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「あの…長様?」


恐る恐るという感じに、坊っちゃまの半歩後ろ隣に佇んでいた、マリア様が、小さな声をあげました。


その声に、ゆっくり長は、目線をマリア様になげかけました。


その目線を受け取ったマリア様は、緊張した様子で、言葉を続けます。

「はっはじめまして…。レッレオン様の婚約者のお役目をさせていただいております。マリアと申します。お話しさせて頂いてもよろしいですか?」


マリア様…。

坊っちゃまとの関係の紹介が、お役目とか、言ってしまってますよ…。

まあ、長は、気にしてないようですが…。


坊っちゃまは、肩がピクッとしましたね。気にしてますよ…。



「ふむ。」


マリア様からの発言に、静かに、長より発言の許可がでました。


「今回お願いに、あがりましたのは、私が、この子を連れ帰ったからなのです。」


マリア様は、一度ご自分ののスカートに隠れている、竜の落とし子へと視線をおとし、頭をひと撫でして、また長の方へと、向き直り話を続けました。


「ダリアの話では、この子は、人間と竜との間に産まれた子という事です。

見つけた時には、既に親が死んでしまっていたので、この歳で1人では、生きて行けないとも言われました。

私が、育てようと思いましたが、皆様から私より、こちらの方々の方が適任だど、伺いいたしまして…。

この子の面倒を見ていただくお願いしに参りました。


勝手なお願いとは、存じておりますが、どうか、お願いできませんでしょうか?」


マリア様は、深々と頭を下げられました。


「ほう?竜と人間との間にのぉ…」


長の目が細められ、ゆっくりとマリア様のスカートに隠れて立つ、竜の落とし子に向けられました。


「で、この子も影に育てるのかい?」


「いえ、できれば、やりたい事をやらせてあげたいので、強制はしたくありません。」


「甘いの…。

人間は、我等のような、異形を人とは、認めん。

ましてや、対等になど、扱いはせん。


その子は、ここで影になるか…。

お嬢ちゃんのペットとして、飼われるか…。

はたまた他の者に飼われるか…。

野に放ち、自由という名の孤独の中で生き抜くしか、道は無い。それが、異形の運命じゃ。


だから、唯一、我々を人として対等に扱ってくださる代々の公爵家の方々をわしらは、大事にするのじゃ。そしてわしらは、公爵家に仕える事で、仕事を得ているのだ。それはわかるかな?


だが、わしらは、所詮、野獣なのかもしれんな…。

強い者に従う習性があってな…。」


長はそう言いながら、目線をレオンハルト様にうつしたのです。


「まず、そちらのお願いの前に、次期当主殿の、力量を試させて頂きたい。」


「試す…とは?」


不敬極まりない、率直な言葉に、私の身体は、無駄に力が入り堅くなります。


坊っちゃまは、一応反応を返していますが…。

いけませんね…。

あの雰囲気…。坊っちゃまは、もう、どうでもよくなってきています。

じゃあ、いい。と言って、回れ右して帰る5秒前といったところでしょうか…。


今回は、挨拶と、落とし子の養育のお願いだけの予定でしたからね…。


ハラハラしながら、坊っちゃまの行動を伺います。


長は、坊っちゃまの態度は気にしないとばかりに、話を続けます。


「里の奥の崖に…。」


そう言うと、ぶわぁっと風が過ぎ、忽然と長の姿がなくなっていた。

あたふたしながら、周りを見渡す私の方へ、坊っちゃまは、鋭い視線を向けています。(剥製の豚越しですが…)


ですが、その視線は、どうやら私にではなく、私の後ろにあるよで…どういう事かと、振り返って…。


私は愕然としました。


先程まで足腰が弱く、支えがなければ歩けなかった老人が、異形の形となり、右手にマリア様を抱えていたのです。


マリア様は、何が起こったかわからないように、

「え?」

と、小さく呟き、目を見開いていました。


「ふふふ、能力を解放すれば、これしき何ともないわ…。さて、この娘を崖の奥の洞穴に連れて行く。

公爵家の坊ちゃんよ。取り返しにくるといい。ただし、洞穴に入れるのは、おぬしのみ。

中では、無差別に襲われる。心して来い。」


そう言い残し後ろを向いた長に、声をかけたのは…


「長!!お待ちください!マリア様は、あまり体が強くありません。それに私の大事な友達です。私も共をお許し下さい!」


「黙れダリア。それはならぬ。ひかえておれ!」


「ですが!あの洞穴は、マリア様には、余りにも危険!お…」


「だまれと申したぞ…。」


急にダリアが、怯えたように黙り込む。長からは先程から寒気がする様な恐怖が押し寄せてきている…。

これはいったい…?

足や手が、勝手に震えだしている…。


「流石…長殿。威圧だけで、この場合を制するとは…。

わかりました。洞穴にいきましょう。ただし、もし、万が一にもマリアに、傷一つでも付けたなら…。屋敷の影達の里だとしても、この里自体叩き潰しますから、覚悟して連れて行くんだな!」


これは、珍しい…。あの影たちだけが、友達の坊っちゃまが、影たちの大切なふる里を壊すと、脅すほど激怒してますね。


そして…威圧とやらを返してますね?


私…冷や汗と悪寒が、さらに増してますよ…。

私は…長と坊っちゃまの真ん中これは、すごく間の悪いポジションだったのではないですか?


坊っちゃま…そろそろ私の存在に気が付いて下さい。息も上手く吸えません…。


「ふん。若造が…一丁前に、威圧してくるわい。

若い、若い。周りがみえておらんの…。ほれ、そこの老いぼれが死ぬぞ…」


長がどうやら、私に気を回して下さったようです。


坊っちゃまは、私の蒼白の顔と、尋常ではない冷や汗と硬直して動かないのに、小刻みに震える私の体の異変に気が付いたようです。

私に一瞬目線をとめ、ハッとしたように気を緩めました。威圧を解いたのでしょう。


それと同時に、私は、床に崩れ落ち、肩でハアハアと息を肺に吸い込みます。


その間に、お長とマリア様の姿は消えていました。


「ぼっ…ちゃ

…ま……すみ…ませ…」


私は、そのまま意識を失ってしまった…。

そのまま床に叩きつけられるはずの体は、どうやら、坊っちゃまが、支えて下さったようだ。

倒れながら、坊っちゃまが、能力を使い駆ける時におこる風が、頬に触れたのを感じながら、不甲斐ない私は意識を手放してしまったのです…。

なかなか更新できなくてすみません。気長にお待ちいただいてありがとうございます。

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