035⚫️航跡なき入港 & 036⚫️質か?量か?
034⚫️航跡なき入港
エンジェラム王国から、インフィニティへの船団が入港する。
海は凪いでいた。波ひとつ立たず、空も静かに晴れている。
だが、港には、一隻の船影も見えない。
水面には、航跡すら残っていない。
それなのに、入港は完了したという。
迎えに来たブラッドは、目を細めて海を見つめる。
「・・・何が、どこに来たというのだ?」
風もなく、音もなく、ただ静かに、何かが、確かに到着しているのだった。
035⚫️質か?量か?
「いやあ、ユニコーン、健脚だな。」
「そうか?お前たちだって、同じ速度で歩いてるじゃないか。」
「俺たちは訓練してるからな。あんたの体力は相当なもんだぞ。」
マンジ、ヤハチ、そしてユニコーンことハバタキは、
会話を交わしながら部族国家のひとつ、コルに到着した。
「よくぞお越しくださいました!ユニコーン様、そしてお連れ様も、どうぞごゆっくりお過ごしください!」
コルの統治者は歓迎の言葉を述べながらも、どこか浮かない顔をしていた。
ヤハチがその様子に気づき、声をかける。
「どうかされましたか?」
「・・・実は、わが将軍の一人が困ったことに・・・。」
コルには、行動が先で思考が後、’走ってから考える’と評判の
「慌てん坊将軍」シン・サンと、美食家として知られる
「食いしん坊将軍」レオナルド・カイの二人の将軍がいる。
そのうちのレオナルドが、
近頃、腕力にまかせて近隣から勝手に食糧を奪い、
新メニューの研究に没頭しているという。
年上のシン・サンが何度も諫めているが効果はなく、
両者が衝突するのではないかと噂が飛び交い、
領内の民衆は内戦の危機すら感じる事態となっていた。
「なるほど。じゃあ、レオナルドを殺してしまえばいいんだな。」
「おいおい、ユニコーン、それはちょっと物騒だぜ。」
「要は食糧の略奪を止めればいいんだろ?食いしん坊なんだから、方法は他にもあるさ。」
「よくぞ、あのレオナルドを説得してくださいましたな!さすが、ユニコーン様、ありがとうございます!」
いや、オレ、何もしてないんだよな・・・。
マンジとヤハチが「公国仕込み」の料理をレオナルドの家で振る舞っただけだ。
レオナルドはその味に感激し、
「月刊レシピの天国」を定期的に届けてもらう代わりに、
勝手な食糧調達はしないと誓った。
もし誓いを破れば、
ブラックリスト入りで一生レシピは届かない・・・という条件付きで。
レオナルドは食いしん坊だが、量より質を求めるタイプだった。
オレたち闘血鬼は、質より量だが。
やれやれ、まあ、肉も大量に食えたし、よしとするか。
だが、マンジとヤハチ、本当に変なやつらだな。
レオナルドなんて、戦闘力もたいしたことない。
力ずくで言うことを聞かせればいいのに。
この国のやり方、どうにも理解しがたい・・・。
マンジ、ヤハチ、そしてユニコーンことハバタキの珍道中は、まだまだ続く。




