第17話 幻の海
あらまに間違えて投稿した上に
六時間くらい放置してしまい、
読者の皆様に大変ご迷惑おかけしました。
これからはしっかり確認を念入りに行います。
お知らせてしてくださった皆様、本当にありがとうございます。
「はあ……」
暗くなった砂浜にゆっくり座り込む。
あれから一週間。未だにギルドへの道が開かず、ケルーさんの家などにも行けない。
逢魔が刻も早い時間にやってくるので、塩を作っても日照時間が浅く、塩がなかなか乾かないのでとても効率が悪いし、乾かす場所も限られてるので量産もできない。
そんなに暇ならば、外に出ればいいんじゃないか?と思われるが、下手したら外が今や戦乱かもしれないので、戦ったこともない一般人な私は、マヒナちゃんと安全な海岸に引っ込んでいるのだ。
この海岸は、安全そのものだろう。
だって、まさかの、幻の海なのだから。
人間からの視点から見ると、「選ばれしものしか来れない所」。
マヒナちゃんのような海の人たちからすると、「幻の海様が統治している海域」らしい。
人間には知られてはいないのだが、海には各々海の神様?のような人がいるらしい。その神様は「美しい海様」「荒潮の海様」とか、それこそ「幻の海様」というような名前で呼ばれてるらしい。
……統治した国に自分のデビュー名前着けてるようなことかな?
ああ、話し反れた。
そのなかでも、幻の海というのはどこにあるのかどうすれば行けるのかわからない場所らしい。
何故なら、海の人たちにおいて「幻の海」にいくという発想ができない。その発想ができる人は、「幻の海様」に許可をいただけた証なんだという。
そして、例え一度行けても、移住できるわけでもなく、許可が消えたら二度とそこに戻ることができないらしい。
なんというか、「幻の海様」スゴいなあとしか感想が出てこない……。
とりあえず、この空間が異常なもので、他者からの侵入を受けないらしい。
魔王様が物資送り込んで来ても、自身が来なかったのは、もしかしたら試したけど来れなくて、けどそんなことプライドとかあって言えなかったのかなあなんて。
「とりあえず、生温い環境というわけだ」
真っ暗になった海岸でゆっくりとフルーツを食べている。
先程までマヒナちゃんからの世界についての講座を受けていた。暇すぎてやることがなかったので、魔導書を読んでいたら、「内容が古い!!」と言われたことが発端し、今では魔導書を教科書代わり?に、マヒナちゃんから教わっている。
どうやらマヒナちゃんの趣味は、勉強と鑑定スキルと真偽スキル上げだったらしい。
結構スパルタなため、終わった後の疲れも半端ではなく、休憩するために海岸で横になっているのだ。
教科書代わりとは言ったが、最初に拾った魔導書には、訂正やら書き足しやらで文字が埋め尽くされている。
そして、その度にこの海岸の生温い環境に有り難みを抱いた。
普通ならもう死んでただろうなあと、本気で思ってしまうくらいには、この世界は厳しいものだった。
今だって、もしかしたら、血で血を洗うような戦が、幻の海を遮る森の向こうで行われてるかもしれないのだ。
また、たまたまこの魔導書の話になったときに、マヒナちゃんから「持ち出したのが、ただの魔導書で良かった!」と純粋に喜ばれた。どうやら、やはりあの財宝は曰く付きの可能性が高いみたいだ。
近々、塩でも使って除霊してみようかな。
実は本当に暇だったので、塩とたまたま降った雨の水を調合したら、聖水が出来たのだ。といっても、呪術解除と除霊くらいしか力がないとマヒナちゃんに言われ、魔法でもできることだから売らない方向になった。
まあ、聖水よりも塩のがお金になるなら、これは自分達の護身用にしとく位にしとこう。
砂浜に寝転がると、満天の星。星が多数光っているということは、そこまで大きい戦乱というわけではないと、マヒナちゃんに教えてもらった。
教えて貰いながら占星術というものが本当に実在してるとはと、驚いた。まあ、どっちかというと天然の新聞みたいなものらしく、占星術のスキルを上げれば、どこで何が起きてるのかまで読み取ることができるらしい。
