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天上天下唯が独尊 ~あたしが世界最強になるまで~  作者: はの
カルボナーラ王国編

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第四十二話 神剣越え

 唯は、勇者パーティとの戦いで神剣ブラペの一撃を受けた。

 今回の戦いで、銀色の剣の一撃も、銀色の剣の爆発も受けた。

 結果、唯は殺傷力の順位付けを完了していた。

 

「銀色の剣、一本一本は神剣に及ばないわね。でも、爆発した時だけは、一瞬だけ神剣の力を越えている」

 

「ふん。傷つきながら、よくもそんなことを考える余裕があるものだな」

 

 手脚が一本ずつしか存在しない唯の体。

 ハーゲンの持つ神剣ブラペ。

 そして、洗脳された人々の持つ無数の神剣ブラペに匹敵する剣。

 

 絶望的な状況だからこそ、唯は笑った。

 命が消え去る直前にこそ、人間は火事場の馬鹿力を発揮し、限界を超えることを知っているから。

 それが肉体的なのか精神的なのかはわからない。

 

 とにかく今、唯に必要なのは時間だった。

 この窮地を抜けるための馬鹿力が目覚める時間が。

 

「いいの?」

 

「何がだ?」

 

「剣が爆発するたびに、あんたのとこの国民が巻き込まれて死んでるじゃない」

 

「ああ、そうだな。痛ましいことだ」

 

「それが、王族のやること?」

 

「もちろんだ。王家とは、王国の平和を維持するために存在する。平和を維持するために犠牲を出す選択をするのもまた、王族の務めだ」

 

 唯の意図に気づいているのかいないのか、ハーゲンは唯からの問いかけに応じた。

 

 それは、完全な奢り。

 自分が負けるはずのないというハーゲンの奢り。

 百パーセント勝てる勝負であれば、敗者の言葉に警戒する必要すらないという奢り。

 驕ることが、勝者を彩るスパイスとなるのだから。

 

「な、納得できません!」

 

 唯とハーゲンの会話に水を差したのは、エルだった。

 

「ん? 君は確か、勇者パーティの者だね?」

 

 ハーゲンは、ここにきてようやくエルの存在に気づき、エルを視界にとらえた。

 

「王国を守るためだからって、王都の民を犠牲にしていいんですか!? 国というのは、国民があってこそ成り立つものです! 貴方の言っていることは、王家として相応しくありません!」

 

 エルは、ただ叫んだ。

 己の正義を。

 

 が、エルの言葉は、ハーゲンの気に障った。

 王家に対して冒涜をする者は少なく、それ故にハーゲンには、自身の振る舞いに対する批判への耐性が少なかった。

 

「私が、王家の人間として、相応しく、ない? そう、言ったの、かい?…………ふざけるな! ふざけるなよ! よそ者の、それも王族ですらない女が! 偉そうに何を! 何も知らぬ下卑た女が! 私の言うことを否定するなど、恥を知れ!!」

 

 額に青筋を立てながら、ハーゲンは感情のままに叫んだ。

 もしもエルがただの一般人であったならば、ハーゲンは叫ぶだけでなく、即座に攻撃に移っていただろう。

 だが、エルが勇者パーティという事実一点で、その体を動かすことを止めた。

 

 ぎろりと睨みつけるハーゲンの視線を、エルは強い視線で睨み返す。

 

「決めました」

 

 そして、エルは唯の方を向き、両手を唯にかざした。

 

「非常に不本意ですが、貴女に手を貸します! 貴女も悪人ですが、目の前の悪人よりはマシです! この惨劇を、止めてください!」

 

 唯の失った腕と脚は、エルの回復魔法によって再生していく。

 傷跡は完全に消え失せて、唯の体が戦う前の綺麗な体へと戻った。

 

「反逆者の味方をした、か。つまり君は、今この瞬間、勇者からカルボナーラ王国に仇名す人間になったというわけだ」

 

「…………」

 

「ならば君も、粛清の対象だ。その女と共に消してやろう! やれ!」

 

 ハーゲンが命令を下すと、周囲から銀色の剣を持った人々が集まって来る。

 平民も、兵も、貴族も。

 先程と違うのは、攻撃対象にエルも追加されたというところだろう。

 

 エルは両手を組んで祈りの姿勢を作り、唯の方を見る。

 

 唯は、失っていた手を開いたり閉じたりしながら、体の感触を確かめていた。

 

「あたしの命令じゃなくて、自分の意志であたしの味方をする、かあ。最強が、借りを作っちゃったじゃない」

 

 ぼそりと呟いた後、唯はハーゲンに向けて駆け出した。

 向かってくる人々を跳ねのけ、ただ前へと進む。

 

「ふん。さっきと何も変わらぬ特攻か。ならば、結末は同じだぞ」

 

 ハーゲンの命令に、人々が動く。

 斬るために振り上げるのではなく、少しでも剣を唯に近づけるよう、腕を伸ばす。

 まるでトゲの生えた壁が迫ってくるように、平民や兵の肉壁が唯に近づいていく。

 

 対し、唯は上を見る。

 平民たちの上空は開いている。

 唯は左右を見る。

 唯から離れた場所にいる平民たちは、剣を持って振りかぶり、いつでも上空へと投げられる準備をしていた。

 

「どこへ跳んでも、逃げ場なしってことね」

 

「察してくれたか。そのまま素直に死んでくれ。平和な世界のために」

 

 唯か近づくとともに、肉壁たちの走る速さも増していく。

 一本の剣が唯に触れる瞬間、唯は肉壁を飛び越えるように、上へと跳んだ。

 

 瞬間、待ってましたと言わんばかりに、左右の平民たちが剣を投げる。

 剣を、唯に向かってまっすぐ前に伸ばしていた平民たちが、剣を上へと向けて跳躍中の唯を追う。

 

「察したところで、馬鹿は対処ができないらしい」

 

 無数の剣が、唯を囲む。

 ハーゲンが合図すると、剣が一気に爆発した。

 

「貴女!?」

 

 エルの叫び声も爆音によって届かず、唯の全身が爆炎と爆風に包まれた。

 

「ははははは! さらばだ女! 平和を乱す者よ!」

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