14 最終話 『 誓い 』
最終話になります。
「ユア姉様……」
「いらっしゃい、カメリア」
私が静かに微笑んで手を差し伸べると、愛しい妹は泣きながら近づくと私の手に縋り付く。
「姉様……姉様っ」
「カメリア……」
記憶は完全に戻り、世界中の赤ん坊から“嘆き”と“絶望”を掻き集めて神の【力】へと変えたが、それでも全盛期の十分の一もない。
やっぱり三百年前の敗戦が後を引いている。
私は……“神”になっても、呪いだけは消せなかった。
三千年分の記憶により魂の容量が拡張され、過去と未来を視る【真実の瞳】から私は物質の時間を操る能力を得て【神】へと成った。
その【時神】の力を使ってもわずかしか命を延ばすことが出来ず、結局呪いに打ち勝つことは出来ていない。
私に呪いを掛けた四柱の大神。そして今も五大神として残る三柱の大神が居る限り、私の呪いは解けることはない。
でも私は諦めない。ただ普通に生きて、ただ普通に死ぬ為に。
「行きましょう」
「……はいっ!」
私が空洞の奥へと進むと、カメリアが嬉しそうについてくる。
そこに二人の男がいたけど、顔色を失い固まったままの彼らの横を通り過ぎると、そのうちの一人が崩れ落ちるように膝を付いた。
行きましょう……。この地に居るもう一つの“神”の所へ。
***
この地に降臨した【時神】は、この場にいた人間など歯牙にも掛けず、もう一人の少女を連れて空洞の奥へと消えていった。
辺りを支配していた【時神】の神気が薄れたことで、ニコラスもようやく息を吐き、青い顔で冷や汗を拭う。
(本物の神とはあれ程のものなのか……)
神学者として神と出会えた幸運を喜ぶ事さえ出来ず、今、命があることが不思議なほど神が居なくなったことに安堵している。
神々の秘密を暴いた【黒髪の少女】と、元六大神の【時神】が同一の存在とは、タチの悪い冗談のようだ。
いや、神々の正体を知ったからこそ、神となれたのか? ならば【黒髪の少女】が残した聖典の内容は真実かもしれない。
【時神】・タルタィユァ。
千年前に出現した新しい神でありながら、【六大神】の一柱となった存在。
愛する者の死を受け入れられない人々の“願い”から出現した、神々の中で唯一蘇りを司り、“人”の現し身を持つ大神。
六大神でありながら、邪神を率いて他の五大神に戦いを挑み、三百年前にこの世界から消えたはずだった。
常識外れを自負するニコラスでも、これ以上、あの【時神】に関わるつもりにはなれなかった。
認識出来た瞬間に、小柄な少女が山のようにそびえる原初の巨人の如く感じられて直視することも出来ず、今思い出しても脚が震える。
ニコラスが今も生きているのは、単に『神の気まぐれ』に過ぎない。
しかもその傍らには、人間など虫けらのように殺す、伝説上の本物の“化け物”が付き従っているのだ。
これ以上はもう定命の人間が関われる次元の話ではない。
「……ムラサメ、僕は逃げるよ」
「…………」
ニコラスはせめてもの義理で呆然としている村雨に声を掛けたが、ニコラスはその返事を聴くことすらせずにそのまま足早に出口へと向かっていった。
「…………」
村雨は現実を直視することが出来なかった。
あの【黒髪の少女】がカメリアの人生を歪め狂わせた元凶であると気付いた村雨は、それから三十年掛けて各地を調べ、神々の呪いによってもっとも【黒髪の少女】が現れる可能性があるこの地で待ち構えていた。
それが現れる場所には、必ずカメリアがいる。【黒髪の少女】さえ消滅してしまえば、愛するカメリアも呪われた生から解放される。
それだけを信じて生きてきた村雨は、非情な現実に叩きのめされた。
