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努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第五章 積み重ねたもの
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98/254

一つ上がった先

ご覧いただきありがとうございます!

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それでは、どうぞお楽しみください。

ラグナードへ戻った翌朝、俺は宿の部屋でステータスを開いた。


昨日、ゴブリン三体を倒したあとにLv17へ上がったことは確認している。でも、能力値までは見ていなかった。



レオン・アルヴェイン


Lv17


筋力 27


耐久 29


敏捷 33


魔力 11


精神 27


《格闘術 Lv2》


《剣術 Lv5》


《回避 Lv5》


《走行 Lv4》


《隠密 Lv3》


《運搬 Lv4》


《解錠 Lv2》


《不屈 Lv5》


《観察 Lv3》


《魔力操作 Lv2》


《魔力放出 Lv1》


《生活魔法 Lv1》


《水生成 Lv1》


《戦域把握 Lv3》


《追跡 Lv1》


《風操作 Lv1》


固有能力:


《超越》


技:


《誘導歩》



前は筋力25、耐久27、敏捷30、魔力10、精神25だった。


筋力は2。


耐久も2。


敏捷は3。


魔力は1。


精神は2。


全部が同じように増えるわけじゃない。


これまでにも分かっていたことだけど、改めて数字を並べると分かりやすい。走って、避けて、足を使いながら剣を振り、複数の相手の位置を見続けてきたからか、今の俺では敏捷が33で一番高い。


