8 戦術確認
昼食の団欒を終えても、俺とシャルは引き続き監視を行っていた。
後ろでは調理班の二人が食器を雪で拭いている様子。しかしそんな片付けは当然すぐ終わる。
「曹長。見張り代わります」
役割を終えたソフィが提案してくるが、俺は首を横に振った。
「いやいい。それより軽い訓練を兼ねて状況確認といこう」
索敵範囲に何も異常が無いことを確認し、俺は提案し返した。
「なるほど。そうしましょう」
ソフィの横に立つリリーがすぐに頷く。この有能な副官は、話が早くて助かる。
「リリーとソフィで南側を。シャル、こっちへ」
「「「了解」」」
至極真っ当な話なので、誰から異論が出ることもなくスムーズに展開が進む。
「確認程度でいい。アニマの無駄使いはするなよ。総員、単純攻撃」
「「「イエッサー」」」
それぞれに大気のアニマの気配が密集。俺のアニマは炎を成して大気を焼き、シャルのアニマがかまいたちとなり大気を裂く。
「総員、報告」
「最高に近いかと」「き、厳しいです」
背後のリリーとソフィは正反対の返答。
「かなりいいです」
隣のシャルに目を向けると、まずまずの様子。対して俺は些か調子が悪い。
まあ、予想通りの結果と言えるだろう。
リリーの氷はこのフィールドとの相性なんて最高に決まっているし、シャルの風も悪くない。反面、俺の炎は微妙で、ソフィの地はほぼ雪に埋もれているためかなり厳しい。
当然すぎる結果で自然の摂理と言える。アニマ自体は世界中に存在しどこでも使えるとはいえ、起こす現象が自然現象であれば、自ずと環境条件の制約は受ける。だから、それぞれのバトルフィールドでの自分達のアニマ状況を確認しておく必要がある。
現状を確認するにリリーとソフィは問題ない。むしろ二人にとって、この雪山というフィールドは有利に働くと言えるだろう。
問題はソフィだ。俺もこの環境条件は得意とするところではないが、そもそものアニマ総量が桁違いなため、多少の有利不利があっても問題はない。
この雪山というフィールドでソフィの地を活かすには、雪下の地を操ればいいのだが、それは雪崩の原因ともなりうる。
「戦闘になった際は、リリーと俺がフロント。シャルとソフィがバックアップでいこう」
「「イエッサー」」「す、すいません」
リリーとシャルは了解を返すが、ソフィは謝罪を口にする。
「今回は班単独任務だからな。バックアップをいつもみたいにシャル一人に任せるってわけにもいかない。誰かが退がる必要があった」
班単独でない通常作戦であれば、リリー、ソフィ、俺がフロント、シャルがバックアップという分担が多いが、他班のバックアップがない単独作戦となれば話は変わる。
「ソフィにはいつも防御力を活かして、フロントを頑張ってもらってるからな。たまには奥で休んでてくれ」
班単独任務でも、ソフィフロント、シャルバックアップは固定。応用の利くリリーか俺のどちらかが退がる形が基本だが、今回の状況下でソフィにフロントをやらせるわけにはいかない。
「曹長。その言い方だと、まるで私がいつも楽してるみたいなんですけど?」
「違ったのか?」
「なにぃー!?」
噛み付いてくるシャルを煽り返せば、面白おかしく怒る。
いつもなら鬱陶しいが、こうやってソフィを気遣って道化を演じてくれるところはありがたい。
「冗談だ。お前のカバー範囲の広さ・射程の長さにはいつも助けられている。今回も頼むぞ」
なので、たまには素直に褒めておく。
「えあっ?」
すると、シャルがいつもの喧しさと無縁な妙な声を漏らす。
「……どっから声出してんだ、お前」
「あ、い、いえ」
思わず呆れ声を出せば、脇のシャルはわたわたと手を振る。
「わ、わかればいいんですよ! ようやく私のありがたみが曹長にもわかりましたか!」
まあ、そんなのは常日頃わかってはいるんだが、
「いや、ごく稀に感じるかもしれないが、大抵は喧しいとしか思えん」
調子乗るのがうるさいのと、らしくなく顔が赤いので茶化しておくことにする。
「なんですとーっ!?」
まだ口調が変なシャルを笑い飛ばして、俺達は戦術確認を進めていった。
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