強敵、バターン騎士団 その2
「ぬぁにぃ?! ラーバスが俺様のロレンヌにだと!?」
食事中のボアラは食べ物を卓上に撒き散らしながら驚いた。
「エルド川を越え、こちらに向かっているとのことです」
突然、ボアラは肩を揺らして笑い始める。
「……フ……フ……ハハハ。ガッハハハハ!!! 何と、愚かな老いぼれじじいだ。わざわざ、敵中に飛び込んでくるとは。これで捜す手間が省けた。なにせ、奴を捜すのに、数ヶ月もかかったのだからな。よし!! この機を逃すな。全軍、出陣だ。直属も出せ!俺様に続くのだ!!!」
勢いのまま部屋を後にしようとしたとき、同じ席で食事をしていた騎士の一人に呼び止められる。
「お待ち下さい。ボアラ卿、貴方の役目はお忘れか?」
バターン騎士団の団長、グレバスがそう疑問を投げかける。
「役目?そんなものどうでもいい! あのラーバスだぞ。あのシェール軍総大将のラーバスが直ぐそこにいるのだ。あんな大物は二度とない昇格のチャンスだぞ」
「国王陛下のお言葉をお忘れか。貴方の任務はここを守り抜くことです。それなのに現場の指揮官がいなくては、誰がこのロレンヌを守るのですか?」
「貴様がいるではないかグレバス。その為に本国から遥々ここへ、着たのだろうが!」
太い指を突きたてて、グレバスの胸の当たりを何度も突く。それにグレバスは不愉快に思ったが平静を保つ。
「そんな訳がありません。我々は特務で来たのです」
「何が、特務だ! どうせ、魔獣討伐か何かなのだろう。そんなもの、現れてから、討伐すればよいわ」
「魔獣討伐? 魔獣討伐の為に、我らはここに来たのではありません。我らは、とある女を討伐しに来たのです」
「とある女だと?」
「そうです。やつは、そこらの魔獣とは桁が違う。いわば、化け物です」
「たかが一人の女ごときに、ドラゴマ最強と呼ばれた、バターンの騎士団を差し向けたと言うのか? これは、笑える。誰が、そんな愚かな、命令を出したのだ?」
「国王陛下直々です。貴方の頂点に立たれるお方です」
「国王陛下が? あの厳格で、恐れも知らぬあの陛下が?俺様が知る国王は、こんな馬鹿げた事はしないはずだ……まぁいい。俺様はここを任されているのは確かだ。だが、指揮権を持っているのも俺様だ。つまり、ここのルールは俺様ってことだ。違うか?」
「くっ……その通りです」
「そうだろう。では、俺様は出陣するぜ。お前ら、騎士団はこの街のお守りをしておくんだな。八ハハハハハ!軍団長らを呼べ!戦いだ」
「はっ!!」
「グレバス団長、我らも?」
「いや。ダメだ。ここを守らなければ……おい、そこの君」
「はい? なんでしょうか」
伝令として情報を持ち帰った兵士に問う。
「ラーバスの兵団の数がどのくらいだった?」
「恐らく、三千ほどでした」
「……なるほど。たった三千の兵で、城攻めをするものなのか?ジン」
「さすがに少なすぎるな。最低でも二万は欲しいところだ」
ジンはバターン騎士団の作戦参謀で、幹部の一人であり、重要人物で、彼の作戦は緻密かつ正確である。
「自分もそう思います。この数、あまりにも無謀過ぎます」
バターン騎士団の幹部であるトムが言った。ジンと同じく、トムは作戦参謀の位置に職務としている。
「何か、臭うな……」
グレバスは顎を撫で、考え込んだのであった。ルベアの作戦に勘付く恐ろしきこのバターン騎士団は侮れないだろう。この騎士団には英雄として称えられるほどの功績と経歴があり、野生の魔獣討伐の精鋭部隊でもあった。




