特Aクラス特有の授業
俺とアリエルと学長が王女の返答に固まる。
「えーっと、エアロ王女様? 自分がなんで俺に固執しているのか分かってないの?」
「はい!」
そこ、元気に言うところか?
「もしかしたらだけどさ、女王に言われてその気になっちゃっただけじゃない?」
「……かも?」
「なら一度ちゃんと考えてから、それでもサハラが好きならアタックするべきだと僕は思うよ」
「……分かりました」
うーん、と悩みこみながらやっとエアロ王女は帰っていってくれた。
「助かったよ……助かりましたよ」
「いえいえ、一応、学長ですからね。それじゃあ後はごゆっくりどうぞ」
「ははははは……」
部屋に入り2人きりにやっとなれる。もちろんフェンリルもいるが、こいつは精霊だし俺とアリエルが仲良くしてるのが好きみたいだ。
「これで少しは王女も自粛してくれたらいいんだけどなぁ」
「そうだな」
「そう言えばサハラさん、お願いがあるんだけどぉ」
アリエルが色っぽくにじり寄ってくる。何かと思えば昼休みに王女が座った座り方をしてみたいと言い出してきた。
「あ、なんかこれいい……」
「そうなのか?」
「うん、確かに王女が言ってたようにサハラさんに抱き留められているみたい」
しばらくこの姿勢のままアリエルといる。そしてふと思い出した事をフェンリルに聞いてみる。
「なぁフェンリル、お前って魔法の目って見えたりするのか?」
“見える”
「マジか!? じゃあ今この部屋にあったりするのか?」
“ない”
俺はホッと胸をなでおろす。この世界の魔法使いは覗き見し放題か?
「あたしも魔法の目は気をつけているから大丈夫だよ。いくらなんでも覗かれたい趣味はないからね」
「そっか、じゃあ安心だな」
「それよりさ」
アリエルがグリグリとお尻を動かしてくる。
「どう?」
「どうって?」
「昼休みに王女がワザとこんな風に腰を動かしていたでしょ」
「見てたのか」
「んむ」
アリエルはかなり負けず嫌いだ。たとえそれが女神であってもだ。そして今も王女に対抗して同じ事をしてくる。
「ねぇもしかしてさ王女の時も……」
「言わないでくれアリエル、これは俺の意思じゃない……」
“ウシャシャシャシャ”
ボカッ!
「笑うな」
“あ、痛ー!”
翌日からはエアロ王女の猛アピールがピタリと止まり、やっと静かな学院生活が始まる。
学長の計らいで、俺がアリエルの事で集中出来なかった全系統のおさらいをしてくれたが、大半は冒険者ギルドの資料室で見た事と同じだったため特に問題なく済む。
アリエルは使える系統がどれと決まっていなくてバラバラだった為、学院で使う必要に迫られた時の一応3系統を決めているようだ。
俺も説明を聞いて力系統と防系統の他に何か覚えられればとは思っている。覚えられればだが……
ちなみに大抵のウィザードはこの中から得意系統1つに3〜5の系統を扱える。
得意系統と扱える系統の違いは、記憶できる量が増えるんだそうだが、どうやら俺が扱える系統には得意系統すらなく、一応扱えるだけのようだった。
ちなみにデノンは力、防、変、占、総系統が現状扱える系統らしい。
ビクターは力、防、幻、召、総系統で、特に召系統が得意だそうだ。
この特Aクラスにいる他の生徒達は小魔術を扱え、更に力、防、幻、召、変、占、精、総の系統のいずれかが少し使えれば入れる為、この国出身であれば親に教われば扱える者は多くいる。
ただ特Aクラスはかなり飛ばして教える為、ワザと避ける者も少なくない。それ故に今もこうして王女も入れると10名しかいないのだ。
そして早速その特Aクラス特有の授業が始まる事になる。2チームに別れてある場所で競い合ってもらうというものだ。
「それじゃあ今から2チームに別れてもらうよ。リーダーは冒険者経験の無い人がやってね」
そうなってくると俺とアリエル、デノンとビクター以外となり、1人はドゥーぺが立候補し、もう1人がなんとエアロ王女に決まった。
『アリエル、俺、今非常に嫌な予感がするんだが……』
『奇遇ね、あたしも同じよ』
仲間に加えるメンバーはリーダーが1人ずつ選んで決めるかたちになり……
「順番は立候補したドゥーぺ君から選んでね」
「はい、それでは……アリエルさんでお願いします」
アリエルがドゥーぺの処へ行く。そしてエアロ王女の番になり、当然……
「サハラ様です!」
だよねー。
こんな感じで別れていきーー
ドゥーぺはアリエル、ビクター、アルナイル、アリオトとなり。
エアロ王女は俺とデノン、ベネトナシュ、ミラで決まった。
「じゃあまずリーダーがメンバーを選んだ理由をしっかり言ってもらうよ。ドゥーぺ君からどうぞ」
「はい! まずアリエルさんですが、神聖魔法が扱える為選び、ビクターさんは召喚が得意の為、壁となってくれる魔物が呼べると思ったからです。アルナイルさんとアリオト君を選んだ理由は会話をよくしているので、性格がわかる為です」
「なるほどねぇ。じゃあエアロ王女どぞー」
「はい、サハラ様はドルイドですから回復も攻撃もできる為とフェンリルがついてくる為、かなり優位であると選ばせてもらいました。そして冒険者経験のあるデノンさんかビクターさんは外せなかった事、ベネトナシュさんとミラさんはお互い幼い頃からの付き合いがあって意思疎通がうまく取れていることから選ばせてもらいました」
「ふむふむ」
エアロ王女はてっきり好きだとかそういう事を言うとばかり思っていたが、しっかりとした理由を言ってきたのに驚く。
「うん、2人の選択はほぼ問題無いね。あるとしたら、仲間同士であり恋人同士でもあるサハラ君とアリエルさんが離れてしまった事だけど、理由としては正しいね。
それじゃあ明朝から特Aクラス特有の実践学習を行うからチームで準備をしっかりしておくように」
それじゃあと学長は教室から出て行ってしまった。
今日はここまでです。




