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天上天下唯が独尊 ~あたしが世界最強になるまで~  作者: はの
勇者パーティ編

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第三十二話 分散

「はあ?」

 

 勇者パーティが向かってきたという報告を受けた唯の目は輝き、直後の報告で失望に染まった。

 突然耳が悪くなったのかと、指を耳につっこんでぐりぐりと掃除する。

 

「ごめん。もう一回言ってくれる?」

 

「はい。勇者パーティが率いる軍は六つに分かれ、落とした町へ同時に向かっています」

 

「はああああ!? じゃあ、勇者パーティのメンバーは?」

 

「一人一つの軍を率いているようです。スミヤキ、フー、イカリ、エル、ジビエ、そして魔道師団長のストリーキーが、それぞれ一つの町を奪還するつもりなのでしょう」

 

「……ちなみに、この町に向かってきてるのは?」

 

「剣士、スミヤキです」

 

「はああああああああああ」

 

 全身の力が抜けた唯は、目の前の机に突っ伏した。

 

「唯様!?」

 

 エーザロの言葉にも、反応を示さない。

 

「これじゃあ、あたしが最強だって証明できないじゃない」

 

 五対一によって最強を示したかった唯にとって、現状は望ましくない方向だった。

 くしくもエーザロの提案した分断による勇者弱体化作戦が、勇者自身によって行われてしまった形だ。

 唯としては、回避したい未来。

 

 しかし、スミヤキがブッチーノ町に到着すれば、戦いは必然的に始まってしまう。

 そして唯に、逃げるという選択肢はない。

 別々の町へ向かう五人全員を、今からブッチーノ町に進路変更させる方法を少し考えてみたが、唯には思いつかなかった。

 

 どうあがいても、唯とスミヤキの一対一は回避できない。

 

「A級」

 

「はい」

 

「勇者パーティの剣士って、どれだけ強いの?」

 

「少なくとも、私よりは強いです」

 

「騎士団長よりは?」

 

「おそらく、強いかと」

 

「あっそ」

 

 唯は、下がったテンションを少しでも上げようと、スミヤキの実力を確認する。

 もしも、勇者パーティ最強であり、他の四人が束になっても勝てないという情報でもあれば、唯の中で妥協ができた。

 しかし、返って来たのは、騎士団長と比較しての『おそらく』。

 その時点で、唯の期待を超えることはできないと悟った。

 

「……町のやつら、全員下げといて」

 

「よろしいのですか?」

 

「仕方ないじゃない。せめて兵を率いず、あたし一人で勇者パーティの一人を退けたってシナリオでもないと、あたしが最強だって世に知らしめられないじゃない」

 

「……かしこまりました」

 

 エーザロは、訓練をさせられている町人たちに指示をするため、速やかに退室する。

 一人残った部屋の中で、唯はようやく机から頭を起こし、窓から空を見上げた。

 

「最悪」

 

 最強の魔王を倒した勇者パーティの存在は、唯にとって次の壁であり、同時に現最強という最後の壁でもあった。

 

 だが、五人が別々の場所にいるならば別。

 それは最強の壁ではなくなる。

 五人を分断させるという作戦を却下して作ろうとした状況とは程遠い。

 

「はあ。もういいわ」

 

 唯の脳から、勇者パーティへの興味が消えた。

 倒しても最強の称号を得られないだろう相手など、唯が興味を示してやる必要もない。

 考えるのは、勇者パーティのあとにそびえる、未だ見えていない壁。

 

「国王なんて倒しても意味ないわよね? 絶対武闘派じゃないし。じゃあ、誰を倒せば世界最強になれんのよ。勇者パーティに負けた魔王? はー……。魔王、復活してくれないかしら」

 

 ぶつぶつと文句を言いながら、唯はパンチェッタとの模擬戦へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 迫ってくるのは、大群。

 先頭には、勇者パーティの剣士スミヤキ。

 

「唯様、本当におひとりでよろしいのですか?」

 

「くどいわよ」

 

 ブッチーノ町で待ち構えるのは、唯とエーザロ。

 だが、エーザロには戦う予定がなく、実質唯一人で待っているも同義だ。

 

 唯とスミヤキの互いの顔が見える距離まで近づくと、スミヤキの率いる軍は動きを止めた。

 そして、スミヤキが前に出て、唯に向かって叫ぶ。

 

「お前が唯か?」

 

「そうよ」

 

「私は、元勇者パーティの剣士、スミヤキ! カルボナーラ王国国王の名のもとに、世界に仇名すお前を成敗しに来た!」

 

「あっそ」

 

 やる気なく答える唯を見た後、スミヤキはきょろきょろと辺りを見回す。

 そして、スミヤキが想定していた国民の壁が存在しないことを不思議がった。

 

「二人だけか?」

 

「あたし一人よ。A級は見学。どうしても戦いを見たいって言うから、連れて来ただけ」

 

 スミヤキは、さらに注意深く周囲を見渡す。

 風に舞う一枚の葉っぱの気配すら取りこぼさないように、周囲を警戒する。

 集団に対し、一人。

 とても信じられる行為ではない。

 

「心配しなくても、嘘なんてついてないわよ」

 

 唯の目には、やる気こそないが曇りはなかった。

 スミヤキは、唯の言葉が真実であると信じると、馬を降りた。

 そして、兵たちを制止した後、唯に向かって歩き始めた。

 

「……なんのつもり?」

 

「一人を相手に、軍をぶつけるなんてことはできない。そちらが一人で来るなら、こちらも一人だ」

 

「はああああああああ!?」

 

 スミヤキの提案に、唯は深いため息を落とす。

 唯から見れば、五分の一にまで低くなった壁が、さらに低くなったのだ。

 失望の余り、悔しさで目に涙が溜まっていく。

 

 そんな唯を見て、スミヤキはただ困惑した。

 戦闘狂であるというのは、ストリーキーから事前に聞いていた。

 が、想像以上に強者との戦闘を渇望している仕草に、哀れみさえ覚えた。

 どんな生き方をすればここまで戦闘に狂えるのか。

 

 だが、すぐに哀れみを捨てた。

 スミヤキと唯の違いは、自分の後ろに自分を支える使命があるかどうか。

 個人の快楽で立つ唯と、国を守るために立つスミヤキ。

 心の差は、明確に姿勢に現れた。

 

「では、行くぞ!」

 

 スミヤキは神剣ブラペを握り、駆け出した。

 日光が当たり、神剣ブラペが黄金色にギラリと輝いた次の瞬間、スミヤキの剣が唯の頭上に振り下ろされていた。

 

「なっ!?」

 

 スミヤキの一連の動作が全く見えなかったエーザロは、ただ驚いた。

 

「……騎士団長より強いのは、本当みたいね」

 

 対し、唯はスミヤキの一振りの軌跡を完全に捕らえていた。

 手で防げば切り落とされ、殴りつけても神剣が折れないことまで、正確に判断していた。

 故に、唯の選択は回避一択。

 

 後方に跳び、神剣が届かない位置にまで移動した。

 

 

 

 

 

 

 タンッ。

 軽快な音がする、一歩。

 

 

 

 

 

 

 そんな唯を背後から迎えたのは、突然現れた四人。

 フー、イカリ、エル、そしてジビエ。

 

「初めまして。死になさい」

 

 フーは魔法を発動しながら、無感情に言い放った。

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