蹂躙のシオン
「あがああぁぁぁぁっ――!!?」
殺意のような衝撃が走った。
鮮血が夜気に散り、防衛隊員のひとりが硬い壁へ叩きつけられる。
その身体が崩れ落ちるより早く、神聖国の兵影は次の標的へ踏み込んでいた。
「下がるな! 陣形を維持しろ――ッ!」
防衛隊員の怒声が響く。
だが、その声すら白光に呑み込まれた。
轟音。
鼓膜を震わせる神聖の衝撃波。
大地を裂くように白い焔が奔り、複数の隊員が一瞬で吹き飛ばされる。
防壁が崩れる。
車両が宙を舞う。
地区そのものが、圧倒的な力によって握り潰されていく。
抵抗――その概念すら許されない。
敵は速い。
強い。
そして、絶対的だった。
ただ前へ進む。
ただ踏み砕く。
まるで“神の律法”そのものが、人の形を取って侵攻しているかのように。
「た、退避を――!」
逃げ遅れた者が衝撃に呑まれ、
祈る者の頭上には、白き裁きの光が降り注ぐ。
誰も届かない。
誰も止められない。
これが――神聖国の“支配”。
打ち込まれる神聖の理。
それは侵略ではない。
宣告だ。
――ここは、もはや日本ではない。
十京シオン。
東京は書き換えられた。
地図としてではなく、
世界における“意味”そのものを。
空を貫く白き巨塔。
街を覆う祈りの光。
そこにあるのは都市ではない。
神聖国が築き上げた、新たなる支配領域。
この地に生きる者すべては、
その礎へと組み込まれていく。
意志も、歴史も、誇りさえも呑み込みながら――。




