第9話.〇〇がコンビニ店員ってどうなんですか?
ナンパ男達との一件から数日、あの日はアラタが機転を利かせて何とか皆の機嫌をとることに成功したため、結果的には思い出として記憶に刻まれることになったが。
「あの男たち・・・今度あったらコテンパンにしてやるぞ。」
「どうしたの?」
「んや。何でもない。ほい。俺あがり。」
「なんでよッ!!何でこんなに主張してあげてるのに取らないのよ!!」
「いや、主張してるから取らないんだろ。なんで自分から負けに行かないといけないんだよ。」
「くっ・・・・・・確かにそうね・・・っ!」
「・・・・・・アホが。」
「アホって言ったわね!?あんた今この私にアホって言ったわよね!?」
この生活にも慣れてきたララノア達と共にババ抜きをしていたアラタ。
「なんじゃなんじゃ!はよ妾のカード引くのじゃ!」
ギャーギャー騒ぐアホを無視して、アラタは冷蔵庫に足を運ぶ。
「お前ら何飲む?」
「妾はもちろんあのルプス火山のように泡立つ漆黒の飲み物じゃ。」
「独特な言い回ししてんじゃねえよ。コーラな。」
「あ、私はオレンジジュースが良いわ。」
「ん。じゃあメアは?」
「私もオレンジジュースにしてあげるわ。」
「何で上からなんだよ。」
ふん!と偉そうにふんぞり返っているメアはと言うと、アラタより先に抜けておりソファで寝そべっている。
「むむむ・・・・・・。これは・・・これはどっちなんじゃ!?」
ララノアが、ババを主張しているにも関わらずスズカは頭を抱えララノアの二枚のカードを睨む。
「ふん。この私に勝てるかしら。」
「ここまで低レベルな読み合いなかなか見ないぞ・・・。」
それぞれのグラスに飲み物を注ぎ、リビングのテーブルにコトンと置くとアラタ二人の勝負を見守る。
「む・・・・・・。こっちじゃな?」
スズカは自分から見て右のカードに触れる。がララノアの反応はない。
「・・・・・・むぅ。」
次は、かなり分かりやすく主張されている左のカード・・・ババに触れる。途端にララノアの片眉と口角がピクリと上がり
反応する。
「・・・・・・分かった!こっちじゃ!!」
「いやそうはならんだろ。」
「なんじゃと!?こちらがババ・・・じゃと!?」
スズカは額に汗をうかべ、背後で二枚のカードをシャッフルする。
「のうアラタ。この隙に既に使い終わったカードと入れ替えるのはダメかの?」
「お前姑息すぎるだろ。」
シャッフルし終わったスズカは、ララノアの前に二枚のカードを突きだす。
「ほれ。ララノアよ。お主に分かるかの?」
「スズカ。あなた負けてくれたら晩御飯のおかず少し分けてあげるわよ。」
「右じゃ。」
「私の勝ちよッ!!」
「うわ汚ねぇ。こいつ使う手段がスズカより汚ねえよ。これについてどう思われますか実況のメアさん。」
「何言ってるのよ気持ち悪いわね。」
「酷くない?」
こうして、一位から順にメア、アラタ、ララノア、スズカで決着がついたババ抜き。
最近では暇を持て余し過ぎてほとんどアナログなゲームをしている。
「次はこれをするのじゃ!!」
そう言って持ち出してきたのはオセロ。
二人しか出来ない遊びであったため、アラタはパスを申し出る。
「俺コンビニでアイス買ってくるから誰か相手してやれよ」
「あ、じゃあ私も着いていくわ。」
「私はパスー。暑いし外に出たくない。」
「じゃあ、メアは妾とオセロじゃな!!」
キラキラと瞳を輝かせ詰めてくるスズカに押し負け、二人はオセロを始める。
「んじゃあ、俺らも行くか。」
「そうね。」
玄関から出て自宅の鍵を閉めたことを確認すると、二人は歩道を歩き始める。
「今日もいい天気ね〜。おかげであっついけど。」
「そうだな。夏は曇りが一番好きだけどな。」
「何でよ?」
「暑いの嫌いだし、かと言って雨降ったら蒸し暑いしな。」