「………いや、まだだ」
村雨は血走った目で顔を上げる。
「この地の神を目覚めさせれば……。いや、暴走でもいい。この国が滅びてでもアレを殺すことが出来れば、カメリアはっ!」
――椿切り姫がくるよ――
その時、村雨の耳に幼い巫女の声が聞こえたような気がした。
可哀想な子供。村雨の計画の為に生まれた時から地下に押し込められ、ただ神の声を聴く為だけに生かされてきた子供。
彼女の人生を歪め、狂わせてきたのは村雨だった。
「…………」
自分の罪深さに顔を上げた村雨が最後に見たものは、迫り来る銀の瞳と、鉄で出来たノコギリの刃だった。
***
私が最後の“用事”を済ませて戻ると、先を歩いていた菜の花――ユア姉様が少しだけ振り返る。
「お帰りなさい、カメリア。ここだと“椿”のほうがいい?」
「……どちらでも」
私達フェーシルの民は、故郷を失って世界に散らばってから、その土地の言葉で名を名乗るようになった。
でも私は、姉様に会えたことが嬉しくて、昔のように『姉様』と呼んで、姉様から昔のように呼ばれることを喜んでいる。
それを素直に伝えることが恥ずかしくて、少し拗ねたような口調になると、ユア姉様は悪戯ッコのように笑って、私にギュッと抱きついてきた。
「もぉ、カメリアったら可愛いっ」
「ね、姉様っ!?」
以前はともかく、今は私のほうが背が高いから、抱きつかれると必要以上に接触して思わず顔が熱くなる。
私の記憶でもここまで過剰に接触された覚えがなくて狼狽えると、姉様が不思議そうな顔で私を見た。
「……もしかして、記憶が完全に戻ってない?」
「え?」
私の口から間抜けな声が漏れると、身体を離したユア姉様がニンマリと笑う。
「今の私が“素”よ。お姫様をしていた時には、猫を被っていたからね」
「ええええっ」
私が初めて出会った時のお淑やかな姉様ではなくて、ほんの数日前の“ハナちゃん”だった彼女が本当の性格らしい。
記憶は完全に戻ったつもりだったけど、今の記憶は少しずつ抜けているような状況みたいだ。
そんな私を見て、不意にユア姉様の顔が泣きそうに歪む。
「……ごめんなさい。あなたの人生を狂わせただけでなく、私の呪いの影響まで与えてしまった」
「姉様……」
私が姉様の側に居たことでいつの間にか呪いの影響を受けて、私はフェーシルとしてではなく、“椿”という同一の存在として生まれ変わり続けている。
でもそんな不自然な呪いの影響では、ユア姉様のように完全な記憶を保つことは出来ない。でも……
「姉様、違います。これは私が望んだことです」
私はキッパリと言って、姉様の手を両手で包んだ。
そう言えばいつも、姉様と出会うのは姉様が死に掛けている時が多いので、こうしてはっきり言ったことは無かったかもしれない。
私は千五百年前のあの時、姉様に救われた。拾って貰ったからじゃない。あの時から姉様から与えられる愛情の全てが、私の取っての救いだった。
だから私は後悔していない。姉様を救うことだけが私の全てだ。姉様が居ないのならこの世界の全てが意味が無いのだから。
例え……あの時の原因の全てが本当に姉様にあったとしても。
「私は望んで姉様の側に居ます。だから……だから、私を見捨てないで……」
私は姉様の手に縋り付くように涙をこぼす。私は姉様の前では泣き虫だ。姉様の前でだけ、本当の私になれる。
「カメリア……」
姉様はまたそっと私を抱きしめ、……その細い身体がわずかに震えていた。
「あなたを巻き込むのが怖い。私のせいでカメリアが傷つくのが嫌だった。でもあなたはずっと私を救おうと追ってきてくれた……。だったら」
