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努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第五章 積み重ねたもの
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敵を壁にする

ご覧いただきありがとうございます!

よろしければ、この話の読み終わりにでも【ブックマークへの追加】や【★★★★★評価】をポチッと押していただけると、今後の執筆の大きなモチベーションになります!


それでは、どうぞお楽しみください。

翌日の午後、訓練場へ行くと見覚えのある二人がいた。


一人は大きな盾を背負ったガイウス。もう一人は昨日、弓の訓練に付き合ってくれたレムスだった。二人とも装備は訓練用に替えているが、俺を見るとガイウスが楽しそうに笑った。


「聞いたぞ。昨日はレムスに勝ったらしいな」


「一回だけ」


「こいつ、近づかれたら弱いからな」


「お前が言うな。盾持って俺の前に立ってるときだけ偉そうにしやがって」


二人が言い合っている横で、俺はゼノを見る。


嫌な予感がする。


「今日は二人?」


「ああ」


やっぱり。


訓練場の中央には、また木箱が置かれていた。昨日と同じ護衛対象だ。


ゼノが木箱を指す。


「昨日は射手一人だったから、距離を詰められた」


「うん」


「なら、詰めさせない奴がいたらどうする?」


見る。


ガイウス。


大きな盾。


《盾術 Lv5》。


その後ろにレムス。


弓。


すごく嫌だ。


「二対一?」


「そうだ」


「俺が箱を守る?」


「そうだ」


「勝てる?」


「知らん」


たぶん勝てない。


でも、やる。



最初の勝負はひどかった。


ガイウスが正面から来る。


俺は木箱との間に入った。


その後ろでレムスが弓を引く。


矢。


避ける。


ガイウス。


盾。


木剣。


矢。


木箱。


全部が一気に来た。


「うわっ」


ガイウスの盾で押され、俺が横へずれる。


そこへ矢。


避けた。


その瞬間、ガイウスが木箱へ剣を伸ばした。


触れる。


「終わり」


たぶん十秒くらい。


「もう一回」


二回目。


今度はガイウスから離れない。


盾の横から木剣が来る。


受ける。


矢が来る。


避ける。


また剣。


その次も矢。


一人ずつなら見える。


でも交互に来るだけで、処理が追いつかない。


レムスを見ると、ガイウスが来る。


ガイウスを見ると、矢が来る。


木箱まで見れば、さらに遅れる。


胸に矢が当たった。


その直後、ガイウスの木剣が木箱へ触れる。


「終わり」


三回目。


四回目。


五回目。


全部負けた。



「休憩」


ゼノに言われ、俺は地面に座った。


疲れた。


身体より頭が疲れている。


ガイウスとレムスは少し離れたところで話していた。


俺は二人を見る。


強い。


でも、強さだけが問題じゃない。


一人ずつなら、もっと長く戦える。


二人になった途端、難しさが大きく変わった。


「どうした?」


ゼノが隣に座る。


「見るものが多い」


「そうだな」


「《戦域把握》で位置は分かる」


ガイウスの位置。


レムスの位置。


木箱。


俺。


矢が放たれた方向。


全部、ある程度は拾えている。


それでも負ける。


「分かるのと、処理できるのは違う」


「そうだ」


ゼノは答えだけ言わない。


自分で考えろということだと思う。


俺はガイウスを見る。


大きな盾。


その後ろにレムス。


待て。


さっき、レムスはいつでも撃っていた?


思い返す。


違う。


ガイウスが俺の前にいるとき、撃ってこなかった瞬間があった。


「レムスは、ガイウスに当てない?」


「普通はな」


「じゃあガイウスの後ろなら?」


ゼノが少し笑った。


「試せ」



六回目。


始まる。


ガイウスが来る。


俺は木箱の前に立ったまま、少しだけ位置を変える。


ガイウス。


俺。


レムス。


三人を一直線に近づける。


矢が来ない。


やっぱり。


ガイウスが盾で押してくる。


俺は正面から受けず、右へずれる。


でも離れすぎない。


ガイウスの身体をレムスとの間に置く。


「おい」


後ろからレムスの声がした。


撃てない。


ガイウスが左へ動く。


俺も左。


盾が来る。


避ける。


剣が来る。


受ける。


苦しい。


でも矢は来ない。


一人だけなら処理できる。


ガイウスが大きく右へ回った。


射線が開く。


レムスが弓を引く。


俺はすぐにガイウスへ近づく。


矢が止まった。


「なるほどな」


ガイウスが笑う。


次の瞬間、盾が真正面から来た。


「っ!」


押される。


重い。


足が滑る。


ガイウスから離された。


射線が開く。


矢。


肩に当たる。


その隙にガイウスの剣が木箱へ。


「終わり」


負けた。


でも今までより長かった。


「もう一回」



七回目。


今度は最初から狙う。


ガイウスをレムスとの間へ置く。


ただ追うだけでは駄目だ。


ガイウスもそれを分かっている。


だから俺とレムスの間から外れようとする。


なら。


《誘導歩》。


ガイウスの右側へ少しだけ圧力をかける。


俺の木剣。


身体の向き。


木箱までの位置。


左へ回るより、右へ動いた方が攻撃しやすく見せる。


ガイウスが右へ動く。


そこ。


俺も動く。


ガイウスの背後にレムスが重なった。


矢が止まる。


成功。


ガイウスの剣が来る。


受ける。


盾。


避ける。


また剣。


外へ流す。


ガイウスだけに集中できる時間が生まれる。


レムスが横へ走った。


射線を取り直すつもりだ。


見えている。


でもガイウスも来る。


どっちを止める?


