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会社員達の新入社員歓迎会生活

 週末。

 本来なら私は、家で勉強したり、家事をしたり、資格取得のための勉強をしたり、料理の研究をしたりしているが、今日は違う。

「ふんふふ~ん♪」

「…やけにご機嫌じゃないか、菊池。」

「あったりまえじゃない!いくら社内行事とはいえ、優君と一日中遊べるのよ!これを喜ばずして、何を喜べばいいの!?」

「そこまで言うか。まったく、親ばかと言うかばか親と言うか…。」

「バカ酒には言われたくないわ。」

「なっ!?己がそれを言うか!?」

 今、私達はマイクロバスに乗って、ある場所に向けて移動している。


 事の発端は、今年入社してきた新人社員、桐谷先輩の歓迎会の案件である。新入社員の歓迎会に何をやるかは毎回変わっているので、予想がつかない。前回は飲み屋だったが、その前はカラオケだった気がする。なので、今回は何をするのか分からなかったのだが、ある人が、「バーベキューやりたくね?」と言い、そのまま伝染し、何がどう婉曲したのか、今回の新入社員歓迎会はバーベキューをすることになった。だが、何にしても予算、場所、交通手段を確保する必要があり、その幹事の役割を誰もやろうとはしなかったらしい。そして、そこに工藤先輩の、「優も行くんだし、菊池に任せれば、優が幸せ、みんなも幸せなバーベキュープランを考えてくれるんじゃね?」との一言で、菊池先輩が幹事をしてくれることになったらしい。それからは菊池先輩の頑張りにより、交通手段確保、バーベキュー道具レンタルの手配、かかる時間の計算、バーベキューする場所の確保、その他諸々を一人でしてくれたらしい。さすがは菊池先輩である。

 ちなみに、さっきかららしいという発言に関してなのだが、何でも、私が京都に出張に行っている際に話し、その間に決められたのだとか。

 そして今、このマイクロバスを運転しているのが、

「それにしてもお前、マイクロバスとはいえ、運転免許なんて持っていたな。」

 そう。菊池先輩が運転しているのだ。なんで免許を取得したのかと言うと、

「そりゃあ、優君とマイクロバスデートを決行するためよ!」

 …とのことらしい。なんというか、相変わらず動機が不純だなぁと思いつつも、実績が資格取得として反映されているのだから、すごい人だなと感心しました。

「…ところで、これからどこに向かわれるのですか?」

 確か、私が京都出張の時に全部決めていたらしいので、詳細を知らないでいる。前日に聞こうかとも思いましたが、仕事に集中できなくなるのは良くないと思いましたので、そのまま聞かずに歓迎会決行の今日まで知らずに来てしまいました。一応、泊りではなく日帰り、と言うことは聞いていたのですが、後はほとんど知りません。お昼のバーベキューも詳細は知りませんし。

