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奴隷エルフを救う風
「っ……!」
美しきエルフの娘が、息を呑んだ。
それは恐怖ではない。絶望でもない。
これまで感じたことのないもの。透明な感覚。
それは、風だった。
血と悲嘆に染まった地獄のような戦地。
そこには決して存在しないはずのもの。
だが今、確かに吹いている。
清らかな水を含んだかのような風が、傷ついた彼女たちを、そっと包み込む。
透き通るような清涼。
それが、静かに全身を満たしていく。
彼女の身体には、戦いと支配の痕跡が刻まれていた。
痛みと苦しみの記憶が、確かにそこに残っている。
だが――
「……あ……」
(痛く……ない……)
胸の奥に広がっていた鈍い痛み。
身体を縛りつけていた不快な感覚。
それらが、ゆっくりとほどけていく。
まるで、何かに浄められるように。
彼女だけではない。
周囲のエルフたちも、同じように顔を上げていた。
「……なに……これ……」
誰かが、かすれた声で呟く。
絶望しかなかった場所に、初めて“別の感覚”が入り込む。
確かな――変化だった。
地獄と化した戦地に、
静かに吹き込む一筋の風。
それは、これから訪れる何かを告げるように――
蒼風がその場に満ちていた。




