EX.43 「エピローグ」
あれから放課後。
俺とカレン(そう呼べと言われた)は屋上にいた。
「すまん!」
「え···?」
カレンは俺の突然の謝罪に肩透かしを喰らったかのように気の抜けた声を出す。
「どういうこと?」
カレンの質問に俺は、え〜と···、と人差し指を繋げてもじもじする。
「実はあの時の事······覚えていた事を謝りたくて······」
すると、カレンの方からビキッと音が聴こえたのは幻聴だと思いたい。
「まあ······そうなのですか。仕方のない話ですよね。貴方にとって私という存在は忘れてもいいようなものなのですから」
「すいませんでしたぁ‼」
俺はおもいっきり土下座を繰り出す。
屋上、風強い、カレン、スカート。
これだけでまずかったのに、土下座はさらにまずい。傍から見れば女子のスカートの中身を見ようとしている変態のようだ。······っておいカレン‼スカートを抑えてください!マジでめくれるから!
「変態」
この声はカレンからではなく。後頭部にいるレインボーの声だ。
「まあ······別にあなたに見られても悪い気がしませんけど······」
「痴女‼痴女ですこの女!」
「お願いですからそういうセリフは止めてくれませんか!?」
「スカートの中身は私の領域です‼」
「お前も相当痴女だ‼」
そんな変態トークはそこらへんに置いておいて、本題だ。
「それで、なんの為に俺を呼んだんだ?カレン」
「いきなりペースを元に戻されても少し困るな······ちょっと待ってアキヒトくん」
するとカレンは少し後ろを向いて「カレン······カレンかぁ······」と呟いている。
「やっぱこの人変態なんじゃないですかね?」
「それはお前には言われたくないと思うぞ」
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ようやく落ち着いたカレン(道中何故か鼻血を出していた)は俺の方をビシッと向いて。
「これを返そうと思ってね」
するとカレンはお守りにしていたらしい、超軽量型形状記憶合金のプレート『英雄実績認定カード』もとい『ヒーローカード』を取り出した。
「あのとき、約束したからね。はい」
「おっおう、サンキュー······」
淡白のように見せてはいるが、内心では「よっっしゃぁぁぁ!」と叫んでいる。
おそらく顔が歪み出してはいるが、そんな事は関係ない。
俺はカレンが名刺を出したように両手で持ったカードを掴んだ。
ぐっ!······ぐっ!···ぐっ···?
「あれ······どうした?カレン」
カレンはヒーローカードを持ちながら———いや、鷲掴みながらニコニコと言う。
「いやぁ〜ちょっと頼み事をしたくてね」
「え、なんで?······っておい‼離せ‼はなせぇ‼」
俺は全力の力を込めるがピクリともいわない。ほんと、こいつどんな力があるんだ?
「仲間にしてよ」
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「は?」
「だからぁ〜な·か·ま·に·し·て·よ!」
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「なにその嫌そうな顔?」
「いや、お前性格難ありだし······」
「なんかドシドシ言うね‼ほんと‼」
そうして俺をバシバシ蹴る。ほんと痛い。
「だってそうだろ!?」
「ちがわい‼」
カードを持ちながらの乱闘は周りから見るとことごとく悲しい。
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それからしばらくたったあと、はぁ···はぁ···、と息を漏らしながら諦める。
根負けしたのは俺の方だ。
「分かった······分かったよ。入れるよ俺たちのチームに······」
「やった!」
カレンはぐっ!と握り拳を作る。この喜びようは結構可愛いものだ。
「はい‼カレン能力は『魔女』‼今日からよろしくお願いします‼」
そう言うとカレンは敬礼のポーズをとる。
俺もやれやれと敬礼のポーズをとる。
あっ、そうだ。
「カレン、今日ちょっと今からギルドで集まる予定だから。一緒に行こうぜ」
「えっ!」
確かに突然なので驚いても仕方ないが、そんな真っ赤になるか?
さらに頭の上でぷくぅ〜と膨れるレインボーを見て、さらに疑問が膨れる。
まあいい、今はあのとき出来なかった議題を終わらそう。
今はまだ四時半、まだ明るい時間。
風がささやかに吹き前髪を揺らす。
俺たちに一人の仲間ができ、彼女は将来俺たちだけでなく、俺にも大きな存在になる事は———
神のみぞ知る




