小学生達の自由研究案思考生活
7月の第3週。
学校では夏休み間近で、夏休みの予定についての話題で持ち切りであった。
それは小学6年生も同じであった。
「綾。今年の夏休みはどうする?」
「う~ん…。今年も7月中に集まって、2人で一緒に宿題やろう。」
「そうね。」
かくいう、風間洋子、桜井綾の2人も、夏休みを楽しみにしていた。そんな話題が学校中を飛び回る中、
「は~い。静かにしてくださ~い。授業を始めますよ。」
担任、小野口春がクラスの生徒に声をかける。
「それでは今日、来週からある夏休みについてのお話をしますよ。」
「「「は~い。」」」
こうして、小学生達の夏休みに関する注意喚起を、担任は行う。
まず行ったのは、手紙の配布である。内容は、夏休みを送る上での注意事項はもちろんのこと、来年は中学生になるので、その心構えのことも書かれていた。毎年のことをいつも手紙として配られていたので、生徒は飽き飽きしていたが、来年から中学生になるという事実を告げられると、急にソワソワしだしていた。そして、みんなは夏休みを今か今かと待ち望んでいた。
だが、それは、
「それでは、今年の自由研究は班ごとに行ってください。」
担任の一言によって、
「「「…え?」」」
急に静まりかえる。
「班は…、そうですね。修学旅行の時と同じ班にしましょうか?」
その発言で、
「「「え~。」」」
生徒全員の士気が下がる。だが、
「いいですか?必ず夏休み中に終わらせること。夏休みが終わったら、みんなの前で発表してもらいますからね。」
「「「・・・。」」」
「返事は?」
「「「…はい。」」」
担任に口答えできるはずもなく、肩を落としながら返事をする。それを見て、
「はい、よくできました。それでは残りの時間は自由研究のための話し合いにします。机をくっつけて、話をしてください。」
こうして、残りの時間でみんなは自由研究のことについて、話し合いを始める。
「さて、それでどうする?」
「どうする、と言われてもね…。」
「う~ん…。綾は何かいいアイデアある?」
「え?ごめん。特にいいアイデアはないかも。」
「そう…。」
「「「「・・・。」」」」
こうして、優と修学旅行をしたメンツは再び話し合いを始めた。だが、話し合いは最初の二言三言で詰まってしまい、全員、どうしようかと考え、無音の時間が4人を包み込む。
「と、とにかく!この紙になんでもいいから書き込んでいって、そこから候補を絞り出そうぜ!」
と、とある男の子が紙1枚と鉛筆1本を中央に置く。
「「「分かった。」」」
3人はそのアイデアに賛同し、雑談のような話し合いが始まった。
といっても、本当に雑談の延長戦のようなもので、
「ねぇ?今朝のニュース見た?」
「うん。なんか先週、ヨーロッパの方でちょっとしたテロ?みたいなことが起きたらしいって、お父さんとお母さんが言っていたよ。」
「それもあるけど、私はやっぱり、潮田詩織に関するニュースかな。」
「あ!やっぱりそれだよね!それ!」
「俺もそうだな。やっぱり気になったのは、」
「「「「潮田詩織の隣にいた女の子!!!!」」」」
「あの子って一体誰なのかしら?」
「ね。1月近くたっても何一つ正確な情報も入ってこないし、噂ばっかり飛んでいるよ。」
「確か、外国人とか、そもそも女の子じゃないとか、色々あったよね。」
「だな。」
こうして、雑談をしていくうちに、紙は黒くなっていく。
そして話し続けること十分。
「…こんなもの、かしらね?」
「できたの?」
「できた、けど…。」
「これ、本当に調べるの?無理じゃない?」
「潮田詩織と謎の女の子のプロフィールって…。」
無理難題どころか、個人情報保護法に反するような研究内容になってしまっていた。
「それじゃあ、テレビ局のことについて調べる?」
「う~ん…。なんか、大ざっぱすぎないか?もうちょっと具体的に決めた方が…。」
「なら、テレビ局で働く人達に話を聞くとかいいんじゃない?」
「なら、それに決めましょう!」
「ちょっと待って。」
「え?」