私を抱きしめる姉様の腕に力がこもる。
「私とずっと一緒に居てくれる?」
「はいっ」
私は姉様の誘いに躊躇無く答えた。
これは“誓い”だ。千五百年かけて姉様を追い続けた私は、ようやく姉様の隣を歩けるようになった。
姉様に呪いを掛けた四柱の大神。旧四大神のうち、【太陽神】は姉様に扇動された民衆によって全ての神殿を潰され、三つの邪神に成り果てた。
三百年前の私や“兄姉”達が参加した戦争により、【狼神】は教義が歪められるほどに弱体化出来た。
私は戦う。姉様と共に。
迷いなく答えた私に、姉様がはにかむような笑みを見せる。
「ありがと……」
「う、うん」
数日前のように二人して微笑みあっていると……
「こほっ」
「姉様っ!」
突然ユア姉様が身体を折るように咳き込み、慌ててその身体を支えると、姉様が口元を押さえた手には血がべったりとついていた。
「ねえ……さま…」
「……こほ、……あまり時間はないね」
神々の呪いだ。全ての現象に介入し、姉様にもっとも酷い死を与える。
その為に姉様は大人になる前に死んでしまう。今は神となった【力】があるから無理矢理身体は動かせるけど、その【力】では身体は癒やせても今世の【生命】そのものを回復することは出来ない。
困ったように笑っているけど、姉様は息をするだけでも苦しいはず。
「行きましょう“椿”。……アレを放ってはおけないわ」
「……はい」
私は姉様を支えながら奥へと進む。
ユア姉様は私を“カメリア”ではなく“椿”と呼んだ。ただ庇護するだけの“妹”ではなく、共に歩く姉妹として名を呼ばれた私は、姉様の隣を歩む為に私も足を止めることはない。
「……あの神はね、怖がってるの」
「はい」
歩きながら姉様が話してくれる。
「この街の人間の“欲望”から生まれて、人間に無理矢理目覚めさせられて、それを止める事が来出る“神”に怯えている」
「…はい」
この地に居る神は、まだ生まれても居ない赤ん坊のようなものだ。
だから姉様を恐れた。だから神でありながら大神達の呪いに影響され、記憶が戻っていなかった姉様を排除しようとした。
「……居たわ」
「あれが……」
大空洞の奥深くにそびえ立つ光の柱。あれがこの街の神。
『――――――――――――――』
怯えるような叫びを上げて、地震のように大空洞が震える。
「ごめんね……あなたに恨みはないけど、あなたの力を人間に使わせはしない」
姉様の決意を込めた声が暗い洞窟に響く。
「人はね……生き返らせてはいけないの。そして、人は絶対に蘇らない」
あの神の力は姉様の【時神】と同じ“蘇り”の力だ。
でも、私は知っている。この神では肉体しか蘇らなかったみたいだけど、姉様の使う蘇りは、記憶さえも戻って、蘇った人は普通に生活することが出来た。
けれど、それは“偽りの命”だった。
彼らが笑うのも泣くのも、記憶でそうすると知っていたからだ。彼らの心は変わらない。心変わりもなく、心の成長もない。
彼らには心が――『魂』が存在しない。記憶が動かすだけの操り人形でしかなかったのだから。
けれど、それでもいいと人は【時神】に救いを求める。ただ愛する人が居てくれさえすればいいと蘇りの奇跡を願う。
でもその裏には数限りない悲劇があった。永遠に心が変わらない人間と、心が成長する生きている人間は共に生きられず、多くの者が最後には蘇りを願った者を、狂ったようにその手に掛けた。
だから姉様は、三百年前に姿を消した。消滅したように見せかけて。
「【真実の瞳】」
「――――――――――」
姉様が力を顕現させ、この地の神が悲鳴をあげる。
