第十一話
アキアースパーティを組んでから旅を始めて一週間。私達は王都サリダースへ来ていた。
王都へ来る前の街道で数回魔物と出会ったけど、私が魔法を使う前に、アキアースはこれくらいなら大丈夫と次々に屠っていった。あれはすごかった。冒険者なりたてって言ってたけど、まるで歴戦の戦士みたいに強かった。私、すごくいい巡り会いをしたのかもしれない。
それにしても、もう一週間以上経ってるし、お父さんにお母さん、おばあちゃん、きっと心配してるだろうな。帰りたい。寂しいよ。帰りたい。
せっかく王都に来たんだし、図書館とかで帰る方法を調べたいな。でもあるんだろうか。イングスでもラルスムでも本はあったから、多分あると思うんだけど。
「ねえアキアース。聞きたいことがあるんだけどいい? この王都には図書館ってあるの」
「図書館? それってどういうもの」
え、図書館、ないの? どうしよう。それじゃあ調べることもできないじゃない。
「えと、本がたくさん置いてある場所なんだけど。市民が自由に閲覧や貸し出しができて、調べ物ができるところ」
「そうなんだ。じゃあその図書館ってつまり、記録閲覧室のことかな」
「そうそれ」
へー、記録閲覧室っていうんだ。よくわからないけど変に思われたら困るから知ってることにしとこう。でもまんまなんだね。記録を閲覧できる部屋。ふーん。でもこれで調べ物ができるね。よかった。
「できればすぐに行きたいんだけど、場所知ってる?」
「ああ、知ってるよ。でもすぐに案内したいところだけど、まずは宿屋の確保ね。調べ物にどのくらい時間がかかるかわからないし、宿屋が埋まってたら大変だから。安くていい宿はすぐに埋まるからね」
「ああ、そっか。わかった。じゃあ、先に宿屋に行こう」
アキアースと私は二人並んで歩く。アキアースの案内で着いた宿屋は見た目は質素だけど防犯はそこそこらしい。レンガ造りの建物で煙突がいくつも等間隔でならんでいた。サンタさんがきたら迷いそう。どれにしようかな的に。
部屋は二つ。一応私も女の子だからね。ううん、実は私はあまりそういうの気にしないほうなんだけど、アキアースがそれじゃだめって言ってきて、私はお金がかかるしって言ったんだけど、結局二つ借りることになったの。もう少し警戒心を持ったほうがいいとか、慎みを持て、とかくどくど言ってた。そんなに気にすることかなあ。同じパーティなのに。
荷物を置いて、私達は街中を歩いていた。これからアキアースが私が行きたいと言った記録閲覧室まで案内してくれるの。私はアキアースに帰る方法を手伝ってもらうつもりなんだけど、私が異世界から来たことは言うかどうかまだ迷ってる。
さすがにそのくらいは私でも考える。だって、明らかおかしいよね。「私異世界からきたの。でも帰れなくて困ってるの。帰る方法一緒にさがしてくれる」なんて言われたら、精神科探しなら手伝ってあげるって言いそうだもん私。
「ここだよ」
「ありがと。へー真っ白!」
記録閲覧室は豪華だった。だって、大理石の壁なんだもん。それになにかの金属の枠組みがされた窓ガラス。近代的だった。そういえば、ここに来るまでも、高そうなお店はみんなこんな感じだったっけ。なにか区分けみたいのされてるのかな。この辺はお金かかってそうな建物ばかりだし。
ちなみにこの記録閲覧室は、各国の王都にしかないんだって。だからここで手がかりが見つからなければ、別の国に行かないといけないってこと。見つかるといいなあ、帰る手がかり。
中に入るとそこは、やっぱり図書館みたくしーんと静まり返ってた。こういうところで友達とおしゃべりすると他の人に睨まれるんだよね。うるさい、静かにしろって。
「魔法のこと書いてあるコーナーはあるかな」
「魔法? ああ、魔法使いだもんね。でもそれなら師事してるお師匠さんに聞いたほうがはやいんじゃないかな?」
「それが私、独学なんだよね」
「独学? へえ、それはすごい。ああ、だから魔法ギルドのこと詳しくなかったのか」
「え、ああ、うん。そう」
そういえば、魔法ギルド? なにそれって感じで場所案内してもらったんだった。アキアースは一人で納得してたけど、まあいっか。そう思ってるならそれで。いちいち否定してたら、じゃあどうして魔法使えるのとか、独学の方法はとか色々聞かれそうだもん。まさか魔法の本みて覚えたなんて言え……あれ、魔法の本?
