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55. 外で食べるのも良いものだ

 

 思わぬ料理対決をした俺達は、お隣の国ナービルを目指す。砂地が多いこの場所で馬車を引くのはトカゲだ。もといトカゲじゃなく地竜だって。俺が以前の旅で使ったのも地竜だった。色んな種類がいて、今回のは亀っぽい。甲羅ではないが固く丸い背中には駱駝のような機能があるらしい。


 そんな地竜に揺られたどり着いた国ナービル。まあ特にこれって売りもない、普通の国みたいだ。御者のおっちゃんに別れを告げ、門をくぐり入った。


 何人かいる門番の一人がエルフだ。この大陸では獣人もちょくちょく見かけたし、ひょっとして異民族に対する偏見が少ないのだろうか。あっちではエレノアもなるべくフードを被っていた。それが普通だと思っていた。

 大通りを歩いているとエルフとすれ違う。やっぱり普通に顔を晒していた。海を渡れば事情も変わって来るものなのか。


 勿論ヒ・イズル国では顔を隠すエルフやドワーフはいない。彼等は俺の国では一番大事な国民だ。何もない国に物資を運んでくれたり、新しい国民に礼儀や戦い方を教えてくれる大切な人たち。正直俺だけでは今のような立派な国にならなかった。


「この大陸は異民族に優しいのね」


 エレノアも感じていたようだ。普通の人が当たり前に普通に暮らす国。本来はこの大陸の方が正しいはずだ。

 それはさておき建ち並ぶ店を覗く。屋台で焼き串とフルーツジュースを買った。やたら胡椒の効いたガッツリした肉と、イチゴとパイナップルを混ぜたようなジュースを堪能した。


 もの造りの国のお隣だからか、こちらにも手の込んだ雑貨の店が目につく。目新しい物は無いので軽く見て回るにとどめる。


 早めの昼飯を済ませた後は、この国のダンジョンへ行ってみる事にした。初心者にも優しいダンジョンらしい。エレノアも初めてのダンジョンにテンションが上がる。


「ダンジョンって初めて。街へは何度か行ったことあるけど、買い物のついでに連れていって貰っただけだし」


 両親を思いだしたのだろうか。エレノアの耳がしょんぼりしている。犬や猫みたいに感情によって少し動くんだな。人間にも耳を動かせる人がいるが、俺には無理だ。ちょっと触ってみたい。

 ギルドで聞いて向かったダンジョンは、さほど人気が無いようだ。結構古くて目新しい素材が取れないからだ。正に初心者向けだ。


 入場料も安く銅貨五枚。結構なお爺ちゃんが入り口を見張っている。以前の場所みたく入場制限も無いようだ。


「へえ、思っていたより明るいわ」


 魔道具であるペンダントもぶら下げているが、洞窟もほんのり明るい。トンネルを掘った時は何日も暗い中を進んだもんな。


「エレノア気を付けろよ」


「何が?」


 ボットリ。


「キャアアアアア!」


 降ってきそうだと思ったんだ天井のスライム。モゾモゾしてたから。フフフ、洞窟あるあるだ。なお一切会話がないが、テオも居るぞ。何せ俺が危ないからな。


 その後いたちの魔物をエレノアが三匹仕留めた。毛皮に傷がつかない様に、器用に頭に弓を打ち込む。狩猟民族の本領発揮だ。

 更に進んだ先にいた三十センチ位の芋虫の大群にエレノアが悲鳴をあげる。攻撃力は低いのでスルーして進む。


「ウウッ、洞窟は思ったより危険ね」


 精神的にエレノアは追い詰められた様だ。まあ俺も気持ち良いものではないが。その先に進めば中型の魔物が二体いて、どちらもエレノアが仕留めた。テオが袋を担いで運んでくれる。肉が美味しいので、毛皮は売って中身は食べる為に。


