ありがとう、お陰で助かった」


「やー、こんな美人のエルフに助けられるなんて、ラッキーだな」


「貴方達、どういうつもりかしら?」


 エレノアはどうやら激おこである。


「遊び半分でダンジョンに来られたら、回りに迷惑だわ。狩りは遊びじゃないのよ」


 エレノアの辛辣な言葉に、浮かれていた少年は押し黙る。肩をすくませブツクサ言い合いをしていた。


「ごめんなさい。私達、初めて来たダンジョンに、すっかり浮かれていたの」


 常識人らしい女の子はエレノアに頭を下げた。少年三人も頭を下げる。


「浮かれるのは仕方ないけど、こんな下らない事で命を落としたら、元もこもないのよ。気を付けなさい」


 同じ年頃の子達に説教するエレノア。精神年齢はエレノアの方が上だな。こう見えて苦労してるもんな。大人しく上の方へ行く少年達。その後も大した敵は現れなかった。


「ダンジョンってもっと危険かと思ってた」


「ユキツネは分かってないな。私がいるんだぞ?」


「うん?!」


「ドラゴンの気配を感じて出てくるのは、よっぽどの雑魚か強敵に会ったことの無い奴だろう」


 え?カミルのせいなの?ダンジョンに慣れ親しんで置こうと、皆でやって来たのにさ。


「俺みたいに上手く気配を消せば、獲物が現れる。駄目ドラゴンだな」


「そこの獣!喧嘩を売る気か」


「喧嘩するなよ。これじゃ訓練に成らないな」


 もっと下に行けば獲物も現れるだろうと、進んでいった。テオとカミルはやる気は無いが、たまに向かって来る敵も、エレノアとエンジュが捌いて行く。うちの女子強い。しかし奥に進むにつれ強い魔物が現れる。


「エンジュ!!」


 羊の様な角の生えた長い毛を生やした魔物が、肉弾戦を挑んでいたエンジュに襲いかかる。エンジュが弾かれて尻餅を付いた瞬間、黒い尻尾が俺の前を走り抜ける。


「ゴァアアアアア!」


 テオは宙に舞い上がって回し蹴りを決めた。そのまま地面に降りず二発、三発と蹴りを決める。ガツガツと骨に当たる音がして魔物は倒れ込んだ。


「れ、霊獣様………… 」


 エンジュは両手を組み、神を見るように熱い眼差しを注ぐ。種族は違っても獣人にとってテオは、尊い生き物らしい。テオはそんな視線が鬱陶しいみたいだ。


「俺の最優先はユキツネだから、お前らは死なない程度にしろ」


 ふう、クール&ビューティーだ。俺が女の子だったら惚れちまうぜ。エンジュはその遥か先の感情を持っている様だが。崇められるのも厄介だよな。その後もエレノアとエンジュが主に戦い、下へと進んだ。接近戦をするエンジュが取りこぼした獲物を、エレノアが弓で仕留める。良いコンビだ。


「もっと強いのいないのかな」


 カミルは飽きたみたいだ。まあカミルが戦う訓練をする意味は無いもんな。俺?俺が戦力になると思うなよ(キリッ)邪魔にならないように気配を消すのが俺の仕事だ。


「ユ、ユキツネ様。奥から何か凄い音が」


 エンジュが耳をピクピク動かしながら訴えると、奥から虫の羽音のような物が聞こえて来る。煩い程に。


「私の出番が来たようだ」


 カミルは一歩前に出るとドラゴンへと変化した。


「お、おい。誰かに見られたら」


『人の気配なんぞ無いわ。それよりも前を見ろ』


 奥から現れたのは、黒っぽい昆虫の大群。一匹が五十センチはあろうかと言った大きさだ。カミルはヒュウと息をのみ、炎を吐き散らす。ゴオオオと言う音と共に、昆虫は床に落ちて行く。更に奥から現れた集団に二回目のブレスを放った。炎を逃れた数匹がやって来た。エレノアの弓とエンジュとテオの手套で叩き落とす。

 それは黒い蜂みたいな生き物だった。捕まれば肉団子にされると恐ろしい生き物だった。


「全く歯ごたえの無い連中だ」


 女の子の姿に戻ったカミルは、こちらへ戻ってきた。以前に街を襲ったバッタに比べ、数も少なかったからな。下の階には水が溜まっている。近寄ってみようとしたら、硬い殻のようなもので覆われた、丸くて尻尾の生えた生物が水の中で跳ねた。


「なんだあれは?」


「地底魚だ。噛まれると大変だぞ」


 テオの言葉にブルッと震える。虎ばさみみたいな歯をしてたよあれ。這い上がっては来ないから、なるべく水には近づかない様に歩く。奥へ進むとカミルが反応する。


「何かいるな。大きいのが」


 奥からのっしと現れたのは、サイ━━━ いや巨大なアルマジロ?だった。





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