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第8話.せっかくのプールでナンパってどうなんですか?

 

「いてぇ。腹が痛てぇ。」

「ふん。これはアラタが悪いわよ。」


 理不尽すぎやしないだろうか。

 恨むのならば自分のアホさを・・・


「何よ?」

「いや、なんでもありません。」


 バスはお昼時ということもあり買い物に出る主婦などが少し多かったが、三人が座る席が確保出来たためアラタだけが立って腹を抑えていた。


「妾も使ってみるのじゃ・・・・・・ぷ。『エアリアルよぉー』」

「あんたねぇ!!」


 茹でダコみたいになってるぞララノア。


「ちょっと下等生物こっちに寄らないで!」

「仕方ねえだろバスが揺れるんだから、体勢ぐらい崩すし。」

「身体強化の魔法使いなさいよ。」


 こいつなかなかに性格が悪いのかもしれない。とは思うがそれに乗ってしまいたい俺がいる。


「『エアリアルよぉ』」

「「ぷ!」」

「あんた達ぃ・・・・・・・・・。」


 あ、恥ずかしすぎて半泣きになってる。ウケる。


 ひたすらにララノア弄りをしていると、二十分経たないうちに目的の市民プールへと着く。


「私の・・・私の人生唯一の汚点だわ・・・。もうしない・・・もうしない・・・。」


 降りたあともぶつぶつと言っていたララノア。


「のうアラタよ・・・。あれは放置で良いのか?」

「皆必ず通る道さ。黒歴史・・・。ふっ。あの頃が懐かしい。」

「何言ってんのよあんたバカなの?」


 メアからの厳しい言葉をもらったアラタは、気にすることなく不意に厨二病時代の黒歴史を思い出す。


「ゔっ。違う違う・・・何がブラッディレインだ・・・。何がオッドアイだ・・・。死ぬ?死のうかな俺。」


 ララノアと同じようにしゃがんで隣に並ぶアラタ。


「な、なんじゃあ?アラタ!?大丈夫かの!?」

「あぁーーもう!!なんで私があんた達の面倒見なきゃいけないのよ!!行くわよ!!」


 メアは二人の首根っこを掴むと、市民プールへと足を運ぶ。

 その光景は非常に異様で周りからは奇異な視線を向けられていた。









「ふぅ。俺とした事が・・・。」


 男性用の更衣室で着替えを行うアラタ。

 こちらに帰ってきて風呂に入る際に気がついたことがある。

 体型が異世界に行く前とかなり変わっている事だ。

 昔は、細く頼りなさそうな体型をしていたアラタだったが、

 今では筋肉がつき心做しか体も少し軽くなったような気がしていた。


「魔法は使えないのに、あちらでの恩恵は少し受けている・・・ということか?」


 未だにわからない謎の現象だが、またそれもファンタジーというアホ思考で考えることをやめたアラタは皆の待つプールへと足を運ぶ。




「来たわね。」


 この市民プールは、室外プールでありこの県で最も有名で最大級の市民プールである。


「うぉ・・・・・・。」


 三人を見たアラタは思わず言葉を失ってしまう。


 白のビキニにシャツを身につけたララノアは、姫としての清楚さを失わずに色気を醸し出している。

 一方、スズカは何故かスク水という意味不明なセンスをしているが何故か背徳感を感じてしまう。


「な、何よ!汚らしい視線を向けないでくれる!?」


 メアはというと、ララノアよりない胸ながらも黒のビキニを身につけていて艶かしさを感じる。

 よく考えてみればこの世界においても三人は、美少女という類の中でも最高峰の美少女では無いだろうか。


 その証拠に、市民プールに居る老若男女問わず皆三人に見惚れている。


「ほれほれ!アラタ行くのじゃ!」

「うん。でもやっぱりお前のセンスはどうかしてるな。」

「な、なんじゃ!?これはこの世界のプールとやらでは当たり前の服装なのじゃろ!?」

「お前、それ一周まわってもはや危険な格好だぞ。」


 そんな!と衝撃を受けていたスズカを無視して、アラタはプールへと足を運ぶ。


「それにしても人が少ないわね?」


 どうやらララノアも楽しんでくれている様子。


「あぁ。まぁここは海にも近いし、大型連休だから皆海に行ったりするんじゃねえか?そもそも暑いから外に出たくないって人もいるかもな。」

「へぇ・・・。ねぇここ水もあるしこれなら魔法・・・」

「使えねぇよ?」


 まだ懲りてないのかこのアホは。


「い、い、行くわよ。下等生物!」

「何でそんな産まれたての子鹿みたいな震え方してんだよ。」


 こいつ・・・まさか・・・?