「なんだよ。せっかく決まったのにケチつける気か?」
「別にそれでもいいけど、誰がテレビ局の人と話をするの?」
「…言い出しっぺ?」
「私は無理よ!こういう時は男子がやるべきじゃ…。」
「こういう時だけ男子に頼るとか辞めてくれよ!大体、どうやってテレビ局に入るつもりなんだ?」
「それは、誰かに許可をとって…。」
「誰かって誰?誰がやってくれるの?」
「「「・・・。」」」
「…別の案、考えましょうか?」
「「「はい…。」」」
話し合いは遅々として進まず、それでも話合いを続行していく。
「…そういえばさ。お前の家って、ケーキ屋だよな?」
「え?う、うん。」
ここで同じグループの女の子、神田真紀が肯定する。
実は神田真紀の家はケーキ屋を経営している。日夜、ケーキを求めて多くの人が来店している。かくいうこのグループの面々もお世話になっている。
「ならさ。なんかいいアイデアない?」
「いいアイデアと言われても…。お父さんとお母さんがケーキ作っているし。私は普段レジにいるから。」
「そうなのか?」
「確かに。私が買いに行った時もレジにいたし。」
「私も。いつも美味しいケーキで誕生日会しているよ。」
「そう?いつも家をご利用いただきありがとうございます、なんて♪」
ここで、風間はケーキ、と案を記す。
「風間。ケーキなんて書いたって、誰も作れないし、意味無いんじゃないか?」
「そんなことないわよ。一人、心当たりがあるし。」
「心当たり?…あ。」
「うん。そういうことよ、綾。」
「確かに、出来そうかも。」
「というより断言できるんじゃないかしら?」
「「???」」
風間洋子と桜井綾の無音での意志疎通に戸惑う二人。
「あー…。その、訳を聞いてもいいか?」
「訳も何も、うちの班には後一人いるじゃない?それが答えよ。」
「「あ。」」
ここで二人も気付く。
「うん。だから、今度聞いてみようかな?」
「そうね。一応あの子も同じ班だしね。」
「だな。」
「そうね。」
「それじゃあ、あの子に連絡しようか。」
「どうやって?」
「「「え?」」」
桜井綾の問いかけに固まる3人。
「誰か、あいつの電話番号を知っている奴は?」
「「「・・・。」」」
「それじゃあ、家を知っている奴は?」
「「「・・・。」」」
「・・・。」
「「「「・・・。」」」」
全員固まる。それもそうだ。全員、何一つ、あの少年との連絡手段を持っていなかったのだから。
「…そうよ!確か、連絡用として全員分の電話番号をメモした紙が…!」
「あれね。あのこのだけ無いのよ。」
「なんで…!?」
言いながら桜井綾は気付く。何故電話番号が無いのかという理由に。
「そうよ。多分、先生が関係していると思うわ。」
その風間洋子の発言に、
「ち。」
男の子は舌打ちをし、
「「「・・・。」」」
女の子達は下を俯き、握りこぶしに力を注ぎこむ。
「…それじゃあどうする?他の案にするか?」
「「「・・・。」」」
男の子の発言に再び無音で返事を返す女の子達。
だが、
「…保健室。」
桜井綾はふと、ある少年が保健室登校していることを想い出す。それは、
「「「え???」」」
「そうだよ!保健室の先生なら…。」
「なるほど。あの先生なら知っているかもしれないわね。」
「それはありえるね。」
「だな。そうと考えれば、」
ここで男の子は、
「後で先生に聞きに行こうぜ。」
ニカっと笑い、言い返す。
「「「うん。」」」
女の子達も同意見となり、みんなの意見が一致した。だが、自由研究で何をやるのか、まだ決まっていない。
給食の時間が終わり、昼休みが始まった時、
「それじゃあ行くか。」
「「「うん。」」」
一同は保健室に向かう。
「「「「失礼します。」」」」
「…あら?みんなそろって怪我したの?」
「いえ、その…。」
「?何か訳があるのね。いいわ、私が話を聞くわ。」
「はい。実は…。」
4人は事情を説明した。
「…なるほど。自由研究をするため、連絡先を教えて欲しい、と。そんな感じかしら?」
「は、はい。」
「う~ん…。ちょっと困ったわね。個人情報を勝手に教えるのは…。」
