↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪われた?旦那様、お約束通り半年が経ちましたので離縁させていただきます  作者: 涙乃


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/14

9.メリッサ様

扉が閉まり、施錠の音が響く。


「これで、ゆっくりお話ができるわね。怖がらないで、あなたに危害は加えないわ。」


メリッサは、おもむろにソファーに腰掛けると、エリーを手招きした。

エリーは恐縮しつつも、隣に腰掛ける。


「そんなに畏まらないで。私は降嫁した身。それに、今は……。よく分からない立場ね。あなたが、私の次の……クリフの再婚相手なの?」


メリッサは瞳を潤ませ、しばし逡巡していた。先程までの強気の姿勢とは違う。


メリッサ様は、もしかして旦那様のことを今でもお慕いしているのかもしれない。これまでのことを伝えても、信じてもらえるかしら。もしかしたら、傷つけてしまうかもしれない。それでも、これまで犠牲になった方達の無念を思うと、残酷だけれど伝えなければ……。


「メリッサ様の次と言いますか……、私は、正確には、68番目の再婚相手だと思います。ですが、行為をするのは100番目とおっしゃってましたので、100番目の花嫁かもしれません」


「──は?」


狐につままれたような表情のメリッサに、エリーは、かいつまんで説明を始めた。


自身の身に起こったことだけではなく、マクスから聞いた旦那様の非道な行いのことも含めて。


「な、な、な、なんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


メリッサは、奇声を発しながら、部屋中を飛び回り始めた。まるで幽霊のように透けて見える。家具に当たることなく身体がすり抜けていくので、本当に透けているのかもしれない。メリッサが飛び回る度に、風が吹き抜ける。不思議な光景に、エリーは目が釘付けになっていた。


「なんてことなの!ばかクリフ!クソクリフ!許せない許せない許せない女の敵!!!

どうしてそんな発想になるの!」


「メリッサさま、メリッサ様!どうか落ち着いてくださいませ」


エリーは、飛び回るメリッサを宥めようと、必死に声をかける。


メリッサは何周か飛び回ると、落ち着きを取り戻し、ソファーに戻ってきた。


「私としたことが、取り乱してしまって驚かせてしまったわね。」


まるで別人のようなメリッサに、エリーは戸惑いを隠せない。


メリッサ様は、かなりお怒りだわ。びっくりするような言葉が聞こえたけれど……。苛烈な方なのね。それに、やはり透けているわ。本当に幽霊なのかしら?


「あの……メリッサ様は、その、幽霊なのでしょうか?」


「あぁ、この姿だとそう見えるわよね。正確には、生き霊というのかしら」


「生き霊?では、メリッサ様は、生きておられるのですか??」


「ふふふ、あなた、幽霊かもしれないと思いながらも、普通に話しかけてくるのね。エリーと言ったわね。随分、落ち着いているわね」


メリッサは、エリーの手をぎゅっと掴む仕草をした。けれど、エリーは何の感触もしない。


「あなたは、私とは正反対ね。私は、いつもクリフに「うるさい」とか「お喋りだ」とか言われて邪険にされていたわ。

クリフは、落ち着いた女性が好みなのですって。そうだわ!いいことを思いついたわ!あなた……クリフのタイプだわ。

間違いない。きっと、エリーならクリフはいちころね」


メリッサは、いたづらを思いついた子供のような笑みを浮かべると、ウィンクする。


「は?旦那様からは、離縁届をいただいております。それに……」


エリーは離縁の書類のことや、この結婚に至った経緯、これからどうしたらよいのか分からないこと、途中からは、人生相談のような話をしていた。


「ほんっとに、どうしようもないクズね。大丈夫。全て私に任せてくれないかしら?

あなたは、半年、ここで暮らすだけでいいの。辛いでしょうけれど、クリフに普通に接してくれないかしら?

あぁ、心配しないで、何もする必要はないのよ。ただ、クリフの話し相手とでもいうのかしら。

決して、あなたの嫌がることはしないように見張っているから。クリフにも、きちんと伝えるから。お願いできないかしら?