「なぁララノア・・・。」

「えぇ・・・多分泳げないわよね。」


 二人して怪しげな笑みを浮かべるとメアの両腕を掴みプールへと連行する。


「な、何よ!?やめなさいよ!!」

「おいおいつれないなぁ。ここまで楽しみにしておいてまさかプールに入らないとかないよなぁ?」

「そうねぇ?もしかして・・・入らないのかしらぁ?」

「何かキャラ変わってない!?やめてよバカ!絶壁!」

「むっかーー!!!絶壁関係ないでしょ!?」

「お前の煽りに乗るのはや過ぎない?」


 メアは涙目になりながらも、足先だけをプールにつける。


「ほ、ほら!入ったわよ!」

「ふふん。情けないのう!妾が泳ぎを教えてやるのじゃ。」


 いつの間にかぷかぷかと浮かんでいたスズカ。


「「「・・・・・・・・・。」」」


 流れるプールで流れに逆らわず、そのまま流れていく胆力のあるバカがこの世にいるとは思いもしなかった。

 まぁ、人が少ないから良かった。

 人が多かったら多かったでそこは流石にスズカも配慮するだろうしな。

 あいつにも一応羞恥心はある・・・・・・と思いたい。


「・・・おーい。聞いておるのか?・・・・・・い。・・・・・・・・・ておるのか?」

「あ、流れて行ったわ。」


 そうだ、初めから何もいなかった。反対側へと消えていったアホは見なかったことにしよう。


「よし、まぁ俺らも程々に楽しむか。」


 アラタは率先してプールへ入ると、メアに手を差し伸べる。


「ほら、早く入れよ。しっかり捕まえててやるから。」

「ふ、ふん。私は別に怖くないけど仕方ないわね。」


 震えてるくせに強がってるなぁ・・・。


「私は一人で入れるわよ!アラタ!」

「なんの報告だよ。」


 震える手でアラタの手を握りプールへ入るメア。


「プールを存分に楽しむためには、まず軽く泳げるようになっておくしかない。俺の事を師匠と呼べ!!」

「嫌よ?」


 うわぁ、冷たい視線。


「うむ。妾が師匠と呼ぶのじゃ。」

「その状態で一周まわってくんじゃねえよ。」








「もっとほら!あのーしっかり泳げ!」

「偉そうに師匠と呼べとか言ってる割には教え方が絶望的に下手ね・・・アラタ・・・。」

「こういうのは、もっとバタバタっとシュッとやるやつだろ。」

「下等生物に教えてもらおうと思った私がバカだった。まさか知能も下の下だったなんて。」

「酷すぎないかそれ?」

「・・・・・・・・・いのじゃ。」

「何て?」

「気持ちが良いのじゃ。」

「お前はプールに来てんだからいい加減泳ぐことをしろ。」


 あれから数十分ほど経過しているため、若干の疲れが出てきたアラタはプールから上がる。


「どうしたのアラタ?」

「休憩がてら飲み物買ってくる。」




 三人はまだ泳いでるとの事だったので、アラタは自販機へと足を運ぶ。


「えーっと。コーラとオレンジジュース・・・三本で良いか。」


 ピッと音を鳴らし、受け取り口に落ちてきた飲み物を手に取る。


「流石にひとりじゃ持ちにくいな。」


 四本のジュースを抱え、アラタは三人のいる場所へと戻るがそこで見覚えのない男数人が三人に言いよっているのを発見する。


「あれは・・・ナンパか?まずいな。」


 遠くから聞こえてくる会話。

 すんなりと諦めてくれたら良かったものの男たちは、無理にでも連れていこうとする様子だった。


「姉ちゃん達俺らともっと良いとこ行こうぜ?」

「なんじゃお主ら?」

「残念ながら私たちは、どこにも行かないわよ。いい加減諦めて。」

「まさか下等生物よりもしたの外道がいるなんて・・・。」


 男たちは、なかなか言うことを聞かない三人の腕に手を伸ばす。


「気持ちよくしてやるからさ!ね?」

「やめろよ。」


 アラタは、普段の声色とは少し違い低くドスのある声で数人の男に向けて言い放つ。


 「何?今この子達と話してるんだけど?」

 「高校生は大人しく帰った方が良いよ?」


 久しぶりに気分が高まっている気がする。

 怒りがふつふつと湧いてくる。

 そいつらは俺の大事な仲間だ。


 「全員俺の連れなんで。」

 「ぷ。君が?この子達と?」