「ふっふーん♪私のこの腕があれば、一件落着なんのそのよ!」

「はぁ…。」

 言っている意味は分からないが。おそらく、「私に任せれば大丈夫よ!」と言う事を言いたかったのだろう。

「それで、どこに行くのですか?」

「とある有名な避暑地よ♪」

「有名な避暑地?」

 私の頭の中が?で一杯だが、菊池先輩はそんなのお構いなしに、

「♪~♪~~♪♪」

 鼻歌を歌いながらマイクロバスを走らせる。

「ま、楽しみにしてな。」

 工藤先輩からはこう言われたのですが、やっぱり気になります。こうして私はもやもやしつつ、目的地に着くことを待った。


 そして、待つこと数時間。

「着いたわ!ここが優君と将来住む場所、軽井沢よ!」

「…ちなみに将来住む予定と言うのは?」

「ええ!優君と私が結婚したらここに別荘を建てて永住するの。今からどんな家に住むか迷っちゃうわ〜♪」

「…さ、あんな奴の言っていることは無視して、材料とか道具とか下ろそうぜ。」

「「「はい。」」」

 こうして、菊池先輩を除いた社員一同は、マイクロバスに積んだ荷物を降ろし始めた。


 そして、

「優く~~~ん!!水場よ水場!ここに来たからにはこの水着を…!」

「嫌ですよ!なんで男の私が女性ものの水着を着なくてはいけないのですか!?」

「それは、優君が可愛過ぎるからよ!」

「意味が分かりません。」

「ええ~~。」

 今、私達は小川の近くで休んでいた。

 ある人は水に足をつけてばたつかせ、ある人は同僚のみなさんと話をし、ある人は釣竿をもって釣りを始め、この場所を満喫していた。

 ちなみに、荷物番は今も交代でやっているらしく、

「あ~。早く酒が飲みてぇ。」

「…なら、持ってきた携帯ゲーム機があるので、それで暇でも潰しますか?」

「お♪そりゃあいいな。橘、サンキューな♪」

「いえ。それで何やります?」

「レース!これ一択だな。」

 今は工藤先輩達の番らしい。

「うふふ。優君が楽しんでくれて、お姉さんは最高にハッピーだわ♪」

「こちらこそです。わざわざ遠いところに連れてきてくださりありがとうございます。」

「えへへ~♪そう言ってくれるだけでも頑張ったかいがあっったってものだわ。」

 こうして私は、菊池先輩とともにゆったりとした時間を過ごした。


「さて。ここでバーベキューの準備を始めようと思う。」

 あれから数時間経過し、みんなのお腹が空いてきたであろう時間帯に、課長によってバーベキューの説明が始まった。

「女性陣の皆様は材料の下処理を、男性陣の皆様は下処理されたものを焼いていくように」

「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」

 そして、社員一同でのバーベキューが始まった。


 今回来た社員の男女比率は半々となっている。なので、男女別で分けることがちょうどいいと課長は判断したのでしょう。そして、「これって、どうやって切るの?」とか、「あ、ちょっと身も削っちゃった。ま、いいよね。」と、ちょっとだけ不安な声が聞こえてきた。けど、みんなが楽しくバーベキューをしているようなので、これがベストなのでしょう。その証拠に、みなさん、笑顔で料理していますし。なんだか、自然と笑みがこぼれてしまいそうです。

「…おい。」

 不意に、誰かから声をかけられる。誰なのだろうと考えつつ、声質から大体予想はついているので、振り返って返事をした。

「なんでしょう?」

「…トウモロコシとか肉とかって、普通に焼いていいんだよな?」

「えっと…。」

 私としては、それなりにこだわりはあるけど、それを言うのはちょっと違うだろうと思い、

「みんなが楽しく作っていれば、多少失敗しても大丈夫だと思いますよ、工藤先輩?」

「けどな。俺は一度もバーベキューなんてしたことないんだよな。」

「私もないですよ?」

 バーベキュー関連でようやくキャンプのことを知ったぐらいですし、アウトドア関連についてはほとんど知りません。食材に関することでしたら、多少は調べますけど、それ以外は…、

「でも、トウモロコシを焼いたことぐらいはあるだろ?」

「ありますけど。」

「だったら、焼き加減を見て、指示だけでもだしてくれないか?これで食材を丸子げにしたくはないからな。な、頼むよ。」

 と、工藤先輩は私にお願いしてきた。他の男性社員も何故か私のことを見てくる。なぜでしょう?

「…分かりました。ですが、あくまで指示するだけ、ですからね?」

「おお!みんなもそれでいいな!」

「「「おお!!!」」」

 …あれ?いつの間にか、男性陣の焼き具合を見ることになっていたのでしょうか?ま、いいか。私もちょっと手持無沙汰になってきたところですし、女性陣に混ざっての作業も大体終わったようですし、次は男性陣の手伝いを致しましょう。

 …ところで、このアルミホイルの包みは何なのでしょう?どうやらここに来る前日に、女性社員一同が作っていたらしいのだが、中身は出来上がってからと言われてしまった。気になる。けど、言われたものは仕方がないと思い、そのまま焼いていった。

 バーベキューで焼いたトウモロコシやピーマン、肉をみんなで取り合い、分け合いながらも楽しく食べていくみなさん。そしていよいよ、

「…そろそろ、じゃないかしら?」

 菊池先輩がアルミホイルの包みを見てこう言った。

「そろそろ、これが何なのか教えてくれませんか?」

「いいわよ。これはね、」

 と言いながら、工藤先輩が持っていたトングをひったくり、トングでその包みをつかみ、皿に置き、アルミホイルを開ける。そこには、

「鯖と、この匂いは、ワイン、ですか?」

「ええ。」

 何でも、色んなものをアルミホイルに包み、それを今日のこのバーベキューのために用意していたんだとか。なるほど、野外でもこうやって一工夫すればこんな美味しそうな料理が出来るのですね。勉強になります。ちなみに、この料理にはワインを使っているので私は食べられない。かといって、帰りのマイクロバスの運転がある菊池先輩も食べることが出来ない。では誰が食べるか?