「私の【瞳】は神々の真実さえも暴く。神が私の魂さえも消滅させようとした呪いを掛けたのは、私が唯一……神を殺せるから」
姉様には何が見えているのだろう。おそらくはあの神を構成するこの街の――いえ、この国の欲望を司る全ての人物たちが見えているはず。
政財界を牛耳る大物達、世界のマネートレーダー。そして、この街に強い興味を持つ者達。その人達を暴き出し、姉様の【真紅の蝶】がそれら一斉に消去する。
それが神を滅ぼすたった一つの方法。
「――――――――――…………」
ああ……、神の断末魔が聞こえる。この世界からまた神が消えた。
「姉様……」
「うん」
主を失った洞窟が細かに鳴動を始める。きっとこの大空洞は、あの神が力を増すごとにそれに相応しく広がり、その力で維持させてきたのだろう。
「……こほっ、」
「姉様っ」
私は急いで駆け寄り、姉様の身体を支えるようにして座らせる。
もう姉様の身体が保たない。神の力を使わなければまだ少しは生きられたけど、姉様はあの存在を放置出来なかった。
これも……呪いか。
声を漏らさず泣く私の涙を、姉様が指で掬いながらどこかへと声を掛けた。
「あなたも出ていらっしゃい」
「はっ」
その声に姿を見せたのは、秋乃兄さんだった。
その傍らにどこかで見た白と黒の蝶が舞っているのを見て、私は秋乃兄さんの正体に気付く。
「秋乃さん、あの子は元気かしら?」
「はい、ミコト様はいつも、あなた方をご心配なられています……」
「あの子は相変わらずね……」
「兄様が……」
千五百年前、運命が変わったのは私だけじゃない。あの時の四兄弟。双子の兄様と姉様も同様に運命を狂わせた。
二番目の姉様は、ユア姉様の死を嘆き悲しみ、千五百年経った今も狂ったまま世界を放浪している。
そしてミコト兄様は、姉様を虐げる全ての神々と運命を呪い、姉様と同じように神となり、神々の力を削ぐ為【乱神】として世界を混乱させていた。
「あの深見家も、ミコトの使徒をする家系だった?」
「はい。我らも世界中の親族も、元々は千五百年前からあなた方に仕えていた従者の家系です。椿様も祖父が保護をさせていただきました」
「あのお爺さんも、“あの人”のように有能でしたね」
千五百年前を懐かしむように姉様が瞳を閉じる。
「秋乃兄さん。そろそろ避難して下さい。あなた一人ならまだ逃げられる」
「椿……」
戦いしか出来ない【刃神】の使徒である私と違って、【乱神】の使徒である秋乃兄さんなら、この状況でも生き延びられるはず。
でも秋乃兄さんは穏やかに首を振り、姉様と私の前に膝を付いた。
「深見家の者として、最後までお伴させていただきます」
黄泉路への付き人……。
でも生きられるのなら生きて欲しい。私の……家族だった人だから。
「……秋乃兄さん。この地下に小さな女の子を見かけました。兄さん、彼女を救ってください」
「そうね。秋乃さん、私からもお願いします」
「………かしこまりました」
ゆるりと一礼する秋乃兄さんの姿が、闇に溶け込むように消える。
そうやって影からずっと私を見守って、守っていてくれたのね……。ありがとう兄さん。あなたは生きて。
洞窟の天井が崩れ始めている。秋乃兄さんでもギリギリかも知れない。
「こほっ、……椿、おいで」
「はい……ユア姉様」
二人きりになった崩壊する洞窟の中で、姉様を抱きしめた私の目に涙が浮かぶ。
姉様の身体がかなり冷たくなっている。どれほど苦しいのだろう? どれほど痛いのだろう?
「姉様……ごめんなさい。また……救えなかった…」
「椿……ありがとう。私は今、幸せよ。あなたが居てくれるもの」
「姉様っ」
涙が止まらない……。またダメだった。また救えなかったっ!