と、保健室の先生は顔を曇らせる。
「そ、そうなんですか…。」
「ま、先生の言う通りよね。」
「え~?」
「なんだよ。教えてくれねぇのかよ。」
その様子にそれぞれ難しい顔を見せる。
「…そうね。なら、今ここで電話してみる?」
先生からの思いがけない問いかけに、
「「「「え????」」」」
数秒、顔が固まる。そして、一番に意識を取り戻したのは、
「い、いいんですか!?」
桜井綾だった。
「別にいいわよ。ま、私のスマホでかけて、そのままあなた達に渡すなら、なんだけど。それでいいかしら?」
そんな提案に4人は、
「「「「はい!!!!」」」」
元気に返事した。
「それじゃ、電話をかけてみるわ。」
先生はポケットからスマホを取り出し、電話をかける。
「…ところで、先生はなんで、電話番号を知っているのですか?」
「え?」
「そうね。私もちょっと聞いてみたいわ。」
「その子にだけ融通利かせている、とか?」
「それってずるくね?」
各々の感想を述べていることに、先生は若干難色を示す。
「ずるいって…。あ、もしもし、早乙女君?」
先生は電話に集中する。
「ごめんね。こんな時間に電話をかけて。用?え~っと…。」
先生は4人を見る。4人は、
((((電話を貸して!!!!))))
という意思を目で訴える。
「…とにかく、君の同級生達が、君に用があるらしいのよ。電話、代わるわね。」
と、先生は桜井綾にスマホを渡す。桜井は大切な物を扱うかのように受け取り、恐る恐る耳の近くにあてる。
「…もしもし、早乙女君?」
そして、桜井綾はその人、早乙女優に話しかける。
「あの。今度、自由研究の話をしたいのだけど。」
「「「「・・・。」」」」
4人は固唾を飲んで見守る。
「…え?日にちと場所?え~っと…」
ここで4人は気付く。具体的なことは何一つ決めていないのだと。桜井綾は目線で、(どう言えばいい?)と訴えかける。ここで見かねた風間洋子は、(電話貸して。)と、ジェスチャーする。桜井綾はその意思に従い、電話を渡す。
「もしもし?今綾から私に代わったわ。日時と場所についてなんだけど…。」
チラッと3人を見てから、
「来月の8月第一週の週末、昼頃に学校に集合でいい?」
この風間洋子の発言に、
「「「…え???」」」
3人は困惑を隠せなかった。何せ、今まで話も、決めてもいなかった予定をペラペラと語ったからである。幸いにもその日、誰も予定が入っていなかった。
「…そう。ありがとう。それじゃあ2週間後に学校にね。」
電話を切り、
「先生、ありがとうございました。」
「え?え、ええ。」
風間からスマホを受け取る先生に対し、
「おい!勝手に予定決めやがって!」
「そうよ!その日、私達に予定があったらどうするつもりよ!?」
「それじゃあ、その日に予定がある人はいる?」
その風間洋子の発言に、
「「「・・・。」」」
三人は黙り込む。それは肯定を意味していた。
「ならいいじゃない?」
「…ま、いいけどさ。」
「私も洋子ちゃんの案に賛成だよ。」
「洋子はいつだって私達のことを考えて行動してくれるし。」
女の子2人のよいしょもあり、男の子の鬱憤も晴れていった。
「これで早乙女君と話がついたわね。それじゃ、そろそろ昼休みも終わるころだし、次の授業の準備をしなさい。」
先生の先生らしい発言に、
「「「「は~い。」」」」
間が抜けているが、しっかりと返事を返す4人だった。
こうして、小学生達の夏休みが始まろうとしていた。
次回予告
『小学生達の夏休暇期待生活』
桜井綾達から電話をもらった時、優は仕事の最中であった。菊池と工藤は優の様子を気にするが、無害だと知り、一時期安堵する。だが、電話がかかってきたのは学校からだけではなく、ある子からも電話をもらうこととなる。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?
感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。