 こんなふうに主にエレノアの活躍した品々をギルドにおろした。ちょっとした小遣いにはなったな。まあ俺は基本見ていただけだ。戦闘力は無いからな。


「ユキツネ、肉を調理してくれ」


 テオが真面目な顔で告げる。肉の為に重い獲物を運んだんだものな。肉好きだから簡単に焼くだけで良いだろう。


「じゃあどこか場所を借りてバーベキューにするか」


「バーベキュー?」


 エレノアとテオが異口同音でハモった。焼くだけの料理だからわざわざ作らなかったからな。


「シンプルに焼いて食う料理だ」


「ええ~?!」


 エレノアは不満そうだ。しかし旅の間は凝った料理を作る気はしない。作らされているけれども。


 商業ギルドに赴き、肉を焼ける場所は無いかとたずねる。少し行った先に空き地があるので、使ってもいいと許可を貰う。一応出店を出すときみたく手数料を取られたが、微々たるものだ。


 屋台で使う道具も借りられた。肉と野菜は大雑把に切るだけだが、タレが要るだろう。醤油にニンニク生姜とリンゴ。ハチミツも入れて適当にフライパンで煮る。魔道具のコンロに鉄板をひいて金網を乗せる。


 肉と野菜を焼いていく。いい感じに焼けたらタレで食う。パンも出して少し炙る。火力が強いので串に刺して炙るだけだ。


「わざわざパンを焼くのね。いい臭い」


 腹ペコエルフが待ち構えている。テオも尻尾を出して揺らしていた。


「どうぞ召し上がれ」


「頂きまーす」


 すっかりお馴染みになった頂きますをして、エレノアがタレにつけた肉を頬張る。


「美味しーい、この醤油のタレがいい感じだわ。焼いただけなのに」


「うまいな」


 テオにも気に入って貰えた様だ。そこへ五人ほどのグループがやって来た。


「すっげえいい臭い。こんな時間に屋台が出ているなんて。今日はここで食べようぜ」


「あたしも腹ペコだよ」


「そうだな、たまには変わった物を食うか」


 出店だと思われた様だ。だが屋台を出す店は日暮れまでだ。こんな時間に屋台はない。


「おう店主、俺達にも適当に出してくれよ」


「ちょっと待ってくれよ、ここは出店じゃ無いんだ。仲間内で夕食を食べているだけだ」


「ええ~!もう腹ペコだよ。何でもいい、金ならある」


「そうだこんなにいい臭いをさせるのが悪い。食べさせてくれ」


 野菜は少ないが肉はタップリある。余ってもテオの魔法で凍らせておけば、しばらく食べられる。


 この五人は冒険者のパーティーで、森林の魔物を狩ってきた帰りらしい。リーダーだというゼノンが食べさせて欲しいと頼んできた。テオとエレノアに許可をもらい、一緒に食べる事になった。タレが足りなくなりそうなので追加で作る。


 パーティーのメンバーの一人が酒を買いに走らされた。手持ちの杯で乾杯する。


「このよき出会いに乾杯!」


「カンパーイ」


 早速肉に食らい付く。ゼノンを始めとする面々が、ガツガツと食べる。


「こりゃあうめえ。肉を焼いただけなのに、このソースをつけると、たまらない味がする」


「美味しいわあ、焼いただけの肉がこんなに美味しいなんて」


「私達エルフの村で作っているのよ。豆を発酵させたソースなの」


 エレノアが自慢げに言う。エルフ村の味噌と醤油だからな。自分の村の特産品が評価されて嬉しいらしい。その後も彼等の狩りの話を聞き、肉を食べ盛り上がった。気づけば何故か次の町でダンジョンに挑む事に。


「お、俺は戦闘なんて出来ないぞ」


「ユキツネとか言ったな。お前訳ありだろう。変わったメンバーで旅しているもんな。安心しろ、どこぞのお坊ちゃんでも守ってやるさ」


「俺は坊っちゃんではない。若くみられるが、俺の国では大半が若く思われる」


「ユキツネは最初、私より年下かと思ったよ」


 エルフと獣人の組み合わせは目立つ様だ。何時もは二人ともあまり顔を出さないが、テオは尻尾を出しているし。マントを脱がないと気付かないけど。

 最初は警戒していた異民族への偏見は少ない様だが、この組み合わせが目立つのは間違いない。旅の間はなるべく知られない方が良いだろう。


 彼等と一旦別れて次の町で落ち合う事になった。次回はダンジョン探索だ。


 いつの間にダンジョンに行くことになったんだ?






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