姉様を強く抱きしめると、姉様の力の無い手が私の背をあやすように優しく撫でてくれた。
「椿……次こそは絶対に生き延びてみせる」
「はい……っ」
洞窟内の崩壊が大きくなり、大きな岩が私達側にも落ちてきて、姉様のか細い声をかき消した。
「例え――」
***
その日、関東を中心に局地的な地震が発生し、政財界の主立った大物達が相次いで死亡した。
世界でも大物マネートレーダー達が心臓発作で亡くなり、それらの影響か日本の株価が下がり続け、それからの日本は“失われた二十年”を迎えることになる。
***
私は過去の夢を見る。
懐かしくて……悲しい、千五百年の記憶。
姉様は婚約者に裏切られ、家族を殺され、生きたまま炎に焼かれて死んでいった。
私が見つけた時、薄汚い貧民街に居たまだ幼い姉様は、全身を蝕む病気に何年も苦しんで泣きながら死んでいった。
ある時の姉様は貴族に奴隷として捕まり、何年も監禁されたあげく、私が駆けつけた時には全身を切り刻まれて死んでいた。
何度も……何度も姉様が死ぬところを見てきた。そして、一度も救うとこが出来なかった。
アリゾナと呼ばれる地で私がそこに駆けつけた時、『黒髪の少女』を捕らえた研究者達は姉様を生きたまま解剖し、私は泣きながら姉様を楽にしてあげることしか出来なかった。
そして今回も、姉様は救われることなく、苦しみの中で私と一緒に岩に押し潰されて死んでいった。
そしてまた、新しい呪われた生が始まる……
***
穏やかな日差しが注ぐ、雲ひとつ無い青い空。
遠くに望む高層ビルの群れ。遠くから聞こえる子供達の声。
昼下がりの、森のような大きな敷地の公園。
初夏の風が、震えるように木の葉を揺らして……
その【少女】は唐突に、この世界に出現した。
少女は隠れていたのでも空から落ちてきたのでもない。何も無い【無】から、少女は唐突なまでにこの世界に生み出された。
簡素な生成りのワンピースだけを纏った、まだ四~五歳ほどの素足の女の子。
微かにくすんだ鉄のような黒髪を風に靡かせながら、そっと静かに開いた琥珀色の瞳が、近くに咲いていた夏椿の花をセピア色に映して……
「……ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
少女から咽を引き裂くような、悲痛な叫びが零れた。
『また、駄目だった』
何が?
『また、救えなかった』
何を?
少女には何も無い。自分の名前さえも覚えていない。
それでも心の奥底から沸き上がる炎のような激しい怒りと、全てを燃やしつくすような果てしない憎しみ。そして心を引き裂きそうな後悔に、幼い少女は激しく泣き叫んでいだ。
その異様な様子に、幼稚園児を連れた若い母親達が我が子を連れて離れていったが、そんな中から幼稚園のスモックを着た幼い少女が軽い足取りで飛び出した。
「ねぇ、痛いの?」
泣き叫んでいた少女に声を掛けると、ニコリと笑う。
輝くように艶やかな黒い髪。無国籍風の顔立ちに綺麗な赤い瞳……。その少女の声を聴いて、泣き叫んでいた鉄色の髪の少女が驚いたように泣き声を止める。
「……っひぐ」
「ほぉら、いたいのいたいのとんでけーっ」
軽やかにそう言って黒髪の少女が頭を撫でると、泣き叫んでいた少女は顔をクシャリと歪めて、普通の子供のように泣き出した。
「……ぅええええええええええええええええええええええっん」
ただポロポロと泣いている彼女に、黒髪の少女は少しだけ困った顔をしながら、そっと抱きしめた。
「だいじょうぶよ。怖くないよ。寂しくないよ」
「えええええええええええええええええええええええっん」
泣き続ける少女を抱きしめて、黒髪の少女はその鉄色の髪を優しく撫で続ける。
「わたしが側にいるからね」
鉄色の少女は思う。
もう二度とこの温もりを無くしたくない。
今度こそ救ってみせる。今度こそ生き抜いてみせる。例え――
『――次こそは絶対に生き延びてみせる』
少女の記憶から、誰かの声が聞こえて少女の想いに重なる。
『例え――この世界の全てを犠牲にしてでも――』
これにて終わります。
なんとなく映画のストーリーっぽいものを書いてみたくなって出来た作品です。
続きも一応は考えているのですが、次のヒロインがさらに殺し方がグロいので、15禁でも椿切り姫の惨殺物部分を抑えめにして、メリハリがなくなったので断念いたしました。
こういう話は難しいですね。
次回作はちょっと軽めの話にします。
ではまたお会いしましょう。