39. 精霊のヒミツ
俺達はお隣の大国リンドガルディアにやった来た。街は整備されていて綺麗だ。大きな橋の下に小舟が行き交う。市場は賑わい人で溢れている。少しの間馬車で観光したが、王様は忙しいので城に帰る。
リンドガルディアでは唯一精霊を使う人間がいて、是非とも会って欲しいと言うので会って見ることにした。
通された部屋で待っているとドアがノックされ、少女が入って来た。
「こんにちは、えっと貴方が国王なのかしら」
何とも可愛らしい少女が現れた。エレノアと同じ位の年齢だろうか。雰囲気はエレノアよりも幼い感じだ。
「俺がヒ・イズル国の王、ユキツネ・ヒヤマだ」
「わ、私はこの国の魔法省で働いている、レティシア・ドゥツェよ。精霊と契約しているの。私が今回貴方の国に手紙を送ったの」
言われてみれば白いカラスはこんな声だった気がする。カラスは彼女の言葉をそのまま喋ったのか。
「出来ればお互いの精霊を見せあいたいのだけれども。私の精霊は是非とも他の精霊に会ってみたいって。今回特別に連絡をとってくれたのよ」
「見せあうって…… 出て来るかは分からん」
「取り敢えず人払いをするわ。精霊は他人に姿を見せたがらないものね」
俺の仲間と兵士の皆さんと、その他ひっそり隠れている人全員出ていってくれと彼女が言った。エルフとドワーフは反対したが、何かされるならとっくに手遅れだろう。部屋に二人で残る事になった。
「光よ、そこ気高き姿を現し私に姿を見せて。我が友よ」
すると光が現れ一羽のカラスが舞い降りた。白いカラスだ。
「ニンゲン、精霊と仲良し?」
「フフッ、私の精霊は男の子らしいのだけれど、こうして仮の姿で現れるのよ。この姿なら喋れるし」
「そうなのか?普通に会話出来ると思っていたけど」
「さあそっちの番よ。見せて頂戴」
人前は嫌みたいだけど呼んでみよう。
「ドノム、いるか?」
すると光が三つ現れ虹色の輝きを放つ。姿は見せずに光が俺に吸い込まれた。
「凄いわ、綺麗な色の光。とっても強い力を持った精霊なのね。三つもあったわ」
「ああ、本当は十人なんだけど、後は留守番だな」
「十人?!精霊を一度に十人も………… どんな契約したのかしら」
「契約?何か知らんが勝手に居着いてるだけで、別に何かした訳じゃない。陽気なオッサン共だよ」
「待って、貴方は見たの?精霊の本当の姿を。そんなのよっぽどの高位な精霊で、人間と簡単に契約なんかしないのに」
レティシアは仕切りに興奮している。ちっこいオッサンは長い事、日本に住み着いていたんだ。そしてあっという間に城を作る位だから、まあ凄いんだろうな。
「ソイツの精霊は凄い強い。俺には解る」
カラスが少年の声で喋った。良く見るとカラスから何かはみ出している。白い頭の少年だ。
「おう、俺はユキツネって言うんだ宜しくな」
すると少年は嫌な顔をした。
「折角カラスの姿にしているのにこっち見んな。」
少年は機嫌を損ねた様だ。ツンツンに逆立った髪型はいかにも元気一杯ったか感じがする。
「精霊と言えばこの前、精霊魔術師とやらに出会ったな。あっちはちっちゃい女の子がチョロチョロしてたぞ」
「待って、それって見たの?姿形を」
「ああ。何か頼りない女の子だったな。精霊も色んなタイプ頑張っているんだな」
「ええーっ!他人の精霊も見えるの?!それは凄いわ」
レティシアは興奮しきりだ。精霊魔術師の事も聞かれたが、彼女とは一回出会ったっ切りだ。同じ精霊使いとして是非とも会ってみたいと言った。
この国では一般的ではない精霊使いは今のところ彼女意外に認定されていないらしい。精霊が見えてもそれを生かす術が無いからだ。レティシアはたまたま王宮に仕官する事を目指していたので、精霊が付いているのを認められたらしい。
西の国ナルリンドからやって来た精霊魔術師。レティシアは機会があれば是非にナルリンドに行ってみたい、と思いを馳せた。
「今日は有意義な会話が出来て楽しかったわ。他国の王様なんてどんな人が来るのかと思ったけど、案外砕けた人ね」
最後にレティシアと握手を交わし、退席した。これでこの国の会見は終わりで、後は自由にしていいとの事で、少し観光してから帰る事にした。
俺は前回来たけどエルフとドワーフの四人は、初めて見る異国の物や風景に圧倒されていた。大陸では一番発展している都市を見て回りたいのだ。
なのでそれぞれ二名づつで行動する事にした。最初は護衛なのにと言っていた四人だが、テオの他にもリンドガルディアの兵士が遠巻きに見守っている。監視されているとも言うべきか。
俺が国賓なので万が一の事があっては大事に至る、という訳で見られているのだ。一等地の宿も紹介され無料で泊まれる。至れり尽くせりである。俺も国王との会見が終わりホッとしたので、のんびり食べ歩きでもするか。
馬車で送ると言う申し出を断り、歩いて行く。どうせ俺が王様だなんて誰も思っていないし、命を狙われる覚えもない。物凄く驚かれたけど。
街を歩いて直ぐに声を掛けられた。
「テオ、久しぶりね。国を出たって聞いたけど、また戻って来たのね」
精霊魔術師のティアである。俺の存在は意識されていない様子。解せぬ。
「やっぱり私の事が忘れられずにいたのね。私ってば罪深いわね。まあ今はフリーだけどやる事があるのよ」
勝手に喋り捲るティアに対しなにも言わないテオ。不機嫌そうだ。
「貴方はその男の護衛とか言ってたけど、その男はそんなに価値が有るの?ただの気の弱い男じゃない」
何故か俺をディスり出した。どうやらテオを仲間に出来ない不満の矛先が俺に向かったらしい。
「大体幾ら貰ってるのか知らないけど、私と組めばもっと金だって稼げるわ」
「黙れ、消えろ」
その瞬間テオからただならぬ気配がした。険しい顔で睨まれティアが顔色を無くす。
『ティアをいじめるなー!』
ボン、とちっちゃいのが飛び出した。彼女の精霊だ。テオの回りをフラフラ飛び回っている。
「おい、チビッ子。ティアに勧誘は諦めろと言ってやれ」
『チビッ子じゃないもん。ティアはわたしのコエがきこえないのよ』
「聞こえないだって?お前はティアの精霊じゃないのか」
『フツーのニンゲンはセーレーとかいわしないの。アナタがヘンなの』
衝撃の事実発覚。精霊と会話しないと?レティシアは自分の精霊はカラスの姿で喋ると………… 直接は会話出来ないってか。もしかして姿も見えないのか。わざわざカラスの姿をしていたのはそんな事情だったのか。
俺が変なのか。




