復讐のために…… その2
――――――幾万の将軍、暴君はただ土地欲しさに攻めたりはしない。攻め込むならば、それなりの対価があると考えているからだ。この大陸の資源は地方によって大幅に変わってくる。
例えば、北部は雪国スノドロスが中心として北部連合をまとめあげている。雪が一年中に降り続け、吹雪は頻繁に起きている。そこには“ビックフット”と呼称する山男が生息している土地であり、旅人、商人が度々喰われるという事件はそう珍しくない。ここでは他では採れない“クリスタル”なども手に入る。
クリスタルは輝く宝石。まるで星の光のような輝きを放つ。クリスタルの中で、大きなものは、“星の贈り物”と呼ばれることもあった。それらはガラス加工としても必要な資源の一つとなっていた。
東部は永遠に続く地平線、ビルゴの砂漠に覆われた無の土地である。大きな国自体も存在せず、ロルタイ民族が代表として東部を治めていた。ここでは、太古の遺跡が数多くあり、歴史学者、考古学者には宝の山だろう。学者の間では太古の遺跡には、古代文明の財宝が隠されていると信じられているが。それらには、古の悪魔達が住みついているとも噂されている。それらに価値はあるのだろう?それら財宝を手に入れることを目的に彼は戦争を起こすことはない。
最後は西部。ここは密林に覆われて、珍しい動物が生息している。密林を治めるは、エルフレン国。非公式ではあるがエルフ族末裔が住むと言われている。彼らは宿木といわれる精霊と共に生き、森を管理をしている。その為か部外者は国に入る関所から門前払いされてしまう。その逆に外の世界には興味を示さない。よってエルフレン国との外交はない。特産品も不明、街の形も不明、民も、軍隊の数も何もわからない未知の領域である。結果、征服する戦略的価値はどの程度かわからず、議会では除外される事となっている。
オルニードのどこを狙うのか。それは彼の“憎悪”と“復讐”が今後の動きを決めるであろう。
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数日後、フェザールによって皇城の会議室で軍議が開かれた。
「―――諸君、準備が整い次第、ここを落とす」
指揮棒を机上に置かれた地図のある場所を差した。この軍議には地方軍の将軍も呼ばれていた。一人の将軍が眉をひそめる。
「東部ですか。ここには戦略的価値はありませんが」
「戦略的価値? そんな物は私には関係ない。オルニードを統一するのはだな、他の世界を征服する足場作りなんだよ。それぐらい理解しろ」
頬杖をつく。無能に呆れたのか、ため息をついた。フェザールは将軍らに嘘をついた。本当はオルニードの統一などどうでもよかった。彼は制服するのが目的ではない。目的は復讐するための軍と力を作り上げること。彼の行動が理解できない地方将軍らは困惑顔で同席の者と見合わせる。だが親衛隊将校の反応は違った。誰もが椅子から立ち上がり主を立てるかのように拍手を送る。
「流石は陛下でありますっ!!! 一手、二手、先を考えておられますな! ガハハハ――――っ!!」
中年の親衛隊将校が背を反らせて笑う。
「自分は感動致しました!!」
とまで言う親衛隊将校もいた。ここからみても親衛隊将校と地方将軍らとの温度差がわかる。
「ヘルベルト将軍、ここを落とすには、まず、三つの砦を同時に攻撃する必要がある。現場からみて、兵力はどれぐらい必要か?」
東部地方担当の将軍であるヘルベルトは手を顎に置き、撫ではじめた。
「……同時にですか。……えっと……そうですな。砦の守備隊から考えて、五万以上は必要かと。しかし、それだけの兵力は我が地方軍にはありません」
「なるほど、外部からの攻撃は厳しいか……ならば、内側から落とすとしようか」
フェザールがすこし考えると手を二回叩いて何かの合図をした。する彼の背後から二人の少女らが影から突然現れる。右の肩には蛇の入れ墨がくっきりと入れられていた。前にも話したホワイト・スネークだ。
「ご主人様。お呼びでしようか?」
二人は深くお辞儀をした。地方軍の将軍らは、薄気味悪い相手に息を呑んだ。さっきまでは居なかった少女が闇に潜む悪魔に見えた者もいた。
「さっきの話は聞いていたな?」
「はい。全てきいています」
「さぁ君達の大好きなお仕事ができた、やり方は任せたぞ」
その言葉に反応した彼女らは怪しい笑みを見せ敬礼すると外に出て行った。廊下で二人が笑いながら話し出す。
「さて、今回は誰がやるんだ?」
「レイラったら。殺したくてうずうずしているくせに」
「姉貴には隠せないな」
「じゃあ、今回も私が根回ししておくから、綺麗にやるのよ」
「任せろ」
ポニーテールの娘がそう笑みを浮かべ、楽しそうに小走りでどこかに向かって行った。殺人鬼と化した彼女らの楽しみは殺す相手の泣き叫ぶ声と痛みのあまりに暴れ狂うい死んで逝くのがたまらない。そして、殺した相手の証拠を主人であるフェザールに持って行くと、褒めて貰えるのだ。彼が機嫌が良ければ、可愛がってもらえる。おかしいかもしれないが、彼女らはスラムの子であり、幼少期から、フェザールの洗脳を強制的に受けた為、極端な考え方した持っていない。
「陛下、あれはなんですか?」
当然、地方軍のある将軍が聞いてきた。
「貴様らは余計な詮索をするな。目的を果たす為に何をすれば良いのかだけを考えろ。私の手を煩わせるなよ。さっさと、部隊の編成や出撃準備でもしておけ。私は忙しい。いちいち指示をしなければ動けないのか?これで軍議を終わりだ。バルカス、行くぞ」
そういうと赤いマントを波かせた。
「はい。陛下」
颯爽と議会室をあとにする。三呼吸ほどの間が空いたあと、親衛隊の将校が偉そうに告げる。
「ヘルベルト将軍、陛下が手を打たれた。貴様は奇襲部隊を編成し、現地に向かいたまえ」
「案ずるな。これならば、少数民族の集まる東部は簡単に落ちるだろう」
「ハハハ。敵は大混乱に陥るな」
親衛隊将校らがニヤニヤしながら話し合う。もう勝ったつもりの様子だった。
(――――――――フェザールめ。何を企んでいる?)
ヘルベルトは不適な笑みを見せるフェザールを横目に心でつぶやいた。




