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第四章最終話 【この世界がゼンタイに幸せになりますように】

見て頂きありがとうございます。励みになりますので、良かったらブックマーク、評価、コメントよろしくお願いします。


 ➖➖西の洞窟➖➖


 深い闇の中に一本の矢が刺さった。

 それに応えるように、ひとつの影が羽ばたいた。


 小さな蝙蝠。


 静かに、しかし確かな意志を持つように、洞窟の外へと飛び出す。


 光へ。世界へと。


◇◇◇


 最初に辿り着いたのは、マルディア。

 縛られてた街は、今、再び立ち上がろうとしていた。


「そこに運んでください!」「あっ!そこ気をつけて!」

 ガロアの声が響く。


 瓦礫は片付けられ、木材が組まれ、新しい家が次々と形になっていく。


 かつてカラミダッドに捕らえられていた人々も、解放されていた。


「……っ……!おかえり……っ!」

「あなた……ただいま……っ……!」

 抱き合い、泣き崩れる家族。


 その光景を、蝙蝠は静かに見つめる。

 悲しみの跡に、確かに芽吹く“再生”。


 風を受け、再び飛び立つ。


 その時だった。


「ガロア様!」

 ひとりの兵士が駆け寄る。

「どうした?」

「……ミサト様、リュウコク様より、書状が届いております」

 一瞬、ガロアの目がわずかに見開かれた。


 そして、受け取る。

 封を切る手は、ほんの少しだけ早い。


 文字に目を走らせる。


 そして、、


「……ははっ」

 小さく、だが確かに笑った。

 肩の力が、すっと抜ける。


「……相変わらずだな…文字で幸せが伝わってくる…」

 その表情は、どこか嬉しそうで。

 兵士が不思議そうに見つめる中、ガロアは手紙を畳んだ。


「各員に伝えてください」

 静かに、しかし迷いなく言う。

「私は今から、湯ノ花の里へ向かいます」


「はっ!」

 兵士が敬礼する。


 ガロアは空を見上げる。

 遠くへ。あの場所へ。


「……礼と感謝と祝いを言わねばな」

 ぽつりと呟き、歩き出した。


◇◇◇


 次に蝙蝠が向かったのは、ラインハルト。

 城門は開かれ、人々の往来で賑わっている。


 規律ある兵たちの訓練。

 整然と並ぶ隊列。


 その中心に立つのは、ラインハルト前王。

「いい動きだ。だが、まだ甘いな」


 厳しさの中に、どこか柔らかな笑み。

 人々の顔も明るい。

 戦いを越えた国は、確かな強さと安定を手にしていた。


 蝙蝠は旋回し、次の地へと向かう。


 その時だった。


「ラインハルト前王」

 ひとりの兵が、静かに歩み寄る。


「……どうした?」

「ミサト様、リュウコク様より、書状が届いております」


 わずかな間。

 ラインハルト前王は、ゆっくりとそれを受け取った。


 封を切り、紙を開く。

 その視線が、言葉を追う。


 そして、、


「……ふふ…」

 小さく、柔らかな笑みがこぼれた。

「ついに、この日が来たのか……」


 静かに目を閉じる。

 まるで、遠い誰かに語りかけるように。


「スティア……」

 懐かしむような、優しい響き。

「お前の分までしっかり、見てくるよ」


 目を開ける。

 そこには、もう迷いはない。

 紙を丁寧に畳み、懐へと収める。


「出立の準備をする」

 短く告げる。

「私は今から、湯ノ花の里へ向かう」


「はっ!」

 兵が敬礼する。


 ラインハルト前王は、空を見上げた。

 あの場所へ。あの未来へ。

 静かに、しかし確かに歩き出す。


◇◇◇


 蝙蝠はパタパタと飛び、次はボダレス。


 相変わらずの喧騒。


「おいコラァ!誰だ今の!?てか、ジジィ!ここで小便すんなって!!」

「うるせぇー!手前の家の前か??こらっ!」

「あはははっ!小便鉄砲当たってねぇし!」


 チャムチャムとボルドの笑い声が響く。


 だが、違う。

 湯ノ花の里のおかげで街並みは整い、壊れた面影はもうない。


 そして、、


「ぐっはっはぁぁ!!おいっ!ボルド見ろっ!どうだこの筋肉!!」

「あははっ!ほんとに作ってくれたんだな!?顔がキメぇぇぇぇ!」

 ど真ん中に立つ、チャムチャムの銅像。

 無駄にムキムキで、無駄にキメ顔。

 その背後でたなびく旗。

 青地に、温泉の紋章。


 人々は笑い、騒ぎ、今日を生きている。


 その中で、、


「あっ?そうだ、チャムチャム」

 ボルドが、ひらひらと紙を振りながら近づいてくる。

「そー言えばよ、手紙来てたみたいだぞ?ミサトとハンサム王子から」


「あぁはん?」

 チャムチャムがサングラスをずらす。

「あのビッチと色男が何だって?」


 乱暴に受け取り、雑に封を切る。

 ざっと目を通し、次の瞬間。


「あははははっ!!」

 腹を抱えて大笑いし出した。

「ギリ人妻なんて言ってたくせに!!」


 ボルドが覗き込む。

「なんて書いてあんだよ?」

「あぁん?決まってんだろ」

 ニヤリと笑い、紙をくしゃりと握る。


「“来い”ってよ」


 一歩、前に出る。

 サングラスをかけ直す。風が、アロハシャツを揺らす。


「さぁて、ボルドちゃん」

 振り返り、にやり。

「湯ノ花の温泉にでも入りに行きますか〜♪」


「お、いいねぇ!」

 二人は笑いながら歩き出す。


 騒がしいまま。楽しげなまま。

 その足は、まっすぐに、湯ノ花へ向かっていた。


 蝙蝠は一瞬だけその像の上に止まり、眺め、また飛び立った。


◇◇◇


 ➖➖砂漠の国ザイール➖➖


 湯気の立つ温泉。


「カイル…先に出ろと言っているだろう……」

「え、嫌です。ザハラ様、お腹の傷を見られるのが嫌なんですか?こんな素敵なものを隠すなんて……不敬ですよ☆」


 ザハラとカイル。

 湯の中で、寄り添う二人。

 傷を隠そうとするザハラを、カイルが抱き寄せる。


「その素敵な傷も、全部あなたです」

 静かに、でも確かに交わされる想い。


 その時、、


「失礼します!」

「「ひゃぁぁぁ」」「貴様っ!なぜ、我らが出るまで待てぬ!」

 

