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シオン侵攻信仰
「出撃準備、完了しました」
低く抑えた報告が、静寂を切り裂く。
神聖の軍が、整然と列を成す。
白銀の法装が光を受け、ひとつの意志として立ち上がった。
神聖国の少女は、祈りの刻印を宿す装束を纏い、前へ出る。
その背後に並ぶ女たち――
彼女らの視線は、ただ一人へと注がれていた。
眼下に広がるのは、炎。
防衛隊が築き上げてきた陣は、いまや火に呑まれ、崩れ去ろうとしている。
焼き払い、踏み越え、なお立ち続ける存在。
それは騎士の威厳を備えながら、暴君の如き苛烈さを帯びていた。
己に不可能など存在しないと告げる、絶対者の気配。
――強い。
圧倒的に。
守るべきものを背に、彼らは確かに抗っていた。
傷を負い、力尽きかけながらも、己を律し、戦線を繋いできた。
だが、その意志ごと――押し潰された。
人の意志は、神の前に脆い。
それを証明するかのように、神聖の上位存在は結果で語る。
その力、その行い、その帰結すべてが、
抗うことの無意味さを、静かに突きつけていた。
これは征服ではない。
支配の宣告。
――この地が、すでに彼らの手中にあることを示すための。




