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後遺症 5

お待たせしております。


 バーニィの魔力が心配だというが、彼はそもそも貴族であるしグレンデルとの戦いでバーニィは剣に魔力を纏わせていたからある程度の魔力を持っているのは知っていたが、彼はクロイス卿のような魔法剣士はない。

 行きで魔力の残量が厳しいなら帰りは苦味を抑え甘さを利かせた特製マナポーションの出番かもしれない。

 蜂蜜入りの特製マナポーションは金貨一枚と銀貨10枚という高額だが、作ったそばから売れていくという。義務感で無理矢理流し込んでいる”人生の苦味”とまで言われたマナポーションが、甘くて美味しいというだけで魔法職から絶大な支持を得ている。効果も今までのものから蜂蜜の分回復量が上がっており、値段以上の価値があると思われているようだ。



「測った事はないんだが、多分大丈夫だと思う。魔力切れになった事ってないし……」


 いずれ、ちゃんとした許可を得てバーニィを<鑑定>させてもらうものいいかもしれない。自分でやるとわかるのだが、能力の数値化は動機付けの面でも大いに利点がある。ソフィア達も魔力鍛錬の後、ジュリアに<鑑定>を受けている。

 そしてこの鍛錬で自分の魔力が実際に上がっているのを確認できると、次の鍛錬の刺激に繋がっているという。上手い具合にやる気を維持できているようなのだ。

 <鑑定>も使い方しだいで物事を上手く回せるという好例だな。


「その時はマナポーションやるよ。さて、輪っかに入ってくれ」


 そのまま待つが、魔導具が起動する気配がない。


「うーん。動かないんだけど」


「おかしいな、俺の時は普通に動くぞ。俺だけしか使えないわけでもないし。だが、しかたない。男二人でやりたくなかったが、背中合わせでいいか」


 狭い転移環の中で向かい合うのは女性だけにしたいので、背中合わせになって起動する。バーニィは魔導具を扱った経験に乏しく、魔力を流し込む起動方法を良く解っていなかったようだ。



「ここは……あ、あなたは!?」


「はじめまして。私はそこの男の従者を勤めているレイアという女だ。君の事は聞いている。我が君の友だとな、これからも主をよろしく頼むぞ」


 レイアとバーニィが挨拶をし合っているが、レイアはあの銀髪魔族と共に居たからバーニィが悪魔たちを一人でいなしている光景を見ているはずだ。

 二人共に目の前の人物が只者ではない事を理解しているようで、微妙に距離をとっている。


「こんな態度のでかい従者がいるかよ。彼女は仲間だ。レイア、転移環はしばらくこのままにしておく、戻ってくれていい」


「承知した、我が君よ」


 去ってゆくレイアに<念話>で礼を言い、ホテルの硝子窓から見える範囲でウィスカの町を案内する。ホテルがスイートなので部屋が最上階にあるのは、街を見渡せて助かった。


「あそこに見えるのがウィスカの冒険者ギルドで、端にある小さい広場みたいに見えるのがダンジョン入り口な」


「凄い、本当にウィスカなんだね! 一瞬で東にある町まで移動できるなんて凄い魔導具だよ、これは!」


 王都から出たのが始めてらしいバーニィはかなり興奮しているようだ。申し訳ないが、これはあくまで証明のための移動だからすぐに戻らねばならない。何度でも使えるようだから、これからいくらでも来れるのだ。何時かダンジョンも一緒に攻略しようぜ。現状、走り回るだけの探索もお前となら楽しそうだ。


「悪いが一旦戻るぞ。クロイス卿が帰ってきてたり、屋敷のメイドがあの転移環に触っていたりすれば大変だからな」


 転移環が非常に敏感な魔導具であるとは伝えてある。ウィスカの野外を断念したのは転移環を置ける平地が確実に確保できるか解らなかったからだ。今だって、もしメイドが不用意に触って床とわずかでも接地面がずれていたら作動しなくなるのだ。その際は相棒やソフィアの手を借りねばならないだろう。