 ひとりの従者が、慌てて駆け込んできた。

「すいません!急だと思い……ザハラ様、カイル様!ミサト様、リュウコク様より書状が届いております!」


「……なに?」

 ザハラが眉をひそめる。

 だが、受け取る手はどこか早い。

 封を切り、目を通す。


 一瞬の沈黙。


 そして、、


「……ふっ」

 ザハラは小さく、笑った。


「どうしました?ミサトがなんて?」

 カイルが覗き込む。


「……面白い女だ」

 手紙を軽く振る。

「“来い”だとさ」


 カイルがくすりと笑う。

「では、行かねばなりませんね」


 ザハラは肩をすくめる。

「仕方ない。恩もある」


 立ち上がる。湯気が、ふわりと揺れる。


「少しだけ、惚けた顔を見に行くか」

「はいっ!こっちの惚けた顔も見せてあげましょう」

「誰が惚けてる…貴様だろ?」

「えっ?えっぇえ?俺??」

 二人は視線を交わし、微笑んだ。


 蝙蝠は、少しだけゆっくりと羽ばたいた。


◇◇◇


 ➖➖アルガス➖➖


 港は今日も賑わっている。


「荷物はそっちだ!」「急いで急いで!」「おっと!そいつはあっちだ!」「がんばれ!がんばれ!」

 バレンティオとフィオナの声が飛び交う。

 屋台の煙。笑い声。酒の匂い。


 海賊たちが酒場で騒ぎ、街は祭りのような熱気に包まれている。


 ……ただ一人を除いて。


「終わらないぃぃぃ!!」

 宮殿の奥、書類に埋もれるマリー。

 ペンを握りしめ、叫ぶ。


 その時、、


「おい、マリー」

 バレンティオがひょいと紙を差し出す。

「手紙だ。ミサトから」


「……はぁ?」

 げんなりした顔のまま受け取る。

「今それどころじゃ、手伝いに来るって話かな??」


 ぶつぶつ言いながら開き、読み進め、、止まる。


「……は?」

 顔を上げる。

 そしてもう一度、読む。


 数秒の沈黙。次の瞬間。


「ちょっと待ってこれどういうこと!?」

 勢いよく立ち上がる。

「なんでこうなるのよ!?いや、でも……こうなるのか?…え、行くしかなくない!?」


 ぐるぐると歩き回る。


 バレンティオが笑う。

「あははっ!で、どうすんだ?」


 マリーはバッと顔を上げた。

「決まってるでしょ!!」

 ビシッと指を突きつける。

「行くわよ!!湯ノ花!!」


 書類の山を放り投げる。


「全部あと!!これ全部あとだから!!」

「お、おい、それ大丈夫かよ……」

「大丈夫じゃないけど行くの!!」


 ドタバタと走り出す。

 その背中を見て、バレンティオは肩をすくめた。


「……まぁ、そうなるよな…。さぁて、フィオナ。俺たちも準備するか?」「うんっ!」


 港の喧騒はそのままに。

 ひとつの流れが、また湯ノ花へと向かい始める。

 その対比すら、この街の活気の一部だった。


◇◇◇


 ➖➖湯ノ花の里➖➖


 入口では、正装のエルナが客を案内している。


「こちらへどうぞ〜」


 その隣で、門番のように立つカリオス。

 目が合うと、少しだけ照れたように笑う。


 通路では、ゴブ太郎と隻腕のゴブ次郎が大道芸を披露。


「ほら見ろ!回ったぞ!!」

「兄貴!オレ回してどうすんだよ!」

 歓声が上がる。温泉は満員。

 笑顔。笑顔。笑顔。


 アエリアとリュシアの薬屋も、大盛況。

 すべてが、満ちていた。


◇◇◇


 蝙蝠は、ゆっくりと天守閣へと向かう。

 静かな一室。差し込む陽だまりの中。


 そこに、、


「……すぅ……」

 ミサトが眠っていた。

 リュウコクの腹を枕にして、気持ちよさそうに。


「……重いんだけどなぁ……まぁ…幸せな重さなんだけどね…」

