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調査

 そんなわけで長期休日の前日、学院では帰宅のためにざわついていた。

 それはここ特Aクラスでも例外ではなかった。


「サーラさん! 長期休日はどうするの?」

「はい、えーとそうですねぇ」

「決まっていないなら俺達と過ごさないかな?」


 アダーラとサルガス、ウェズンにシャウラが俺を見ている。

 グランド女王の話では何か対策が施してある様だったため、とりあえず了承しておいた。


 程なくして学長(キャス)が教室に来て、おきまりの長期休日の際に怪我や病気などしない様注意するとおしまいになった。


「そうそう、言い忘れてた。サーラさん。長期休日はマルボロ王国で侍女の特訓だそうなので、終わったらそのまま僕と来る様にね」


 それを聞いて俺はすぐにレグルスを見て頭を下げた。


「それじゃあ解散。気をつけて帰るんだよ」


 そう言って教室を出て行く。


「レグルスさんゴメンなさい。そういう事なんで、行けなくなりました」

「サボっちゃえばいいじゃん」

「さすがにそれは……怖い侍女長にこっ酷く怒られてしまいますよ」


 さすがのレグルスもこれには強く出る事ができなかったのか、諦めた様だった。


「それではまた休み明けによろしくお願いしますね」


 頭を下げて教室を出た。

 教室を出ると学長(キャス)が待ち構えていて、俺が出てくるとついて来る様に行ってくる。


 学長室に入り、扉を閉めると魔導門(ゲート)を開いてそのままキャビン魔道王国の宮殿に辿り着いた。


「魔法ってやっぱり便利だなぁ」

「じゃあ勉強して覚えなきゃね。サハラは何系統が使えるんだっけ?」

「そうだな、バルロッサに教わったから、力系統と防系統、それと死系統ちょっとだけ」

「うわ、死系統使えるんだ。僕が唯一使えない系統なんだよそれ」

「マジか!?」

「うん、死系統は死の神の魔法だからね。魔法の神とは別物なんだ。でも、教われないとなると無駄になりそうだね」

「いや……一応、一通り呪文書には全てあるぞ」

「……じゃあサハラは死者を蘇らせたりできちゃうんだ」

「い、一応な。使った事は無いぞ」


 そうこうしていると、アリエルの待つ部屋に辿り着いた。


 無事に帰った俺を見て飛びついてくるアリエルを抱きとめ、その感触を味わう。


「今日は大丈夫だよね?」

「ああ、短い時間だし多分大丈夫。

それより俺達は後はどうしたらいいんだ?」

「うん、女王が後で来るはずだよ。サハラは元の姿にして貰っておいてって。僕は学院に一度戻るから後でね」


 アリエルが魔法で俺の女体化を解き、元の姿に戻る。2人きりになると前にも増してイチャイチャするようになった気がする。


「何だか最悪な学院スタートになっちゃったな」

「そうだねー、でも、んふふ。サハラさんの気持ちがはっきり聞けたのは嬉しかったな」

「いやまぁな。もう恥ずかしいから言わないぞ」

「言って、くれないの?」


 上目遣いでアリエルが言ってくる。こんなアリエルを見たら抱きしめたくなるのだがーー


“サハラ、久しぶりに肉喰いたい”


 空気の読まない奴が姿を出した。アリエルがフェンリルを見て、俺を見た後クスクス笑う。


「そうだな、ここ最近ずっとピアスから出れなかったもんな」

「我慢してたもんね」

“我慢したから肉ー”


 そこへグランド女王が姿を見せる。俺たちのやり取りを微笑ましく見つめながら、侍女に指示を出していた。


「今お肉を持ってきますから待っててくださいね」

“やった!”

「すいませんねご迷惑ばかりかけてしまって」

「いえいえ、迷惑ばかりでは無いですから」


 エアロ王女の事だろう。思わず苦笑いが出てしまった。


「サハラ様は気兼ねなくエアロを抱いてあげるだけでいいんですよ」

「いや、ははは……」


 肉の塊を持ってこられるとフェンリルが喜び、早速喰らいつ……かなかった。


“サハラ、切って”

「お前喰い千切れよな!」

“ひと口大で食べるのが美味しいんだよ”

「あっそうですか……」


 フェンリルが肉を食べ始めるのを見ながら、グランド女王に今後を尋ねると、まず例の植物の調査を行うとの事だ。

 と言うのも、多少であれアリエルが依存している事と、もっと依存しているであろうレグルスの仲間をどうにかできないかを調べる為らしい。


「アリエルさんは煙の匂いをあれ以来嗅いでいないけど、欲求とか副作用は起きてないのかしら?」


 するとアリエルが顔を曇らせながら口を開く。


「実は、欲求はあります。だけど、サハラさんといると満たされた感じがあって我慢できるんです」

「そう……つまり、欲求はあるけどまだそこまででは無いということかしら。

とりあえずこの後その場所に向かって、サハラ様にその植物と会話をしてもらわないといけないわね」

「分かりました。でももしレグルスと鉢合わせたらどうするんですか?」


 魔法の目を使ってあちこちを監視してあるそうで、今レグルスがどこに居るかすぐに見つかるという。この魔法の目は感知(センス)には反応しない為、見張られた場合の対処法が魔法でしか術が無いのは困りものだ。


“喰った”


 満足そうな顔でフェンリルが俺を見つめる。もしかしたらコイツなら気がつくんじゃ無いかと思い、後で確認を取る事にした。



 俺とアリエルとフェンリル、それとグランド女王だけで町の外へ出る。もちろんグランド女王の魔法でだ。


「ここからは魔物もいないというわけでは無いから、気をつけていきましょう」

「久しぶりに暴れたいから、出てくれた方が嬉しいですけどね」


 俺がそう言うとグランド女王が笑う。アリエルは既に辺りを感知(センス)で見ているようだった。


「サハラさん、確かこの辺りの森を入ったところよ」

「グランド女王大丈夫ですか?」

「何がですか?」


 俺が気を利かせてグランド女王に披露していないか声を掛けたが……飛行(フライ)を使って移動していたようでその心配は全くなさそうだった。


「あった! サハラさん、間違いないわこの植物よ」


 俺はアリエルの言うその植物に近寄って行った。


終盤らしくなってきました。

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