「お♪これは美味そうだな。優も菊池も食べないよな?

「え、ええ。」

「そうですね。」

「それじゃあ、いただき。」

 工藤先輩がかっさらっていった。…ま、いいけどね。実際、私も菊池先輩もいらないといったわけだし。いいんだけど、ちょっとだけ、モヤッとした瞬間だった。

 その後も様々な食べ物(キノコ類だったり、山の幸だったり、海の幸だったり…。)を食べ、お腹一杯になり、みんなで片づけを始める。

「いや~。それにしても、楽しいバーベキューだったな。」

「そうですね。」

 バーベキューしている間、様々な人が桐谷先輩に話しかけていた。桐谷先輩は嫌な顔一つせずに話を膨らまし、笑いの絶えない時間を過ごしていた。ああいう人っているんですね、と、素直に称賛したくなります。何せ、

「はわわ~。今日の優君も一段と凛々しくて、たまらないわ~♪」

「あ~。やっぱ酒は最高だぜ!」

 …私を見て息を荒げている人と、酒を飲んで大声で笑っている先輩が今目の前にいるのですから。ま、この御二人もいいところはたくさんあります。あるのですが、今は私を見て興奮している変態と、酒におぼれたダメ人間にしか見えません。本当にいい人達なんですけどね。

 そして、談笑もほどほどに行われたところで、

「それでは、そろそろ時間だし、帰ろうかね?」

 そんな課長の言葉に、

「「「「「「はい。」」」」」」

 全員賛同し、荷物をマイクロバスに積み込んで、この軽井沢を後にする。帰り道、

「ふんふ~ん♪」

「菊池先輩。なんか、ご機嫌ですね。何かあったのですか?」

「ええ。優君と一緒にバーベキュー出来るなんて、また私の素晴らしいコレ…。」

「これ?何ですか?」

「…何でもないわ。とにかく楽しかったってことよ。」

「?」

 ま、みなさんも楽しんでくれたみたいですし、いい休日を過ごしたと思います。およそ半分の人達が今も寝ていますし。ちなみに工藤先輩はというと、

「これ以上お酒を飲んでいいとか、天国かよ…。」

 夢の中でもお酒を飲んでいた。アルコール中毒にならないかちょっと心配ですけど、今だけは大目に見ましょう。あ、もちろん私は女性ものの水着は着ていませんよ?

 その後、みなさんを社員寮に送ってから、ゴミを家の中に入れ、レンタルしていたバーベキュー道具を返しに行った。もちろん、返すにも人手がいるだろうと思い、私もついて行った。道中、

「どう?このままホテル街に行って、私と素敵な一夜を…。」

「早く目的地に向かってください。」

 おかしなことを言ってきたので、さらりと流した後、目的地に向かうように言った。若干ぶうたれていたが、そんなことは私の知るべきことではないと判断し、放置した。

 そして、マイクロバスを返し、社員寮に戻る道中、

「今日はありがとうございました。バーベキュー、楽しかったです。」

 今日の感想を述べる。

「そう?それはよかったわ。何せ、初めてのバーベキュー、だったものね。」

「そう、でしたね。」

 今まで外食したことは数え切れないほどあったが、バーベキューする機会はなかったなと、一人考えをまとめる。

「なんなら、次はキャンプしてみない?私と優君の2人だけのあっついあっついひと時を…。」

「それは…考えておきます。」

 即断るつもりだったが、キャンプ、ですか。確かに、一度くらいはやってみたいですね。キャンプ飯、というものにも興味がありますし、広い高原、そしてテントの中で一晩過ごす時間、どんなものなのか想像がつきませんね。

「ええ~。そこは行きましょうよ~。私と二人っきりの…。」

「あ、さっき聞いたのでもう言わなくて大丈夫です。」

「ぶぅ。優君のいけず。」

 そんな会話をしながら、私は明日のご飯の献立を考えていた。

 さて、明日はどんなご飯にしようかな。

次回予告

『小学生達の自由研究案思考生活』

 7月も折り返し、小学生達は夏休み目前となっていた。その宿題の1つ、自由研究をどうするか、桜井達は考える。だが、桜井達4人ではどうすればいいのか分からず、ある小さな小学生の力を借りようと、コンタクトをとる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

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