EX.41 「邂逅の魔女」
「この方の知識は我々の中でもかなりの実績を誇っている故、私は彼女を推薦します」
「彼は私達のリーダーでありまして、彼の機転こそ私達の命綱になる事がある事故、私は彼を推薦します」
―――と、言うように我々は互いに互いを推薦(今回は地獄に突き落とす行為)する。
俺はニコッと笑って。
「彼女は女の子なんだよ?女の子の相手をするのは同じ女の子の吉田さん······貴方じゃないか」
吉田はニコッと笑って。
「あらあら宮田くん。そういうのは男女差別と言うのよ――――それに、女性を優しくエスコートするのは男性の仕事じゃないですか」
ぐっ······こいつ、普段は横文字一切使えない癖にこういうときだけ無駄に覚醒しやがる。
ちなみに依頼者である例の転校生は目をまんまるとして2人をきょろきょろしている。
ん······?っていうかこういう仕事って······
「探偵の仕事じゃねぇか‼」
「‼」
転校生さんはビクゥゥゥ‼と反応する。
「そうね、これは探偵の仕事であって英雄の仕事じゃないわね」
さっすが吉田さん!最低だぜ‼
「えっ·····でも、最初は乗り気じゃ······?」
「『乗り気』······?何それ美味しいの?そんなんでお腹が膨れるの?」
謎の逆ギレを見せた俺に最低さんはウンウンと頷く―――本当、こういうときだけ馬が合うわ
すると、彼女はぷるぷると震え、目には涙を浮かべる。俺としては不味いシチュエーションだ。
こういう状態で頼み事をされたらなんか断れない気がする。
すると、そういうのに俺が弱いと分かっている吉田は肘でドンと俺に突く。
分かっているでしょうね
分かっているつもりなんだけどな······
こういうのは俺の善意との戦いだ。
俺の中の天使と悪魔の決戦。
もちろん皆さん知っての通りの結末である。
「なぁ、ちょっと話ぐらい聞かないか?」
天使のK.Oアッパーカット、開始時間まさかの1秒である。
そしてその後、吉田に2、3発蹴られた俺だった。
@@@@@
少し元気のなくなった俺、不機嫌な吉田の前には依頼者である転校生さん―――余島さんがいた。
今、ここは学校内のテラス。
たとえ帰宅のチャイムが鳴ったとしても部活という存在があるから帰るという選択肢は我々にはないのだ。
「さてさて聞きましょうか聞いた上で無視しましょうか」
「聞いた上で無視ってどういう言葉何ですか⁉」
「安心しなさいこれが私という日本人よ」
「日本人に変な印象を作るな」
ちなみに吉田はまぁまぁのツンデレ具合を発動させていて、しばらく話している俺には、「さっさと終わらして帰りたい」を「さっさと言いなさい聞いてあげるから」という言葉に聞こえる。
「ちなみに何で俺達を選んだんだ?気前よく話していた烏合の衆がいただろ?」
「居ましたけど······あの人達は私の事を見せ物とか考えているようで······私に『転校生』って箔がなかったら集まりもしませんよ」
まあ、その気持ちは分かるが何で俺達が······?
「言うとお二人がチョロそうって感じていたんです。それに頭が凄いそちらの方は名のある英雄って聞いたんで」
「お前を殺すか悩んでるがいいか?」
「即刻殺すでいいんじゃない?」
「ハハハ〜冗談でも止めてくださいよぉ〜」
「「冗談とでも?」」
「ヒィッ‼」
そろそろ同級生は色々なければいけないとは思っていたが残念だな。
「ちょっと待って宮田······あの子の背後にはなんか違和感があるわ」
「なっなんだと⁉」
「貴方······その情報はどこで?」
「ユウスケって名乗る人からですよ。二人はチョロくて、髪が派手な方の方はさらにチョロいって······」
どうやら明日がないのはユウスケの方らしい。
「今からこんな相談話を止めてユウスケの処刑の話しない?」
「いいわね。まず私の『万国不動の防壁』でタコ殴りにしましょう」
「じゃあ次に俺の奥の手中の奥の手の『約束された友情の証』でぶった斬りますか」
「何でそんな怖い話に移転してるんですか⁉」
「おっと······悪い悪い大事な事を聞いていなかったな······お前の探している奴って誰なんだ?」
それは、ここから数日は悪手となり、数年後には最もやってて良かったと心から思えるような台詞。
「アキヒト······って方何ですが」
「解散解散」
「さて帰るか」
既に帰宅準備は整っているので、鞄を背負って立つだけ······簡単なお仕事だ。
簡単······か?
