トルナシー砦を奪還せよ! その3
騎士達がトルナシー砦城門に雪崩れの如く、進撃したがその勢いは目の前に広がる惨状に足を止めてしまう。外壁の様子はわかっていたが内部までは実際に入らないとわからないと考えていたイサルだった。がここまで酷いとは思わず言葉を失ってしまった。騎士達も同じく闘う戦意と肝が冷えるような光景が眼球に焼き付ける。
騎士達の目の前には、砦を守る兵士らの亡骸が至る所で吊るし上げられているからである。しかも、なんども刺された跡があった。そして自分たちの足元には、先ほど偵察に出した部下達の腕や足の一部やバラバラになったっていた。土が赤く染まり血溜まりができていて、思わず後退りしてしまう。
「な、何なんだこれは―――――――一体、ここで何が起きたんだ……。これではまるで悪魔の仕業ではないか……」
騎士達は修道院に収められている歴史書、古文書の中に挿絵としてあるサタンの魔宮が脳裏に広がる。まさに自分達はそこに飛ばされた感覚に陥った。挙動不審になり、目線は定まらず、震えが止まらなかった。
刹那背後の城門が堅く閉ざされ、退路を絶たれる。
「ぐぬぅ……やはり罠だったか……?」
迂闊過ぎたと後悔した。すると、何処からか複数の声がする。
「――――――おい、おい、おい? 騎士団かよ。めんどくせぇな。ソーイ、てめぇが始末しろッ!!!」
「あたちはいやなのね。だって怖いものね」
「私もパスだわ。本業は工作ですもの。闘いなんて野蛮ですわ」
「んじゃあ、うちがやろうか? 北壁帰りだけど?」
「「「賛成ッ!!!」」」
さっきまで響きわかっていた声が突然、嘘のように止んだ。それが更に恐怖を呼び覚ます。目の前にあった灯台から、何かが騎士達の前方へ落ちて来た。軽い音がしたあと、それを騎士らが驚いた顔で凝視する。
「やぁ~初めましてやな? うちはキュナンって言うねん。よろしくな~」
謎の少女がどう陽気に手を差し出し挨拶してきた。
しかし、誰もそれに答えようとしなかった。全員、膠着状態となっていたからだ。
イサルが目を見開いたまま、屹立した石の塔を見上げる。
「バカな……飛び降りたら……死ぬ高さだぞ。……私は悪夢でも見ているのか……?」
ここは現実世界なのか、とイスラは心の中で自問した。引きつった顔で見つめられている謎の少女が小首を傾げた。
「あれ? もしかして、うちの登場に驚いてるんか?」
イサルが慌てて、剣先を向けて言った。
「お前は何者だッ?! 他は?!」
「他って言われてもな、うちら四人しかおらへんで」
惚けたような言い方をしたため、騎士らが罵った。数で圧倒しているローズ騎士団はようやく落ち着きを見せ始めていたからである。ましてや、小さい少女に何を恐れる事があるだろうか。彼らは聖騎士団ではないが魔獣及び魔族の討伐遠征の経験がある。数年前にはコカトリスの討伐に成功しており、熟練度が非常に高い。コカトリスとは、雄鶏の頭を持ち、トカゲまたは蛇を合わせたような容姿であり、たまにプルクテスの山脈や森林などに出没しており、危険性も高い魔獣である。
「ふざけるなよ小娘ッ! ここの守備隊は八千以上は居たはずだ。そう易々と陥落するはずがない!」
「それを上回る戦力があるはずだぞ!答えろ!」
「って言ってるんやけど、どうするや?」
飛び降りて来た灯台を見上げ、誰かに話しかけた。すると直ぐに返事が返ってきた。
「決まってるだろ。加勢してやるよ」
「あたちも、フェザール様に褒められたから、頑張るのね」
「仕方ないわね。久々なら悪くはないわ」
先ほどの少女と同じ場所から三人の女達が飛び降りてきた。新たに飛び降りて来た事に対しては驚きを見せていたが、四人に対してローズ騎士団は六千以上。笑い声まで出始める。
「バカめ! 我らはローズ騎士団。泣く子も黙る精鋭部隊だ」
「貴様らは、ゴミ同然である」
それに短気なレイラが反応し目を顰めた。
「あん? ゴミだぁ? 今、俺の事をゴミ扱いしたのか?」
鋭い視線が送られるが、騎士の一人が見下した顔で言った。
「ゴミにゴミと言って何が悪い?」
「はぁ……これだから騎士は嫌いなんだ。だから―――――――皆、俺がぶっ殺してやるよ」
腰に提げていた鉄斧を取り出す。目のきつい少女は鉄斧を構え、唐突に騎士達の隊列に走り込んで行く。数人が迎え撃つ構えをするが、接触の瞬間にレイラが上へ飛翔した。
「と、飛んだだと?!」
空中で回転をしながら、騎士達の頭上に斧を振りかざす。
「さぁー皆殺しパーティーの始まりだ!」
目を光らせ、騎士達のど真ん中に突っ込んだ。