「わかった。魔力は問題ない、というか減ってないようだよ?」


「本当か? 俺のほうから引かれているようになるのかな? まあ、また試すから解る話だけど」


 なんとか無事に戻るとやはりバーニィの魔力は減っていないようだ。俺もすぐに回復したが、魔力の減少は確認したので俺の魔力を使用して転移を実行したのは間違いない。

 魔力の乏しい者にも俺と共に跳ぶことによって移動が可能になったのは朗報だが、原因は良く解らない。初めて使ったのが俺だから、あの転移門の認証のように使用者登録がある可能性もあるが……これからの研究課題としておくか。今は問題なく使えるならそれでいい。


「解って貰えたと思うが、こいつはとんでもない魔導具だと思う。俺が王都に来る事も、バーニィがウィスカに来る事だって通話石で俺を呼べばすぐ済む話だ。となると、こいつをどこに置くかが問題になるよな。相談っていうのはそれなんだが、どこか都合のいい場所知らないか?」


 俺の理想としてはバーニィの実家があの『亡者』を保管していたような家が望ましい。適度に秘密が守られ、それを管理する人がいる。

 そこまでいかなくても地味なアパートメントの一室でも借りられれば十分なのだが、俺に王都でそんな伝手はない。伝手がありそうな女も知っているが、ここはなんとか気安い男同士で解決したい。

 

 別に嫌というわけではないが、あいつに教えると毎週遊び感覚でウィスカに来そうなんだよな。主にレイアに会いに来るために。

 限られた人数でひっそりとやりたいのでクロイス卿もできれば遠慮願いたい所だ。彼個人に含む所は一切ないが、公爵家の人間であるあの人は政治的にこの転移環を無視しにくいだろう。彼自身に秘密は守れても、遠くない未来に絶対にどこからか聞きつけた奴が現れ、国の管理にすべきという奴が現れるに決まっている。

 その時は目の前で壊して見せてもうありませんとやるしかないかな。毎日あのキリング・ドール倒していれば少しは在庫も出来ていると思いたい。


「秘密の場所か。正直、我が家の一室を貸せば良い話ではないのかい? ウチは家の大きさの割りに人が少ないから部屋は沢山余っているよ」


「始めはそう考えたんだけどな。貴族の家に時間関係なく出入りする若い男なんて絶対噂になるだろう? そっちも働くメイドにいちいち俺のことと転移環の説明する必要もあるかもしれないし」


 自分の失敗で転移環がなくなるのは仕方ないが、他人のせいだとさすがに怒ると思う。一応一つ金貨500枚の超貴重品だし。だとすれば完全に自分で管理した方がまだマシだ。


「確かにそうだね。兄に不動産関係で都合のよい物件がないか聞いてみるよ、それまではウチの空いている部屋を使えば良いさ」


「ありがとう、助かるよ。ダンジョンの方でも進展があってさ、話は尽きないんだ」


「ちょっと待て! 俺を置いて話を進めるなって言っただろうが!」


 そこにクロイス卿が駆け込んできた。本人は騒いで隠しているようだが、眉間に皺が寄っている。先程までなかったものだ。ソフィアといい何か別件の厄介事でも発生したのかもしれない。


「何かありましたか?」


「あ? ああ、まあそうだな。少し待っていろよ、直に解る話さ。それより、お前の冒険の話を聞かせろよ。特に16層以降の件だ。ウィスカの難易度で環境層なんて滅茶苦茶な事になってるんだろう?」



 その後はクロイス卿と共に話が盛り上がってしまい、リリィが戻ってくる夕暮れまで話しこんでしまった。

 そのせいでウィスカの冒険者ギルドに20層突破の報告を入れるのをすっかり忘れてしまっていた。



 残りの借金額  金貨 14992201枚


 ユウキ ゲンイチロウ  LV253 


 デミ・ヒューマン  男  年齢 75


 職業 <村人LV301〉


  HP  3465/3465


  MP  3025/3025


  STR 671

  AGI 669

  MGI 685

  DEF 601

  DEX 598

  LUK 391


  STM(隠しパラ)810


  SKILL POINT  1030/1040    累計敵討伐数 11044

楽しんで頂ければ幸いです。


今回の話はパラメーターの変動はありません。ない場合は付けなくてもと思うときもありますが、返済額の項が変わる事もあるので一応つけてます。

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