 苦笑しながらも、そのままにしているリュウコク。


『はい。ミサト』

 リリィの声が響く。

『お客様……いえ、“友達”ですよ』


「……んん……?友達?誰?」

 ミサトが、目を開ける。


 とろんとした目。

 少しだけ垂れたよだれ。


 そのまま、蝙蝠を見る。


 一瞬。そして、、


「あははっ!何だ、来たの?手紙届いた?」

 蝙蝠の顔を見て、柔らかく笑った。

「あははっ!オッケー☆肩乗る?」


 蝙蝠が、ふわりと舞い降りる。

 ミサトの肩へ、ちょこんと。

 真っ黒い目が、まっすぐミサトを見つめる。


 ミサトは、優しくその頭に触れた。

「よっしゃぁぁぁ!今日から友達だね☆」

 その言葉に、蝙蝠は静かに目を細めた。

(ミサト……君が…初めての友達だ…)


◇◇◇


『はい。ミサト。そろそろ着替えないと、貴女だけスーツで出ることになりますよ?』

「はぁぁぁ?何で!?主役なのに!?あんたバッカじゃないの!?」

『はい。ミサト。リュウコクの準備は既に完了しています』

「分かってるわよ!だから早く着替えるの手伝いなさいって言ってんの!」

『はい、ミサト。ドレスをスケスケ仕様に変更することも可能ですがががが』

「スケスケはお断りしますすすす!!」


 ばたばたと慌ただしい音。

 遠くで、誰かの笑い声。

 鐘の音が、やわらかく響いている。


 扉が、開く。

 振り返った先に、、

「ふふ、分かってたけど……すっごく可愛い♡」

 正装のリュウコクが、微笑んでいた。


「さぁ、行こうか☆」

「あははっ!ありがとう!リュウコクもかっこいい♡」

 少しだけ照れて、でも真っ直ぐに笑う。


「うん。行こう」

 二人は並んで、歩き出す。


 光の方へ。祝福の待つ場所へ。


『………おぇぇぇぇぇぇぇ。あまりのイチャイチャに私…具合が悪くなりました…。欠席にマルをします』

「ダメっ!あんたはちゃんと今日を記録しときなさい!いつも変なのばっか撮ってんだから…」

「変なの…?機械…後でそれ見せて…」

「バカ!あんたはいつも見てんだろぉぉぉぉぉ♡」


(お父さん、お母さん……。

 私、元社畜の転生女なのに……こんなに幸せになっちゃいました♡)


◇◇◇


 風が吹く。世界が、やさしく回る。

 笑い声が、どこかで響いている。


 泣き声も、きっとある。

 それでもこの世界は、続いていく。

 少しずつ、少しずつ。

 

 やわらかく。確かに。

 誰の胸にもゆっくりと。


◇◇◇


 【この世界がゼンタイに幸せになりますように】



           終続


ここまで読んで頂きありがとうございます。

とりあえず初期構想が終わりましたので、とりあえず終続にさせてもらいました。どうだったかな?面白かったかな?自分で書いてて面白かったんだけど…(自画自賛)続きの構想はあるんですが、まだまとまってません。一応、新婚旅行編でリュウコクの故郷に行くって流れまでは考えてるんだけど…。めっちゃ読まれて、めっちゃリクエストとか来たら書こうかな…(偉そう)まっ、とりあえずここで終わりにします。また、次回作も見る機会があったら見てやって下さい。

あっ、この後に0話も書いたので一番最初に差し込んでおきます。気になったら読んでください。

わーわーゆーとりますが、お時間です。またね!

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― 新着の感想 ―
楽しくほぼ一気読みさせていただきました。楽しかったです。お疲れ様でした。
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