ちょうど離縁の時期も半年なのでしょう」


エリーは、即答できず口を噤む。


「地獄に叩き落としてやるから!」


物騒な物言いのメリッサに、エリーは問いかける。


「メリッサ様は、旦那様に呪いを解く方法をお伝えしたのですよね?いったいどうしたら呪いは解けるのですか?」


「あぁ、それはね、こう伝えたの。クリフに、初めての感情を知ることができたら、自ずと解けると」


「初めての感情?」


「そう。クリフにね……振り向いてほしかったの。だから……」


ほんのりと頬をピンク色に染めるメリッサ。


メリッサ様は、旦那様に恋しているのだわ。想いが強すぎて、旦那様からは避けられてしまったのね。どんなに問題のある人だったとしても、好きになってしまったら何も見えなくなるもの。


「不思議に思うでしょうね。あんなどうしようもない人だけれど、クリフのことが、ずっとずっと、好きだったのよ。

相手にしてほしくて、振り向いて欲しかったの。だから、私が失踪したら、探してくれると思ったの。

いなくなったら、私の事ばかり気になるはずと思ったの。私のことだけで、クリフの頭の中をいっぱいにしてほしかったの。

でも、まさかこんなバカなことをしているとは、知らなかったわ。巻き込んでしまってごめんなさいね。」


「メリッサ様は、ご存知なかったのですか?」


「そうよ、だって、昨日だったかしら、私が外に出られたのは。

こちらでは、もうこんなに年月が経っていたのね。

エリー、あなた、こういうオルゴールを知らない?」


メリッサは、何もない空間に、オルゴールの映像を具現化してエリーに見せる。


「いえ、特に心あたりはありません。このオルゴールがどうされたのですか?」


「これはね、異空間に繋がるオルゴールなの。

私の身体は、今は、このオルゴールの中にあるわ。

これはね、王家の秘宝の一つなの。ちょっと、息抜きしたい時とか、逃げたい時とか、自由に出入りできるからよく使っていたものなの。

 改心の見込みのない犯罪者なども、ここにいれるのよ。

ふふふ、彼らには、お仕置きする人が必要でしょう?

まぁ、私のストレス発散の場所とでもいうのかしら。ふふふふ……。

けれどね、私だけが使える出入口が、ずっと封印されていたの。

恐らく、クリフが封印テープを貼ったんだと思う。

オルゴールが異空間に繋がっていることは、王族しか知らないことなのよ。家族は私を閉じ込めたりしないわ。

あら、こうしてエリーには話してしまったわね。決して、このことは口外してはダメよ。

クリフは知らないはずなんだけど……。妙な事にだけは、勘がいいもの。なんとなくテープを貼ったのだと思う。

きっと、何かのはずみで、その封印テープが剥がれたのだと思う。クリフが剥がすとも思えないから。

例えば……ぶつかって落ちたとか、暴れたりとかかしら?」


暴れて落ちる?もしかして、襲われた時かもしれない。


「そのオルゴールは、旦那様のお部屋にあるのでしょうか?」


「うーん、用心深いから、自分の部屋に置いていてもおかしくないわ。

そうだわ!エリーがクリフの呪いを解くことができる、と伝えるわ。

その為には、オルゴールが必要だとか言って、エリーに渡すようにクリフを脅すから、大事に持ってて。きっとよ。決して、私の身体が中にあるなんて言わないでね。

昨日は、久しぶりに出られたことが嬉しくて、高速で飛び回ってしまったの。気がついたら、どこから来たのか分からなくなってしまったの。私としたことが……。

今朝は、あなたを見かけて頭が真っ白になったの。クリフが、私のことなんか忘れて、再婚したのだと思って……」


庭園から私を見つめていたのは、旦那様の妻がどんな人が気になったからだったのね。


エリーは、庭園でのメリッサの様子を思い出していた。


「メリッサ様は、異空間に戻らないといけないのですか?」


「まぁ、色々と制約があるの。お願いできるかしら?」


旦那様を改心させることができるならば、新たな被害者も出さなくてすむわ。

本当は、1秒だって会話したくないけれど。半年……。離縁が成立するまで、全く関らずに過ごそうと思っていた。きっと旦那様も同じ気持ちなはず。それなのに、普通に接することができるだろうか……。でも……このやりきれない気持ちを抱えて、黙って過ごすことも辛い。それならば……。


「わ、か、りました」


エリーは言葉に詰まりながらも、承諾の返事を返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。