「まぁ、あっちは春夏秋冬あったけど、ニホンほど変化は激しくなかったわね。」
車通りの多い真夏の歩道を歩きながら二人は、コンビニへ足を運ぶ。
公園で遊ぶ子供たち。
ランチタイムなのか、賑わいを見せる食事処。
買い物終わりに世間話に勤しむ主婦たち。
様々景色を眺めながら二人は会話を広げる。
「何かまだ夢の中に居るみたいだわ。」
「夢?」
「えぇ。だってそうでしょう?魔王の居ない世界が存在しているってこと自体信じられないのに・・・。こんなにも平和で、こんなにも面白い世界があるなんて信じられないわ。
魔法も存在していないのに、あの世界以上の発展を遂げてるってことも・・・。」
「あっちの世界では、確かに魔法が全てだったな。俺からすれば数年前まではあっちの世界の方が夢みたいな場所だったけどな。」
ラノベで見たようなファンタジーの世界。
魔法で生活が成り立ち、魔法で世界が成り立っている。
エルフや獣人族、様々な種族が共存し生活をしていた。
巨大な木々が存在し、未知なる魔物も存在していた。
「まぁ・・・楽しかったけど。」
「ふふ。そうね。私はあちらの世界の住人だったからそうは思わなかったけど・・・今ならアラタの気持ちが分かるわ。」
嬉しそうに語るララノアの横顔を眺め、思わずアラタも笑みを浮かべる。
──── ピンポーン・・・
気がつけば、コンビニへ着き入店音が鳴り響いていた。
「いらっしゃいませぇぇえええええッ!!」
「うぉ・・・張り切ってるな・・・。」
元気すぎるその声に思わず驚いてしまうアラタ。
しかし・・・しかしだ・・・どこかで・・・。いや気のせいだ。
「ララノア。」
「・・・・・・。」
言葉を返さないララノアの方を見やるアラタ。
店内へ入ったにも関わらず、ララノアは踵を返そうとする。
・・・・・・うん。その様子から察した。
「なぁ、ララノア。とりあえずよ。とりあえずせっかくここまで来たんだしアイスだけ買おう。」
「アラタ・・・正気なの?」
そう聞かれれば、頷くことすら躊躇われてしまう。
「いらっしゃいませぇぇえええええッ!!」
中々自動ドア付近から、動かない俺たちが居たためか何やら圧のようなものを感じる。
「ララノア。」
「あぁもう!分かったわよ・・・・・・。」
いや、俺だって嫌だよ?うん。嫌なんだよ。
「あいつらのアイス・・・何にする?」
「これとか美味しそうね。」
気を取り直して、アイスを選ぶ二人。
ララノアが手に取ったのは抹茶アイスだ。
「私これにするわ。」
「じゃあ、スズカ達は適当に買ってくか。」
外は暑いため一応二人分の飲み物をカゴの中へそして、アイス数個も同じくカゴへ投入するとレジへ向かう。
「私は先に行ってるわよ。」
「おいっ!ちょっ・・・・・・・・・」
逃げやがった。
「お客様いらっしゃいま・・・・・・待てよ?」
「う・・・・・・」
「むむ。アラタ君ではないかッ!?」
「違います。人違いです。」
「いいやッ!少し若いが僕が見間違えるはずがないッ!!」
この元気いっぱいの男・・・・・・・・・。
やはり、来ていたか・・・この世界に・・・・・・。
「勇者であるこの僕が、見間違えるはずがないんだッ!」
「新人くん少し声のトーン下げようね。」と注意されているにも関わらず、男は気にせず続ける。
「今日こそは決着を付けてもらうよッ!僕のエクスカリバーでッ!君を泣かせてみようッ!」
ものも言いようだな。
卑猥男が。
「とりあえず会計してもらっていい?」
「お会計740円になります!!!!」
アラタは、金を置くと同時に袋を手に持ち走ってコンビニを後にする。
「アラタ・・・遅かっ」
「逃げるぞッ!!」
ララノアの手を引き全力疾走で逃げるアラタ。
「アラタくぅぅぅぅうんッ!!!!!!」
「ひゃぁぁあッ!!!!!!なんか追っかけて来てるわよッ!?」
