9 定時報告(オペレーター・ステラ)
モニターゴーグルが1600時、定時報告時刻を告げた。
「ウィリアム班よりコマンドポスト。定時報告異常なし。どうぞ」
『コマンドポストよりウィリアム班。異常なし確認。どうぞ』
報告を入れれば、即座に聞きなれたオペレーターの声が応じた。
「ウィリアム班よりコマンドポスト。他の班の状況が知りたい。どうぞ」
『コマンドポストよりウィリアム班。
貴局含む第一中隊下、第一及び第二小隊が、本日0800より班単位でロッキー山脈の各ポイントに進行、監視任務に就いている。1600現在まで、密入国者の確認及び異常の報告はない。
また、第三から第五小隊がロッキー山脈以外のカナダ国境監視任務に就いているが、こちらも異常報告なし。
既密入国者の追跡は、第二中隊が行っているが、現在のところ足取りを掴めていない。
また、第三中隊が別ルートからの密入国の有無について調査、対応を行っている。
現在状況は以上である。どうぞ』
第一中隊に異常がないのはいいとして、第二中隊の追跡を丸一日躱しているのか。そして、ここまで大規模な侵入となれば、確かに他ルートでの侵入も考えられる。第三中隊での対応は当然のものと言えるだろう。
改めて、今回の事件の巨大さ・異常性に冷たい汗が流れる。
「ウィリアム班よりコマンドポスト。状況は把握した。感謝する。オーバー」
ともあれ状況は確認できたので、俺は交信を終える。
『あー、ホントつまんないなーあんた』
と、唐突に交信ルールを完全無視した通信が返ってきた。
「ウィリアム班よりコマンドポスト。交信内容が不可解である。どうぞ」
面倒なのを我慢して生真面目に応答してやれば、腹立たしいことこの上ないドデカため息がスピーカーから響いた。
『そーいうのいいから。他の班はアイドルオペレーター・ステラちゃんとのお喋りを末永く楽しみたがるのに、あんたはホントそっけないわよねー、ウィリアム曹長』
「……オペレーターにアイドルがいたとは驚きだ」
言われた通りにするのも癪だが、こんなの相手に七面倒くさいルールを守るのもバカらしいので、こちらも交信ルールを無視する。
『ま、そんなのいないけど、任務中に女と話せるってだけで、大多数の野郎は大喜びでしょ』
この腹黒さは、確かに性格の悪いアイドルと言えなくもない気はする。
「こんな口も態度も悪いオペレーターが相手でもか?」
『そりゃ、あんた以外にはちゃんと媚び売ってるから』
「なるほど。それじゃ俺にも売ってくれないか、それ」
『あんたは売っても無駄そうだし。流石ハーレム班の曹長さんは余裕が違うわね』
「そんないいもんじゃねえよ」
本当に全く、いいものじゃない。上の考えてることなんて、心底ろくなもんじゃない。
『でしょうね。ま、たださ』
自称アイドルオペレーターは若干言い淀んでから、
『上の思惑はどうあれ、別にそのことを無理にどうこうなんて考えないで、気楽に、自然にいきなさいな。別にやれば必ずできるってわけでもなし』
「……自称アイドルの口にするセリフとは思えないな」
明け透けな物言いに、思わず笑ってしまう。
『言ったでしょ、あんたの前ではアイドルじゃないのよ』
「そーかよ。ま、なんだ」
俺も言い淀みながらも、
「なんで急にそんなこと言うのか知らんが、気遣いには感謝する」
内容はどうあれ、その心遣いには謝意を伝えるべきと思って、言葉にした。
『んーやっぱ少しだけとはいえ年長のお姉さんとしては、若者が自分の心に素直にならないのは後悔残すと思ってねー。そんだけ。余計なお世話したわね』
「そうだな。それじゃ、余計なお世話ついでに悪いんだが」
『なに?』
「この通信は他の班員も聞いてると思うんだが、そこのところもうまくフォローしといてくれないか?」
『ゴメン、他の班の報告もあるし、そろそろ切るわね。オーバー』
「随分都合のいいタイミングだなっ!?」
言いたいことを言って、災厄の芽を残して、俺達の頼りがいあるオペレーター・ステラお姉さんは交信を断絶した。
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