進撃と神撃
光が、支配していた。
進撃を拒絶する聖枢の絶対秩序。
空間そのものが神理によって固定され、
呼吸すら許されないような圧力が戦場を覆っている。
神理。
それは法則。
正しさ。
世界を“あるべき形”へ矯正するための力。
そして今、その正しさそのものが暴力として振るわれていた。
「抗うな」
声が響く。
「それが、“正しい”在り方だ」
瞬間。
光が収束する。
蒼生軍を押し潰すため、
膨大な神理がひとつの意思として凝縮されていく。
白く。
重く。
絶対的に。
世界そのものが、神聖国側へ傾いていくようだった。
その中心へ――
ひとつの影が踏み出す。
「……ルール、か」
低い声。
風が吹いた。
その瞬間。
わずかに、光が歪む。
一歩。
また一歩。
踏み出すたび、神理の圧力に微細な乱れが生じていく。
「……何?」
神聖側の空気が揺らぐ。
ありえない。
神理は完成されている。
乱れるはずがない。
だが。
影は止まらない。
「なら――」
風が強まる。
「ルールごと壊す」
空気が変わった。
神理に満ちていた戦場へ、“異物”が混ざる。
秩序ではない。
法でもない。
世界に従うことを拒絶する意思。
「――無道」
その言葉と同時に。
光が、割れた。
押し潰すはずだった絶対の圧力が、
一点で弾かれる。
亀裂。
わずかだったはずの歪みが、
瞬く間に神理全体へ広がっていく。
神聖の秩序が、初めて“理解できないもの”に触れた瞬間だった。