 「ないない。笑わせないでくれよ。」


 男たちも額に青筋を浮かべている。

 せっかくのナンパの最中に邪魔をされたからだろうか。


 「ほら、早く帰れよ。」


 男の手がアラタの肩に触れそうになった瞬間、敵の攻撃を躱す癖でつい、相手の腕を振り払ってしまう。


 「うぉ!?」


 ある程度筋肉はついていると思っていたが、予想以上に出てしまった力で相手がよろける。


 「お前さ?俺たちに喧嘩売ってんの?」

 「いや、先に触れてきたのはそっちだよな?」


 やはり・・・だ。

 この世界に来ても尚、身体能力が以前よりも数倍ついている。


 「良いよ。表出ろよ。」


 数人の男一人がどうやら堪忍袋の緒が切れたようで、アラタを外へ促す。

 が、すでにキレていたのはアラタである。

 せっかく皆が楽しめるように・・・と、プールへ連れてきたはずなのに。と怒りがより高まるが、異世界にいた時の思考がつい働いてしまう。


 一般人には手を出せない。

 男としてはダサいかもしれない。

 だけど、ここで手を出したら俺はこいつらと同じ程度に下がってしまう。


 「はぁ・・・・・・。悪かった。すまない。」

 「アラタ・・・!」


 拳を強く握り締め、アラタは頭を下げる。

 恥を忍んで。耐える。


 「ぷ・・・・・・はははっ!!これは傑作すぎるだろ!!」

 「何だよ!ビビったのか!?」

 「だせぇ!男としてだせぇ!」

 「お前もう男として終わってるよ!」


 俺を笑う声が聞こえる。

 心配する三人の声が聞こえる。


 「お主ら・・・・・・。潰す。」


 俺の身体能力が異世界よりは数段落ちているものの、以前より高まっていると考えれば。

 俺と同等であるスズカが本気を出せば間違いなく、殺してしまう。

 キレたあいつは手が付けられない。


 「スズカッ!やめろ・・・ッ!」


 ダメだ。俺はずっとお前らと一緒に生活していきたい。

 俺の望みを叶えるためなら一時の恥なんて惜しまない。


 「やめろ・・・ッ!だってよ!女に何ができるってんだよ!」

 「君も顔と体は良いんだからさ!俺たちに従って気持ちよくなってれば良いんだよ?」


 あ・・・でもダメだこれ。

 俺だけならまだ良かった。

 正直、今ならこいつらを殺してしまい・・・・・・


 「何をしてるのかな。」


 ・・・・・・・・・ん?


 「な、なんだよお前。」


 颯爽と洗われたおっさんにナンパ男たちが動揺する。

 それは当然の反応といえば当然なのかもしれない。

 なぁベール。あんたは何でそんなギリギリを責めた水着履いてるんだ?


 「ベール・・・なんであんたここに居るんだ?」

 「いや・・・、仕事が終わって携帯を見てみたらメアから助けてってメールが来てたからね。この男たちかな?私の友とその仲間。そして愛する娘に手を出そうとしたのは?」


 魔王に凄まれてビビらないやつはいない。

 その眼力は今も健在のようで、ベールに睨まれた男たちは声を震わせる。


 「な、なんだよ。こいつ。」

 「何かもうナンパって気分じゃねえわ・・・・・・。」

 「か、帰ろうか・・・・・・。」


 そう言ってナンパ男たちは、目の前から消える。


 「すまんベール。助かった。」

 「いや良いんだよ。それに・・・君もかっこよかったよ。」

 「かっこよくねぇよ。あんなにこいつらバカにされても我慢してた男なんて。」

 「いいや。君はかっこよかった。三人を守ったのは間違いなく君だよ。」

 「・・・・・・・・・。」


 数人の男たちのせいで、楽しんでいた空気がぶち壊れてしまった。

 俺のした行動が本当に正しいのか・・・分からない。


 結局プールでの一件のせいで、なんとも言えない空気となった一行は帰って皆で食を囲むことになった。

「・・・・・・ベール。」

「何かな?アラタ。」

「その・・・なんて言うか・・・斬新な水着だな。」

「ブーメランって言うらしいね。気に入ってるんだよ。」

「気に入ってるのか・・・・・・。」

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