強敵、バターン騎士団
翌日の朝、ラーバス将軍の号令の後、シェール軍はロレンヌ奪還作戦を開始する。レブソン城塞よりシェール軍の全軍がロレンヌ城塞へ向けて進軍する。
ロレンヌ――――――――シェールにとって、重要な拠点の一つであり、ここを奪還する事で、一気に形勢が逆転することも有り得る。人口六十万のシェール市民と膨大な土地の解放はドラゴマにとっても痛手となる。その為、ドラゴマ軍も当然の事ながら、迎撃部隊及び駐屯部隊、都市守備部隊がロレンヌを堅く守っているのである。そして、新たな増援部隊として、バターン騎士団がロレンヌの街へ入城するのであった。
ラーバス将軍の部隊とは別の方角からロレンヌを目指すルベアの一団は緊迫状態だった。何しろ、ラーバス直属部隊の鎧に旗を大々的に掲げているのだから。ルベアの兵団の後方付近で、護衛隊に囲まれた荷馬車が数台率き連れていた。その積荷に大量の大樽が積まれていたがこの中身が何かは、ルベアの兵団しか知らない。
数分後、拓けた荒野を進軍中のルベアの兵団は局面を迎える。
「敵の斥候!!」
その言葉にルベアは息を呑んだ。そして、すぐさまに、命令を出す。
「全隊に伝達! 散開し警戒せよ! 敵を発見次第、私に報告」
「「はっ!!」」
各隊の部隊長が自分の隊に向かい部隊を散開させた。
「ドンタール! 軍旗を持って先行しろ」
「承ったである!」
ドンタールの部隊が馬の速力を上げ、先行する。
「ルベア様、予定通りでござるな」
「あぁ。予定通りだ。忙しくなるぞ……」
白い歯をアドルに見せるのであった。ミネルヴァは口をへの字に閉ざしていたが心では、いろいろな事を考えていた。
(―――――――――私は……いつになったらご主人様の所へ帰れるのだろうか……私は……私は……あの時……)
「くっ」
ミネルヴァは苛立ちが表情に表れ、歯を噛み締めた。
ドラゴマ軍の斥候の一人が驚きの表情でエルド川の川辺に野営していた幕舎へと報告しに帰る。垂れ幕を勢いよくめくり上げて中へ転がり込むように入った。
「た、大変だ!! ラバスが、ラ、ラーバスが――――」
西の方角を差しながら手振りて説明しようとするが、喉がカラカラで声がなかなか出ていなかった。
「ん? ラーバスがどうした?新人」
「ラーバスの軍団が我がロレンヌ城塞に進軍している模様!!」
「このロレンヌに……? それは真か!?」
のんびりと本を読んでいた斥候部隊の隊長が身体を乗り出す。
「間違いありません!! ラーバスの軍旗とその兵団を目視しました!! ゲホォ、ゴホォ」
「す、直ぐに、ボワラ卿にご報告をしろ! 早馬を出せ!」
「はっ!」
斥候部隊の幕舎から一人の斥候兵が馬に鞭を打ちロレンヌの街へ全速力で向かって行った。その報告はすぐさまボワラ卿の耳に入ることになるのである。本来なら部隊の位置を敵に知られたくない為、敵の偵察部隊、斥候部隊には要注意し、もし、発見される事があるのであれば、これを全力で阻止しなければならない。
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昼間、見通しのよい丘で、状況を確認していたルベアと部下達によってエルド川の川辺から一つの影がロレンヌへ向かって駆けて行くのが見えた。それがすぐに敵の斥候だとわかった。敵にルベアらの存在が気がつかれたのだ。それをルベアは見送るだけで何の指示を出さない。追撃の部隊を出せば、簡単に追いつける距離であったが、それもしなかった。ルベアは斥候をわざと見逃したのである。それは敵に自分たちの存在を知らせたかったからだ。敵の斥候が見えなくなったこと確認したルベアは深く頷き、部下と共に丘を下りる。自分の馬に跨って、軍旗を高々に掲ると休息させていた軍団に行軍の合図を出す。