マヒナちゃんは、海の中でなければ上げてみたかったらしく、ここ最近はこの休憩の時間を使って、せっせと経験積み上げ始めた。
私もついでとばかしやってはいるが、如何せん知識が足りないのでマヒナちゃんのようにぐんぐん上がるわけではない。
マヒナちゃんに説明を受けながら、ゆっくりと読み解いている。
あと、最近は家事スキル?が上がり、この前買った布達を使ってお洋服を作り始めたくらいだ。でも、マヒナちゃんはそういった家事が苦手らしく、その中でも料理が特に出来ず、かなり落ち込んでいた。
勿論、罠や武器のような身を守れるようなものを作れるスキル?があるらしいが、流石にそれは環境と知識、材料、それに見本となる師匠がいないと難しいらしい。確かに、実際に自分で作るわけだから、一度その行程を見なければ難しいだろう。
けど、薬剤スキルというものが私には付いたらしく、簡単な治療薬なら作れるようになった。
魔導書に載っていた傷薬くらいなら、もう何も見ずに作ることが出来る。まあ、薬草を見つけて、石などで磨り潰し、患部にペタリという簡単な作業なわけだけども。
それでも、少しずつ混ぜたり、茹でたり、搾ったり、少しずつだが出来るようになってきている。
で、肝心の炎やら水やらの攻撃魔法は、二人して、てんでダメだった。
まず、純粋な攻撃魔法は本当に初級以外は、詠唱しなければできないそうだ。
その詠唱が自分のなかでイメージを呼び起こし、そこで術が飛び出す。
勿論、イメージが確り出来なければ、飛び出さない。そして、詠唱がなければ、イメージを磐石としては弱くなってしまう。
白くて四角いものという曖昧な概念に、「豆腐」と連想するか「石鹸」を連想するか「ハンペン」を連想するかわからないけど、「木綿豆腐」と伝えればそれがどの様なものかすぐに伝わるようなものらしい。
わかりにくい?
要するに名前を知らない人を伝えるときにに、「女の人」「髪が短い」「顔は普通」じゃ、うまく伝わらないし、自分自身も確り連想出来てないけど、「狭山湯江」という名前を知ったらある程度それは「狭山湯江」で、知れば知るほどその子は「狭山湯江」だとわかる。
攻撃魔法もまた、炎が大きな壁になって敵を襲う魔法といっても、本当にそれだけの効力の魔法なのか、形はどうなのか、壁といってもどういう壁なのかわからない、けれど「這い上がれ、炎の壁よ」と言えば、自分の手を翳した方向に大きな長方形の赤黒く燃え上がり壁のようになった炎が出てくる。
そして、「這い上がれ、貪れ、炎の壁よ」と言えば、守るだけではなく相手の魔法を吸収して己の力の一部になる効力もつくのだ。
詠唱か内容か、どちらか知っていればいいものではなく、どちらも知ってなければわからないのが攻撃魔法なのだ。
確かに、どちらか、特に「詠唱しかしらない」で魔法が発動したら怖いかもしれない。
何が起きるかわからない、ということほど、怖いことはない。
「だから、古代など誰も知らない魔法を読み解くために魔法研究者がおり、新しい魔法を見つけ出すために魔法開発者がいるんです!そして、正しい魔法の使い方を教えるために学校があるんです!!わかりましたか!」
マヒナちゃんが真剣にそう説いてきたことを、ふと思い出した。思えば、学校のことを話す彼女はキラキラとしていた。
……もし、機会があったら、ケルーさんたちに学校のことを聞いてみよう。
もしかしたら、マヒナちゃんを通わせることができるかもしれない。
私はいい、学校行くほど魔法というものに興味がない。売れるうちに沢山塩を売りながら、この先の身の振り方を考えなければならない。
この海にいつまで居れるかわからない。
最近、なんとなく誰が私をここに連れてきたのかわかってきた。
多分、幻の海様という神様なのであろう。
でなければ、ここまで海の近くで生きていける訳がない。
私をどういう理由で連れてきたのかは知らないし、会ったこともないけど、会ったら絶対にたまに上り詰めて喉を掻きむしるような違和感の正体を明かしてもらおう。
絶対に、絶対に。