レムス。


違う。


ガイウスを使う。


俺は《誘導歩》を続けながら位置を変える。


レムスが左へ。


ガイウスを左へ動かしたい。


俺は右を塞ぐ。


ガイウスが左へ踏み出す。


重なる。


また矢が止まる。


「お前、俺を盾にしてるだろ」


「うん」


「堂々と言うな」


でも使える。


敵が二人いるから、見るものが二倍になる。


それだけじゃない。


敵も互いの位置に影響される。


剣士の後ろに弓使いがいれば撃てない。


大きな盾なら、もっと邪魔になる。


なら敵が多いこと自体を、こっちの有利に変えられる。


ガイウスが踏み込む。


盾。


俺は左へ。


レムスが右へ走る。


射線が開く。


今度は間に合わない。


弓が引かれる。


足元に砂。


右手へ一瞬だけ意識を移す。


《風操作 Lv1》。


レムスの前ではない。


距離が遠い。


俺とガイウスの足元にある砂を、レムスの射線へ流す。


ほんの少しだけ砂埃が上がった。


視界を塞ぐほどではない。


それでもレムスが一瞬待った。


その間にガイウスの後ろへ戻る。


「撃てねえ!」


レムスが叫ぶ。


少し楽しい。


ガイウスは楽しそうじゃない。


「だったら、どかす!」


盾が来る。


避ける。


追ってくる。


右。


左。


また盾。


ガイウスが俺を木箱から離そうとする。


俺は離れない。


《戦域把握 Lv3》。


木箱。


ガイウス。


レムス。


俺。


四つだけじゃない。


射線。


盾が塞ぐ範囲。


木箱へ通る攻撃の線。


動ける場所。


全部を一つにする。


ガイウスが右。


俺も右。


レムスが左。


ならガイウスを左へ戻したい。


剣を出す。


ガイウスが盾で受ける。


俺はそのまま押さない。


右足を引き、左側を空ける。


ガイウスがそこへ踏み込む。


狙い通り。


レムスと重なる。


矢が止まる。


できる。


相手が動く場所を使えばいい。


一人目で二人目を邪魔する。


二人目が動けば、一人目の位置も変えさせる。


もっと続けられる。


そう思った瞬間だった。


ガイウスが突然、盾を身体の横へ引いた。


視界が開く。


レムス。


すでに弓を引いている。


しまった。


ガイウスがわざと射線を開けた。


矢が来る。


避ける。


その先に盾。


読まれていた。


ガイウスの盾が肩に当たる。


身体が回る。


木箱が見えなくなる。


まずい。


振り返る。


遅い。


レムスの次の矢が、木箱に当たった。


「終わり」


俺は止まった。


負けた。



息を整えながら、木箱を見る。


今までで一番長く守れた。


それでも最後は、逆に二人の連携を使われた。


「どうだった?」


ゼノが近づいてくる。


「難しい」


「二人だからか?」


「それもある。でも……」


ガイウスとレムスを見る。


二人が並んでいる。


さっきまで俺は、二人を別々の敵として見ていた。


途中から違った。


「敵同士の位置も使える」


「そうだな」


「でも向こうも使える」


「そうだ」


ガイウスが盾を背負い直す。


「俺が射線を塞ぐこともあるし、開けることもある。レムスが撃つことで、お前を俺の盾が届く場所へ動かすこともできる」


レムスも弓を下ろした。


「逆にこいつが邪魔で撃てないこともあるけどな」


「それをレオンに利用されたんだろうが」


「お前がでかいからだ」


また言い合っている。


でも、俺は別のことを考えていた。


敵が増える。


今までは、それを単純に不利だと思っていた。


もちろん不利だ。


見るものが増える。


攻撃も増える。


考えることも増える。


でも、位置関係も増える。


一人では存在しなかった壁ができる。


射線が塞がる。


進路が狭くなる。


互いの攻撃が邪魔になる。


それを読めれば。


それを動かせれば。


俺は二人を見た。


「もう一回やりたい」


レムスが嫌そうな顔をした。


「まだ?」


「今度はもっと長くできると思う」


ガイウスは笑った。


「いいぞ」


ゼノも止めなかった。


俺は木箱の前へ戻る。


二対一。


不利なのは変わらない。


でも、敵が二人いるなら。


二人とも、使えばいい。

お読みいただきありがとうございました!

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感想や「ここが良かった」といったご意見もお待ちしております。

それでは、次回の更新でお会いしましょう!

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