魔力は11。


やっぱり低い。


でも、1増えた。


「27……」


筋力を見る。


ブラムは112。


差は85。


二つ縮まった。


たった二つ。


それでも前は87だった。


俺はしばらく27を見てから表示を閉じた。



朝の鍛錬を終えたあと、ギルドへ行くとブラムがいた。


今日は依頼へ出ないらしく、訓練場へ続く扉の近くで別の冒険者と話している。相手が離れるのを待ってから近づいた。


「ブラム」


「おう。ハルウェンの方まで行ってたんだってな」


「うん。それとLv17になった」


「そうか。よかったな」


「あと21」


「何がだ?」


「ブラムまで」


ブラムの顔から表情が消えた。


「ゼノ」


少し離れた場所にいたゼノを見る。


「なんだ」


「こいつに俺のステータス見せたの、やっぱり間違いだったかもしれん」


「俺もそう思い始めた」


ひどい。


「でも筋力はあと85」


「増えてんじゃねえか」


「前は87だった」


「俺がずっと112で待ってると思うなよ」


止まった。


それはそうだ。


「ブラムも上がる?」


「当たり前だ。俺だって鍛錬するし依頼にも出る。レベルも能力値も技能も、上げられるうちは上げる」


考えていなかった。


112は目的地じゃない。


ブラム自身が動くなら、追いつくにはブラムより速く進まないといけない。


「……じゃあ、もっとやらないと」


「なんでそうなる」


「差が広がるから」


ブラムがゼノを見る。


「どういう育て方したらこうなるんだ?」


「知らん。最初からだ」



そのまま話していると、ブラムが俺の腰にある木剣を見た。


「そういや、お前とはちゃんとやったことなかったな」


「戦う?」


「一回だけな」


すぐに訓練場へ移動した。


俺はいつもの木剣。


ブラムは武器棚から、斧を模した木製の訓練武器を選んだ。刃はないけど、俺の木剣より明らかに太くて重い。


向かい合う。


ブラムのステータスを思い出す。


筋力112。


耐久86。


敏捷54。


俺より全部高い。


特に筋力差は大きい。


受けない。


正面から力をぶつけない。


「始めるぞ」


ブラムが動いた。


速い。


重い斧を持っているのに、一歩目が思っていたよりずっと速かった。


木斧が横から来る。


受けない。


後ろへ下がる。


風が顔に当たった。


避けただけなのに分かる。


これを木剣で受けたら駄目だ。


二撃目。


今度は斜め。


右へ抜ける。


ブラムが追う。


距離を取る。


《戦域把握 Lv3》で位置を捉え、《観察》で肩と腰を見る。武器が重いなら、振ったあとの戻りは遅くなるはずだ。


三撃目。


避ける。


戻る前に入る。


木剣を伸ばした。


「甘い」


ブラムが木斧の柄を立てた。


木剣が止められる。


そのまま柄が押し込まれた。


強い。


まともに逆らわず横へ逃がす。


でもブラムは追ってこなかった。


足が来た。


「っ」


腹を蹴られる寸前で身体を捻った。


完全には避けられない。


腰へ当たり、身体が横へ飛ぶ。


転がる。


すぐ立つ。


「斧だけ見すぎだ」


ブラムが言う。


そうだった。


《格闘術 Lv3》。


ステータスで見た。


知っていたのに、戦斧を持ったブラムを見た瞬間、意識が武器へ寄っていた。


もう一度。


今度は全身を見る。


肩。


腰。


脚。


斧。


視線。


ブラムが来る。


俺は下がる。


一歩。


二歩。


ただ逃げるんじゃない。


ブラムが踏み込みやすい場所を残す。


《誘導歩》。


右から入れるように見せる。


ブラムが右へ来た。


乗った。


俺は左へ切り返す。


脇へ回る。


木剣を出す。


ブラムが木斧を戻す。


速い。


止められる。


分かっていた。


だから最初から深く入らない。


触れる前に引く。


ブラムが一歩追う。


そこをもう一度ずらす。


今度は左。


視線を動かす。


剣先を見せる。


道を作る。


ブラムが踏んだ。


でも。


「それ、昨日見たぞ」


来ない。


俺が作った道の手前で止まった。


「え」


次の瞬間、ブラムが逆側へ踏み込んだ。


俺が空けていた場所。


俺自身が逃げようとしていた方向だった。


木斧が待っている。


避ける。


間に合わない。


木剣で触れて軌道をずらそうとした。


重い。


腕ごと持っていかれる。


それでも完全には受けず、身体を回して外へ逃がした。


ブラムの斧が地面近くまで落ちる。


今。


俺は踏み込んだ。


でも、ブラムの左手が柄から離れた。


肩を掴まれる。


《格闘術》。


引かれる。


姿勢が崩れた。


《崩し》。


「終わりだ」


足を払われた。


背中から落ちる。


そのまま木斧が胸の前で止まった。


負けた。


「……強い」


「そりゃお前よりはな」


起き上がる。


筋力だけじゃない。


《斧術 Lv5》。


《剛力 Lv4》。


《格闘術 Lv3》。


《受け流し Lv3》。


《観察 Lv3》。


《崩し》。


昨日ステータスで見たものが、実際の動きになると全然違った。


「もう一回」


「一回だけって言っただろ」


「じゃあ、あと一回」


「増えてるじゃねえか」


ブラムは嫌そうな顔をしたが、結局もう一度構えた。



二回目も、俺が勝てるとは思っていない。


だから目標を変えた。


一度。


一度だけ、木剣を届かせる。


ブラムが来る。


最初の一撃を避ける。


二撃目も受けない。


追われる。


でも距離を取りすぎない。


近ければ危険。


遠ければ俺の剣も届かない。


その境目に残る。


ブラムの木斧が動く。


肩を見る。


腰を見る。


脚を見る。


斧だけに集中しない。


横薙ぎ。


下がる。


ブラムが踏む。


俺も動く。


右。


ブラムの身体がついてくる。


左へ切る。


またついてくる。


速い。


敏捷54。


俺より21高い。


単純に走って逃げても振り切れない。


だったら、先に動かす。


剣先をわずかに下げる。


左側を広く見せる。


《誘導歩》。


ブラムの目が動く。


でも踏まない。


もう俺のやり方を警戒している。


なら、それも使う。


入ってほしい場所を作るんじゃない。


入ってほしくないと思わせる。


俺は左へ抜けるつもりで、右を見せた。


ブラムが右を警戒する。


ほんの少しだけ、身体の向きが変わる。


左へ踏む。


木斧が追ってくる。


ぎりぎりで潜る。


近い。


怖い。


でも、ここ。


木剣を伸ばした。


ブラムの柄が戻る。


間に合う。


その前に手首を返す。


柄の外。


脇腹。


木剣の先が触れた。


直後、肩へ衝撃が来た。


「ぐっ」


地面を転がった。


起きようとしたところで、木斧が目の前にある。


また負けた。


でも。


「当たった」


ブラムが自分の脇腹を見る。


木剣が触れた場所だ。


「……当てやがったな」


「うん」


「勝ってねえぞ」


「分かってる」


でも届いた。


筋力27。


耐久29。


敏捷33。


相手は筋力112、耐久86、敏捷54。


数字だけなら全部負けている。


それでも一度だけ、剣は届いた。


「ステータスって、やっぱり全部じゃないね」


「だから最初からそう言ってんだろ」


ブラムが木斧を肩へ担ぐ。


「ただ勘違いすんな。俺も今のでお前のやり方を一つ覚えた。三回目はもっと当たりにくくなる」


「じゃあ三回目やれば――」


「やらん」


速かった。


「それとな」


ブラムが俺を見る。


「九歳のLv17がやっていい面倒くささじゃねえ。お前、筋力ばっかり気にしてたが、自分の伸びてるもんまで捨てるなよ」


自分の伸びているもの。


敏捷33。


《剣術 Lv5》。


《回避 Lv5》。


《戦域把握 Lv3》。


《誘導歩》。


ほかにもある。


「筋力112になってから全部やる必要はねえ。力が足りねえなら、今あるもんでどうするか考えろ。昨日のロックリザードにはできてただろ」


「うん」


強い人の数字を見て、そこまで上げたいと思った。


それは変わらない。


筋力も上げる。


耐久も上げる。


魔力だって上げたい。


でも、それまで待つ必要はない。


今の俺にも伸びているものがある。


それを使いながら、足りないものを増やせばいい。


「ありがとう」


「おう。もう今日は来るなよ」


「明日は?」


「来るな」


まだ何も言ってないのに。


訓練場の出口へ向かうブラムを見送る。


Lv38。


筋力112。


まだ遠い。


でも今日、一度だけ届いた。


数字の差は85。


実際の強さの差は、たぶんそれよりずっと複雑だ。


だから面白い。


俺は木剣を握り直した。


次は別のところへ行こう。


ラグナードには、まだ見たことのない強さがたくさんある。

お読みいただきありがとうございました!

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それでは、次回の更新でお会いしましょう!

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