「まだ何も分かってないじゃないですか⁉なのになんでですか!?」
俺は、止めてくれ、とアイコンタクトで吉田に送る。
「こいつよ、アキヒトは」
「おい······こら!」
もちろん彼女は俺のアイコンタクトなど聞くはずもなかった。
「は······?」
俺は両手でぶんぶん振って。
「いや······違うアキヒトだから······そう‼『秋人』さん‼」
ちなみに俺は検索しても絶対に出てこない漢字であるが、これは結構気に入っている。
そんな事はどうでも良くて、ここしばらくは余島はブツブツと英語を呟いている。時折聞こえる単語が物騒なので翻訳はしないでおく。
「なんで······」
彼女は日本語で言った。
「なんでなの······?」
彼女は数年父に頼んでしっかりと覚えた日本語で言った。
「何で······こんなの······」
彼女はおぼおぼしく言った。
英語ではなく日本人共通の日本語で――――――それよりも俺達にとっては分かりやすい『神戸弁』で。
「酷い」
「まっ······待て余島‼」
「酷いよ······酷すぎる······私だけ覚えてて······私だけ大切にしてて······相手は忘れてて······酷いよ、バッドエンドだよ、絶望だよ······」
彼女の嗚咽は止まらない。
彼女の言葉も止まらない。
まるで、今まで堰き止められていた水が濁流となって、流れ出すように―――――
「私······ずっと大事にしてたんだよ······?これ、持ってたら合える、って言ってたから······ずっと会いたくて、本当に会いたくて、母国を捨ててでも会いたくて‼」
今の俺たちにはなんの弁解もない。
ましては隣にいるのは部外者であり、今回の被害者だ。知るはずもない――――しかし、理解者でもある。同じ境遇だった彼女も、ただ聞いていただけだった。
なんの弁解もせず、聞くだけだった。
まるで、俺に託すかのように。
「でも······相手の方は忘れてた‼ずっと······王子様だ、って思い込んでいた‼現実なんか違うのに······最低だよ······」
「黙れ······」
ふいに聞こえた声は俺の声だった。
ただ「覚えている」と一言伝えれば良かった筈なのに。俺は全くもって真逆の言葉を発していた。
「現実をそんな最低視するなよ······だから『本物』が見れなくなるんだよ。お前······その『アキヒト』があの後どうなったと思う······?」
「え······?」
「興味ないよな‼気にしたことなかったよな‼自分自身の努力で精一杯だったもんな‼」
俺の口からはまるでサンドバッグに当たるかのように彼女に暴言を吐き続ける。
「他人のことなんて顧みない······そんな奴に俺だって構ってる余裕なんて無いんだよ‼お前が1人で強くなって他人の力借りて成長して、会いに来ました覚えていますよね······、なんて、あ〜そうですか頑張りましたね、とかしか言わねぇんだよ‼」
俺は一拍置いて。
「お前の知らない間に『アキヒト』は心を侵されてどうでも良くなった······。死にたくなった時なんてとてもじゃないが数え切れねぇ······。これっぽっちの人間なんだよ俺は‼」
「無敵のヒーローでもない‼」
やめて······
「ただの·····ただの······」
やめて······お願いだから······
「人間なんだよ‼俺は‼」
「やめて‼」
俺はハッ、とした。
その瞬間意識が途絶えた。
@@@@@
中学校校門前――――吉田はアスナと出会っていた。
「何してるんですか?星空先輩」
私の今の状況は余島からもろに一発くらい、目をぐるぐるして、気絶している宮田を背負っている状態だった。
アスナはぷぃっとこちらに背を向け。
「別に今日ちょうど暇だったんもんで、中等部にたまたま寄ったところ、たまたまアキトくんを背負ったあなたと出会っただけよ」
「何ですかその2周遅れのツンデレは」
これを応えたのは私ではない、宮田の後頭部からぴょこんと現れた妖精レインボーだ。
「アキヒト大丈夫なんですか?頭からぷしゅぅ〜と煙が吹いてますよ」
私もそれに関しては不安である。あの時「やめて‼」と叫んだ後、何かしらの力を込めて、宮田をぶん殴ったのだ。しかも、通常膨れ上がるところを凹んでいる様子、そして一向に目が醒めない宮田の様子から相当強力な一撃だったとみえる。
いったいどこからそんな力が······?
