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45. あれは鉄板の味

 

 俺の国に冒険者ギルドが出来る事になった。難民に付いてきた冒険者の知らせで、視察団がやって来る。僅か半月程で彼等はやって来た。初めて見る街に視察団はしばし呆然としていた。


「これは………… これ程とは」


 簡単に街の様子を聞き及んでいたとは言え、森の中に大きな建物が並ぶ街は、信じられない光景のようだ。


「俺はヒ・イズル国の国王を勤めるユキツネ・ヒヤマだ」


「失礼した。私はリンドガルディアの首都で、ギルドの副部長を勤めるヨルア・キルジョイと申します。この度は陛下自らの出迎え、有難く存じます」


「まあ気楽にしてくれ。俺は堅苦しいのは苦手なんだ」


 門から真っ直ぐメインストリートを目指す。やっぱりギルドは大きな建物が良かろうと、予定の場所に連れて行く。


「ここいら辺はまだ何に使うかさえ決まって居ないんだ。この建物はどうかな」


 皆に相談してギルドに使う場所を決めた。既に改装して冒険者ギルドとして、使いやすい造りになっている。外観は普通の建物だ。八階建てで地下に解体室、一階は受付と休憩所、上の階は好きに使って貰う。


 ここいらの建物は商業施設として使って欲しいが、今は其ほど店が無いから、空き家ばっかりだ。住宅街は別に作ったから。


「これ程立派とは。これはリンドガルディアに負けない、いえ、リンドガルディアよりも立派な施設ですな」


 ちっこいオッサン達は最初に張り切って建てたが、ここいらは立派過ぎて小さな店には向かないよな。エレノアの店も大きな建物の、一階の少しのスペースを間借りしている。当然上の階は使われていない。


 ギルドの副部長であるヨルアは大変喜び、感激していた。ギルドが引っ越して来れば家賃を払い住むことになる。他の場所も商人がやって来るだろうと言われる。


 ギルドが来れば人々も仕事が出来、収入を得られる。そうすると足りないものが目についた。広場で遊ぶ子供。現在は親も子供もやる事がなく、フラフラしている姿が目立つ。大きな国に必要なのは、この子供を教育する施設。


 難民の一時的な収用場所になっていた建物を学校にする。学校をつくる事で雇用も産まれるし、街をさ迷う子供もいなくなる。小中一環の学校を作れば、配給を止めた後も子供が飢える事なく、教育が受けられる。給食は無料で提供する。


 教育を受ければ国としての文化水準も上がる。現在はてんてこ舞いのお役人の仕事を、出来る人間を増やしたい。国を造る人材は早めに育てなければ。


 更なる発展に思いを馳せる。



  ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 ヒ・イズル国が発展する中、それに目を付ける者がいた。今まで未開だった土地には未知の素材がある。出来立てほやほやの国など簡単に制圧出来るのでは無かろうか。

 精霊の伝説等は眉唾物である。其ほどの力が在れば、自分だったら近隣の国を支配下に納める。


 付け入るのなら今のうち。他国との交流も浅く、発展しきって居ないならば、軍事力も無かろう。一気に軍隊を率いり、攻めれば直ぐに白旗を挙げるのではないか。


 バステドロ国の王、トレモアはニヤリと口角を上げる。


「なあ、どう思うジョルジュアよ」


「素晴らしいお考えかと存じます。なに、エルフの国のように、難癖をつけて攻め込めば、簡単に落とせるでしょう」


「リンドガルディアの王は精霊の存在を恐れている様だが、我が国はその様な物は恐れん。新たな土地を手に入れ、開拓された土地の恵を手中に納めようではないか」


「誠に素晴らしきお考えにご在ます。リンドガルディアが出しゃばって来る前に、制圧された方が宜しいかと」


「そうだな。大国の王に釘を刺されてからでは攻め混みにくいからな。エルフ共の時も非難めいた事を言われたし」


「この世は強い者こそ正義にございます。弱い者は淘汰され、消え行くのみです」


 そんな悪巧みが行われて要るとは、その頃の祐紀経は想像もしていなかった。



  ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「レッツクッキーング!」


「イェーイ!」


「ヒューヒュー!」


 俺は王城の一階にある部屋で、子供達に囲まれている。今回は狭い自宅を飛び出し、空き部屋で調理をする。皆にも手伝って貰うぞ。


「先ずはキャベツを刻むんだ。手を切らない様にな」


「はーい」


 エルフの子供達は日頃からナイフを使う。刃物の扱いは馴れているが、少しハラハラする。俺はテオの捕ってきた肉の塊をスライスする。


「所でエレノア、何をしているんだ?」


「私はお皿とフォークの準備、果汁を絞っているわ」


 以前から気にはなったいたのだが。


「エレノアは料理を作らないのか?」


「そっちは任せるわよ」


 長旅の間はエレノアが主に手綱を握っていたので、俺は調理担当だった。テオは護衛だし、その辺は気にしていなかったのだが。エレノアは料理をした事が無いのか。まあ俺も家を出る前は、姉に付き合わされる程度だったが。


 長芋をすりおろして行く。粘っとした長芋に、子供達の目は釘付けだ。小麦粉を用意し、玉子とスープを濾したもの、長芋を混ぜて練り込む。更に天カスとキャベツを加えれば。


 もうお気づきであろうあれの生地が出来上がる。


 ここでドワーフが作ってくれた鉄板に油を塗り込む。隅々まで塗り込み、魔石で熱を上げれば湯気がたつ。それぞれが鉄板に生地を広げて焼く。丸い形になったら、薄く切った肉も乗せる。


 鉄板には四個の生地。俺がこてでひっくり返すと、ワアッと声を上げる。生地を流した三人にもやらせて見る。


「落ち着いてやれば出来る」


 ノルンちゃんが震える手でひっくり返した。鉄板から少しはみ出たが、戻せば問題ない。他の子もひっくり返した。焼き上がったら皿に盛る。今回作った自家製ソースとマヨネーズ、青のりの代わりで刻んだパセリをかける。気分の問題だ。


 ソースはトマト、セロリ、玉ねぎ人参、リンゴに生姜を刻んで、スパイスを入れて鍋でひたすら煮た。砂糖、塩、醤油も加えて煮込んだ物を煮詰めて、濾して自家製ソースの出来上がりだ。やっぱりお好み焼きにはソースは欠かせないから。出来れば鰹節も欲しかったけど。


 最初に焼いた物を皆で食べて貰う。三角形に切られた物を口に含んだ。


「ファア美味しい。キャベツの甘味とソースが…… いくらでも食べられそう」


 それぞれ食べたら、庭にいるチビッ子も呼び寄せる。エルフの子供が変わりばんこで焼いて、皆で食べる。焼けたら俺はソース掛けて切り分ける。焼いてる子も食べてる子も楽しそうだ。


 生地が無くなるまで、ひたすら食べ尽くした。エレノアもモグモグしている。


「おいしかった」


「へいかのおじちゃん、おいしかった」


「へいかはお兄ちゃんて言わないと」


 気を使うチビッ子ども。まだ独り身なので、お兄さんと言われたいお年頃です。今回の食事会は城のチビッ子にも、料理を食べさせたいと言う子供達の意見を取り入れ、それならばと、皆で焼いて食べるお好み焼きにしてみた。


 丁度、鉄板を作って貰っていたので、性能を確かめたかったのだ。そうして呑気に過ごしている間にも、何やら怪しい計画が他国でされているとは、思ってもいなかったのだ。







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