「良いからッ!絶対に後ろを振り向くなッ!!」
「やっぱり!?レオンだったのね!?」
「くそくそくそくそッ!!こいつだけは会いたくなかったよッ!!」
白髪に青眼。
白い肌にスラーっとした体型。
傍から見ればただのイケメン・・・で済むであろう。がしかし。
この男・・・非常に面倒である。
元来魔王とは勇者が討伐するものであり、決して異世界からの転移者が討伐するものでは無い。
「今度こそ僕のエクスカリバーでッ!君を一網打尽にッ!!」
「うるせぇ!!変態ッ!!〇ねッ!!」
この男・・・確かに平均より優秀で、勇者としては申し分ない才能を持っていたにも関わらず・・・。
頭が少し・・・というよりかなり残念で・・・。
全盛期の魔王と交渉でカタをつけようとした挙句、返り討ちにされ使い物にならなかったのだ。
アラタが転移し魔王討伐を務めることとなったその日から、勇者であるレオンは、アラタを敵視し毎日毎日勝負を挑むようになったのである。
当然、魔王を倒すほどの才能を持ったアラタは毎度返り討ちにしていたのだが、アホなのかめげない。
「うぉぉおおおおおおおッ!!!!!!『聖剣解放ァァァアアアッ!!!』」
人通りの多い道路で奇声を上げながら走る若い男と、それから逃げる男女が二人。
「お母さん?あの人たち何やってるの?」
「見ちゃいけません。」
俺もうこの土地でやって行けないかもしれない。
「ね、ねぇ。アラタ。もしかして・・・だけど・・・私・・・。あのバカと同じことやっちゃってた?」
「あー・・・・・・。」
「もう無理。私は置いていって。」
どうやら今になってようやく理解したらしい。
どれほどに恥ずかしい事なのかを。
「バカがバカ言うなよッ!!お前が居ないなら俺はどうすればいいんだッ!!」
「あんた今どさくさに紛れてバカって言ったわよね!?
ねぇ!!言ったわよね!?」
「・・・・・・・・・走れッ!!」
いかんいかん。演技めいたことをした上本音が出てしまった。
「僕の問いかけに聖剣からの応答がないッ!?まさかッ!!まさかアラタ君ッ!!君が何かしたのかいッ!?」
「あーじゃあ、もう一度やってみたら?」
走りながら背後をみやり、追いかけてくるアホにアドバイスを渡す俺優しい。
「バカじゃないの!?これじゃあ私達も同類に見られるじゃないっ!」
「いやもう遅いだろ?どっかのアホが既にやらかしてるんだし。」
「・・・・・・・・・あっ。」
「うぉぉおおおおおおッ!!我が声に応答せよォォォォォオオオオ我が剣ッ!!来たれッ!!エクスカリバーァァァァァアッ!!!!」
やっぱこいつ殴って黙らせた方が良いのかな。
「ねぇ、何か面白いことやってるよ?」
「かっけぇ・・・・・・。僕もあの年になったら呼べるのかな!剣!!」
「いや呼べないでしょ。単純に考えてあの男がバカなんでしょ。あの年にもなって厨二病なんて恥ずかしい。そろそろ現実見たらどうなの。」
いや厳しいお言葉。
最近の小学生ってあそこまで成長してるものなのか。
「うぉぉおおおおおおおおおおッ!!!!!!」
「どうするのよ!!このままじゃ家まで着いてきちゃうわよ!?」
どうするって言われてもな・・・。
俺らの身体能力の上昇を考えると、多分レオンもある程度あちらの世界の力が受け継がれているはず。
ララノアは、こちらの一般人となんら変わらない身体能力。
俺がララノアを見捨てない限り撒くことは出来ない・・・と。
「お前人質になる気ある?」
「無いわよ!?」
「だよなぁ・・・・・・・・・。」
はぁ・・・はぁと息を切らしながら必死に走るララノア。
そろそろ限界だろうか。
「魔王の次は勇者かよ・・・・・・・・・。」
結局二人は撒くことが出来ず。
凄まじい速度で迫るレオンに追いつかれ
住所がバレてしまった。
pt評価やブクマなどよろしくお願い致します




