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12. 再びの商売

 

 ドワーフに新しい住居と工房を作った。ドワーフ達は速やかに引っ越し、街に静寂が訪れた。


「人間のいない街なんて…… 」


「まあ元気だしなよユキツネ。人里離れた深っい森の奥だけど、そのうち人も現れるかもよ?」


 俺の専らの話し相手はエレノアである。野菜や果物を収穫するために、毎日のようにやって来る。ドワーフが街から離れたので本格的に八百屋を始めるらしい。

 建物の一部を改装して商店っぽくした。そこに品物を並べて値札を付ける。

 そうは言っても客は一人もいない。将来に向けての準備とかなんとか。


「じゃあ行って来るよ」


 エレノアは荷車を引いて出かける。ドワーフのいる川辺の方まで。彼等はもの造りを始めると夢中になり、食事も忘れる程打ち込むのだ。買い物に街まで来ないから、エレノアが商品を届ける。


 現金が余り無いから物々交換になる。食料を捌いた荷車はドワーフの造った品物を載せて帰って来る。それらは丸々俺に献上されるのだ。

 エルフも必要なものが有るだろうと言うと、これは俺の畑で取れた物を売った対価だと。ならば収穫したエレノアに俺が金を払うべきではと告げると、村を作って貰った上に金等貰えない、むしろもっと恩を返す必要がある、と。


 ドワーフも同じ様な考えで、野菜には見会わない多くの品を渡してくる。なので八百屋の隣の建物は家具屋になった。こちらは売る人も買う人もいない不思議な状況だ。


 隣国へ買い物に行きやすくなったので、色々売りに行ってもいいし、建物が増えた場合に使用してもいい。人は増えないが。




◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 最初の買い物の一週間後には又、隣国へ赴く事となった。

 今度はエルフの男シャルルとヘイルと、ドワーフのガザールと言う若者が同行する。

 村の転移場所は新たに小屋を作り、村長であるジルフィンが鍵を管理している。


「ワクワクするな」


 ドワーフで一番若いと言うガザールは興奮を隠せない。ドワーフは皆髭面でオッサンに見えたが、二、三十代の年頃で以外と若かった。ガザールは十九才だ。


「私達も余り遠出はしたことがありません」


 エルフのシャルルとヘイルは百三十五才と百一三才。見た目は二十代に見える。三百才位まで生きるから青年期が長い。


 ガザールはドワーフが作った荷車に売るものを乗せていた。俺やエルフは荷物を背負って転移する小屋へと入った。エレノア同様聞き取れない呪文を唱えると、あっという間にトンネルの出口の近くである。


「では、ガザールは後から来て下さいね」


「ああ、分かった」


 俺はエルフの村に拾われた事になっているが、異種族であるドワーフまで加わるのは悪目立ちし過ぎる。只でさえ希少な民族が一緒にいるのは人目を引く、という理由からガザールは単独で行動して貰う。


「私達も楽しみです。人里は若い頃にお爺様に連れて行って貰った時以来ですよ」


 落ちついた感じの青年シャルルは楽しそうだ。何かアフガンハウンドって犬に似てるな、とか思う。


「俺も。エルフは大体若い時に一度は街に行くんだ。証明証を作っとけば後々便利だから」


 ヘイルはやや短髪で活発な若者ってイメージ。犬で言えばビーグルってとこか。エレノアも証明書を持っていたもんな。俺も今回作って貰うつもりだ。前回は金を持って無かったし、時間も無かった。


 街に着いたら商売の許可を貰う。そして俺の証明証の発行だ。証明証と言っても完全な自己申告だ。出身地や性別、生年月日等を書き込んで水晶にかざす。それらの情報がドッグタグみたいなのに刻まれて、それを首から下げる。


 証明証は金さえ払えば何度でも作れるが、一度登録すると大陸共通の情報として水晶に刻まれる。書き込んだ情報を修正するには大金がいる。魔法で個人が識別されるんだ。

 小さな村で暮らしている人には証明証を持っていない人もいる。犯罪者なんかそういう人から金を出してタグを買い取り、成り済ますケースもあるそうだ。水晶が有れば他人だと分かるけど、タグだけじゃわかんないもんな。


 だから滅多な事で無くしたりしないよう注意を受ける。

 シャルルとヘイルが既に露店の準備を整えた所へ俺も合流する。今回は移動時間が短縮出来たので、果物を多めに持って来た。


 エルフ二人は女性陣の作った物を中心に品物を並べる。今回も干し柿がある。


「よう、お隣さんこんにちは」


 ふと隣に男がやって来た。大きな荷車を引いて。


「俺はドワーフ族のガザールって者だ。よろしくな」


 ドワーフ族のガザールがやって来た。偶然市場で知り合った体を装おって。


「ああよろしく。ドワーフ族とは珍しいな」


 と、白々しい会話が続いた後、其々が商品を売る。果物を並べていると男が近づいて来た。


「おお、あんちゃん。久しぶりじゃねえか。例の芋、売ってくれよ」


 今回は果物中心で行こうとしたのに、前回の客が来たようだ。


「今日は調理はしないぜ?」


「そりゃあ無いぜ。あの、蒸かし芋とか言うのすっげえうまかったのに」


 すると前回来た客が数人、芋を売れという。自分で調理してくれと生のじゃがいもを売る。こっちは何だと果物を指さす。そこでミカンを剥いて試食させる。


「おおっ!これはうまい」


 じゃがいもの時みたく一人が買うと、次々売れ出す。リンゴと梨も用意して、甘い果実だと宣伝すればよく売れた。こっちのものと多少形が違っても、果実は貴重な甘味なので好評だ。


 前回と違うのは隣の干し柿も売れている事。

 ジャムパンにして食べた事で、これも甘い美味しい物だと認識されたみたいだ。


 一方のガザールは木製の食器等を中心に売っている。椅子や棚も売っているが、より身近な品が売れるようだ。其々が目的の物を売って、俺とエルフは一旦トンネルの中に戻った。

 エルフの二人は村へ戻り、俺はトンネルに作った寝泊まり出来るスペースで休む。


 ガザールはそのまま宿屋を取って明日、明後日と売り子を続ける。俺とエルフは明日まで売る。



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