そうか! この真っ白だらけの本は魔法の本なんだ! だから不思議なことがおきるんだね。いつ文字が現れるかわからないけどこの本はもう手放せないよ。この世界にきたきっかけだし、今では私の命綱みたいなものだし。あの魔物の時は文字でなかったけど。
でも、こう考えたら不思議じゃないよね。あの時は洗濯機の魔法でなんとかできたし。現状の魔法でどうにかできるから、文字が浮かびあがってこなかったんじゃないかって、私は思ってる。実際、思いついたときは打破できたし。やっぱり必要な時には読めるんだ。きっと。
「ねえ、アキアース。真っ白なページに突然浮かび上がってくる本って知らない?」
「え、聞いたことないなあ。なに、調べてるのってそういう本がないかどうかなの」
「ううん。知らないならいいの。調べ物は違うよ。長距離を一瞬で移動できる方法とか、そういう魔法を探してるんだけど、知らない?」
「ああ。たしかにそういう魔法があれば旅するのに便利だよね。でもごめん、俺は魔法のことは詳しくないからさ、知らないんだ。でも探すの手伝うことはできるから」
「そっか。ありがとう」
そっか、そりゃそうだよね。話に聞いてると、魔法の独学って珍しいみたいだし、普通は師事しないと勉強できないみたいだもの。そうかー魔法の本ももしかしたら見つかったらやばいのかも。
魔法ギルドの証をつかって少し読んだんだけど、口頭での一子相伝みたいな感じで継承していくものなんだって、魔法って。自分の子供ではないけど、弟子の中の一人だけに教えるそうだ。だから、独学で勉強したってかなり異質みたい。
でも今更だよね。急に実は、師匠がいたけど亡くなって、勉強の旅を~なんて理由に変えたらそれこそ変だもん。しかも、こういうの考え付く前にアキアースにもう言っちゃったし。独学って。
はああ、私って考えたりない? でも、口頭で一子相伝みたいなんて知らなかったし、仕方ないよね。ただ、魔法の本だけはアキアースにも黙っておこう。せっかく現地人の仲間ができたのに、変なところ見られて、はいさよならってなったら困るもの。
ちなみに、なんで私がこちらの世界の文字を読めるのかというと、それは魔法のおかげ。つまり思い込み。本当は象形文字みたいな文字なんだけど、読めると思い込むと何故か日本語に変換されてくんだよね。これは第一章に載っていたの。目に掛ける魔法なんだけど、永続ですごく便利だから使ってる。それですらすら読めるってわけ。さあ、頑張って探すぞ。
でも結局、手がかりは見つからなかった。
「はあ。なにかあるとよかったんだけどなあ」
「まあ、仕方ないんじゃないかな。普通は魔法は一子相伝だし、こんなところで自由に閲覧できたら大変なことになるしね」
「そっか、そうだよね。でもがっかり」
「まあまあ、そう気を落とさないで。ならこうしたらどう。まずはクルスニク大陸の国々の記録閲覧室を見て回るとか。あとは、一瞬で移動できる魔法をしっているかと、魔法使いに聞いてみるとかさ」
「あ! そうだよね。それがあった! 魔法使いに聞けばいいんだ。あ、でも知ってても教えてもらえるかな。だって一子相伝みたいなんだし」
「それはその時に考えればいいことだよ。なんなら弟子入りしてもいいわけだし」
「うん。ありがとうアキアース。私だけじゃただ落ち込んで諦めてるところだった」
「そんなのいいさ。パーティなんだから」
アキアース、なんていい人。




