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亜人戦争  作者: ノーパクリ・ノーオマージュ
10/23

9 定時報告(オペレーター・ステラ)


 モニターゴーグルが1600時、定時報告時刻を告げた。


「ウィリアム班よりコマンドポスト。定時報告異常なし。どうぞ」


『コマンドポストよりウィリアム班。異常なし確認。どうぞ』


 報告を入れれば、即座に聞きなれたオペレーターの声が応じた。


「ウィリアム班よりコマンドポスト。他の班の状況が知りたい。どうぞ」


『コマンドポストよりウィリアム班。

 貴局含む第一中隊下、第一及び第二小隊が、本日0800より班単位でロッキー山脈の各ポイントに進行、監視任務に就いている。1600現在まで、密入国者の確認及び異常の報告はない。

 また、第三から第五小隊がロッキー山脈以外のカナダ国境監視任務に就いているが、こちらも異常報告なし。

 既密入国者の追跡は、第二中隊が行っているが、現在のところ足取りを掴めていない。

 また、第三中隊が別ルートからの密入国の有無について調査、対応を行っている。

 現在状況は以上である。どうぞ』


 第一中隊(俺達)に異常がないのはいいとして、第二中隊の追跡を丸一日躱しているのか。そして、ここまで大規模な侵入となれば、確かに他ルートでの侵入も考えられる。第三中隊での対応は当然のものと言えるだろう。


 改めて、今回の事件の巨大さ・異常性に冷たい汗が流れる。


「ウィリアム班よりコマンドポスト。状況は把握した。感謝する。オーバー」

 ともあれ状況は確認できたので、俺は交信を終える。


『あー、ホントつまんないなーあんた』

 と、唐突に交信ルールを完全無視した通信が返ってきた。


「ウィリアム班よりコマンドポスト。交信内容が不可解である。どうぞ」

 面倒なのを我慢して生真面目に応答してやれば、腹立たしいことこの上ないドデカため息がスピーカーから響いた。


『そーいうのいいから。他の班はアイドルオペレーター・ステラちゃんとのお喋りを末永く楽しみたがるのに、あんたはホントそっけないわよねー、ウィリアム曹長』


「……オペレーターにアイドルがいたとは驚きだ」

 言われた通りにするのも癪だが、こんなの相手に七面倒くさいルールを守るのもバカらしいので、こちらも交信ルールを無視する。


『ま、そんなのいないけど、任務中に女と話せるってだけで、大多数の野郎は大喜びでしょ』

 この腹黒さは、確かに性格の悪いアイドルと言えなくもない気はする。


「こんな口も態度も悪いオペレーターが相手でもか?」

『そりゃ、あんた以外にはちゃんと媚び売ってるから』

「なるほど。それじゃ俺にも売ってくれないか、それ」

『あんたは売っても無駄そうだし。流石ハーレム班の曹長さんは余裕が違うわね』

「そんないいもんじゃねえよ」


 本当に全く、いいものじゃない。上の考えてることなんて、心底ろくなもんじゃない。


『でしょうね。ま、たださ』

 自称アイドルオペレーターは若干言い淀んでから、


『上の思惑はどうあれ、別にそのことを無理にどうこうなんて考えないで、気楽に、自然にいきなさいな。別にやれば必ずできるってわけでもなし』


「……自称アイドルの口にするセリフとは思えないな」


 明け透けな物言いに、思わず笑ってしまう。


『言ったでしょ、あんたの前ではアイドルじゃないのよ』

「そーかよ。ま、なんだ」


 俺も言い淀みながらも、


「なんで急にそんなこと言うのか知らんが、気遣いには感謝する」


 内容はどうあれ、その心遣いには謝意を伝えるべきと思って、言葉にした。


『んーやっぱ少しだけとはいえ年長のお姉さんとしては、若者が自分の心に素直にならないのは後悔残すと思ってねー。そんだけ。余計なお世話したわね』


「そうだな。それじゃ、余計なお世話ついでに悪いんだが」

『なに?』

「この通信は他の班員も聞いてると思うんだが、そこのところもうまくフォローしといてくれないか?」

『ゴメン、他の班の報告もあるし、そろそろ切るわね。オーバー』

「随分都合のいいタイミングだなっ!?」



 言いたいことを言って、災厄の芽を残して、俺達の頼りがいあるオペレーター・ステラお姉さんは交信を断絶した。




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