すると額の煙が少し時間が経つにつれて無くなっていき、「ふごっ‼」と声を漏らした後、宮田は目覚めた。
「あんた······言い過ぎとやり過ぎ」
「開口一番それかぁ〜」
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その後「貴方結構軽かったわね」と言った途端、宮田は崩れ落ちるように倒れ込んだどうやらこれは案件物らしい。
そうして、先程の話を"元„カノである星空先輩に伝える。
「なんで"元„って強調させたのかなぁ〜?」
「レインボーちゃんがそう言えって」
「テヘ♡」
@@@@@
「珍しいね······アキトくんがそんな感情を出すなんて」
「ふん‼アキヒトの良さが分からない駄目人間ですねぇ」
あの後の事を言い切った感想がこうだ――――レインボーちゃんが結構辛辣な言葉を発した。
「まあアキヒトは『英雄』って言うより『神様』ですからねぇ〜アキヒト·イズ·ゴッドですよ!」
すると「何言ってんだ」と言いながらアキヒトは立って言った。
「俺みたいな神がいたら、俺は真っ先にそいつを殺しているよ」
そして「帰ろうぜ」と言った。
その顔は笑顔だった。
レインボーは知っていた。
彼は心で泣くのだと。
@@@@@
次の日
いつも通りに登校していつも通りにクラスメイトと接していつも通りに時間が過ぎていった。
昼休み
「何?」
昼食を真っ先に食べ終えて『かぐや物語』の続きを読んでいた吉田の目の前に昨日の彼女がいた。
「この前はあんなことしてしまい······申し訳ございませんでした‼」
「私に言ってもきりがない······それとも何?伝言してほしいの?私はそれを却下するけど」
「······なんで、あの人があんなことを言ったのか分かりませんでした」
「私だって分からないのよ彼の気持ちだなんて分かりっこない」
「でも······会ったら『嬉しい』って思って欲しかった······」
吉田は彼女を見る。
彼女は酷く純粋で、純粋が故に時々ヒステリックになる。それは傲慢で怠慢で強欲な人間。
私は1本指を立てた。
「私の知ってる限りの彼の昔話をしましょうか」
「昔話?」
「ええ、あの男が頑なに喋らない昔話の一部······私の知っている所まで」
「······教えてください」
彼女の目には少しだけだが命が籠もった。
宮田のもう既に『死んでいる目』ではなく、生き返らせることの出来る目だ。
私が焼けるのはお節介だけ······あとはあなた達が変わるのよ。
「ただし条件があるわ。もし、私があの男の昔話をして、その上で許せないのならもう二度と私達の前に現れないで―――――そして、もし彼と心が通じ合えそうならば」
「彼を許してあげて」
そして彼女は言う、彼のここ数年の『真実』を




