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異世界召喚で杖になった俺は、魔女の弟子と共に魔女の仇を取る  作者: 月ノ裏常夜


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31.処刑

「おい、約束が…」

自らの命運を悟ったのか、弱弱しかった帝国兵の声が、さらに小さくなる。

「別に何も約束をした覚えは無いわよ」

状況から言って、話せば助かると期待していたのかもしれないが、

今回は喋ったら助けるといった条件は何も出していない。


「く、くそ…」

帝国兵は悪態をつくが、体のほとんどが埋まっている以上、逃げる事もできない。

「それと、この子水の魔法が得意らしいわよ。良かったわね」

レイラも分かった上で嫌味を言っているのだと思うが、アレを飲み水にするのは無理だろう。


「ふざけるな」

抗議の声は今にも消え入りそうだった。

「じゃ、よろしく」

それを無視してレイラはリリアナに主導権を渡す。


「よろしくって…」

「トドメ、させるでしょ?」

リリアナが北の魔女と連絡を取らないというならば、それぐらいはやってもらわないと彼女を信用することはできない。

帝国兵を殺せるというのであればリリアナは信用できる。その判断は間違っていないだろう。


「やればいいんでしょ」

リリアナが杖を構える。

「ところで、人を殺したことは?」

「無いわよ」

リリアナは、これま帝国兵と直接戦う事はしなかったのだろう。

「どうしたの? 早く」

やはり人を殺す事には若干の抵抗があるのか、リリアナはすぐには魔法を使おうとしなかった。それを急かすようにレイラが声をかける。


「殺してどうするの?」

「どうもしないわよ」

「なら殺す必要は無いでしょう」

急にリリアナが渋りだした。

「ならあんたは帝国の手先って事でいいのかしら?」


「それは違うでしょ」

「いい? 私の師匠はそいつらに殺されたし、何人もの魔女の弟子がそいつらに捕まってるのよ」

「だからって…」

リリアナは帝国兵を攻撃するのを渋っているだけで、レイラを直接攻撃しようとはしない。

「そんなに人を殺すのが怖い?」


「そうよ。悪い?」

やはり人を殺す事に抵抗があるようだ。

「あなたもしかして、帝国兵と戦った事が無いの?」

「ええそうよ。良く分かったわね」

まあ、戦えるのならば、あんな場所で逃がし屋などやっていないだろう。

「私はあるわよ。殺した事だってある」

レイラは堂々と言い返した。


「それこそ、証明できるの?」

リリアナはそう反論するが、それを証明するのは簡単だ。

「ここに埋まってるのはそいつ一人じゃないわよ」

「それって…」

その言葉の意図を察したのか、リリアナの言葉のトーンが下がる。

「そいつは顔が出てるから生きてるけど、それ以外はもう死んでるでしょうね」

ここを掘り返せば、死体が出てくるだろう。

今やってしまえば、目の前にいるまだ生きている帝国兵が逃げる危険性があるためやる事は無いだろうがその気になればすぐに証明できる。


「じゃあ、あなたは…」

「私はもう手を汚してるのよ」

実際にレイラは帝国兵を殺している。それは紛れもない事実だ。


「そう…」

これ以上反論できないのかリリアナはただ相槌を打つだけだった。

「あなたはできないの?」

「出来ないことは無いけど…」

リリアナの言葉は歯切れが悪い。

理屈では帝国兵を殺さないと分かってはいるが、それでも人を殺すことに対する抵抗感がぬぐい切れないようだ。

「それとも帝国兵を殺せない理由でもあるのかしら?」


「それは…」

帝国兵を殺す事をためらっては、帝国側とのつながりを疑われる。それはリリアナも分かってはいるだろう。

「早くしてよ」

「分かったわよ。やればいいんでしょ」

リリアナがようやく詠唱を始めた。

杖をかざすと、その先端に水球が生成されて生き、徐々に大きくなっていく。

海岸で見たのと同じ魔法だ。

やはり水魔法で仕留める様だ。


「異端者め…」

それを見た異国兵が恨み言を吐き始める。

「異端?」

何か情報がに入るのかと期待しているのか、レイラが聞き返す。


「おまえらなぞ人間ではない」

「だったら何よ?」

「魔法を使う化け物だ」

「随分と口が悪いわね」


「お前らを殺すなんて簡単だ」

もう助かる事は諦めたのか、帝国兵の口からは次々と悪態が溢れてくる。

「その様でよく言うわね」

一方のレイラは、半分生き埋めになっている状態の帝国兵に言われても、まったく怖くないのだろう。


「生け捕りにしろという命令さえなければ」

そういえばこいつは俺たちを生け捕りにすることにこだわっていた。

俺たちと遭遇した時に有無を言わさずに発砲していたらこのような事にはなっていないだろう。

「あら、負け惜しみ? 今更何を言おうと、あなたが首から下が埋められて動けない事実は変わらないわよ」

レイラがさらに煽るような事を言う。

レイラとしても、師匠を殺されたという恨みを、帝国に対して持っている。悪態をつかれては多少は言い返したくなるのだろう。


「すぐに思い知ることになるさ」

「何をよ」

「帝国の力をだ」

「あら、何かするつもりなの?」


「もう準備はできている」

帝国兵が意外な事を言い始めた。

「何の?」

「お前らを殺す準備だ」

それは、追い詰められた者の、最後の強がりだろうか。

「まさか、霧だけで私たちを殺すつもり? 昨日私に攻略されたのに」

昨日この帝国兵は霧を使ったがレイラには負けた。

霧を持っているだけでここまでの態度がとれるだろうか。


「あれだけじゃない」

どうやら霧以外の切り札があるようだ。

「他に何かあるって言うの?」

レイラもそれに危機感を持ったのか、具体的な情報を引き出そうとする。

「本国から―」

帝国兵が言葉を言い終わる前に、銃声が鳴り響いた。

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