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アンチ・ハロウィン  作者: 日雀青柚
第五章 犬の手を借りる
42/56

◆4

「早速ですが、道路のことについて伺ってもよろしいですか」

「ええ。といっても有名な話なのでここに住んでいる人に聞いたらみんな同じことを話すと思いますよ」

「そんなに有名な話なんですか」

「田舎なので話が回るのも早いですしね。大体二週間ぐらい前からでしょうか、かぼちゃがあそこにあらわれるようになったのは」

「犯人がわからないんですよね?不思議な道路ですね」

「あの、変な話だと思わないで欲しいんですけど」


 小野は一旦言葉を区切った。目の前にいる刑事たちにおかしい人だと思われたくないのだろう、目が泳いでいる。


「思いませんよ。どうされました?」


 エンは優しい声で話の続きを促した。


「あの道には幽霊がいるんです」


 やはり、と真鵬は心ばかり前のめった。


「その幽霊がかぼちゃを持ってきて割っている、と」


 驚くことも不信がることもなくエンは小野の話を紡いだ。これが今回の本題だ。かぼちゃと人魂の関係について掘り下げていかなければならない。

 むしろ微塵も驚かないエンに驚いたのは小野だった。外部の人間がこんなすんなり話を飲み込んでくれるとは思わなかったのだろう。


「私たちはそう信じていますが……阪下さん、驚かないんですか?」

「実はその話を事前に聞いていたものでして。とは言っても小耳に挟んだだけなので詳しくはないのですが。どうやらこの辺りでは有名な幽霊のようですね。幽霊というよりは人魂のようですが」

「ええ、そうです。みんな知っています。いわゆる火の玉のようなものです」

「なるほど。昔は人魂の目撃談などありませんでしたか?」

「特には……。でもお寺の墓地が近いせいか、数年に一度ぐらいは人魂が出たという噂が流れることがあります。かといってなにかが起こるわけでもなく、それで終わりなんですけどね」

「それはやはり成仏しきれていない魂でしょうか」

「そうだと思います。まだ現世に未練があるんでしょうね……」


 小野は一区切りしたあと、言葉を続けた。


「今回、今までの人魂と違うのは、とにかく量が多いんです。あそこの国道、夜行けばわかると思いますが本当に暗いんです。車のライトを付けないとなにも見えません。そんな道路が二週間前に突然出てきた人魂によって煌々と照らされるようになりました。あの光景は不気味ですよ。そんなことがあってから、国道にはかぼちゃがばら撒かれるようになって、しまいには石をぶつけてきたリするんです。一度お寺の住職さんが現場に行って様子を見てくれましたけど、ただ構って欲しいだけの寂しがりやな人魂たちだから心配ないという結論に至ったようです。といってもわたしたちは迷惑しているんですけどね」


 小野は自分のコーヒーを一口飲んだ。心を落ち着かせようとするようなその仕草になんとなく真鵬は変だな、と感じた。ただ喉が渇いただけかもしれないが、それにしてはなにかに怯えているように見える。


「今まで噂があった人魂はなにか悪さをするようなことはありませんでした。なのに今回はまるで何かに怒っているかのように暴れ出したんです。石を投げつけるなんてこれまでありませんでした。もう何がなんだかさっぱり……。事情を知っている人はもう誰もあそこを走りません。元々そんなに交通量が少ない道ですから、今ではもっと閑散としている道になってしまいました」


 真鵬は手帳にメモを取りながら話を聞いていたが、隣に座っているエンはこの話に納得がいかない様子だった。


「住職がそこに行ったんですか。どちらのお寺から?」

「近所の福連寺ふくれんじというお寺です。ですがそこのお坊さんがついこの間大きな岩を投げつけられてしまって、お寺側も対応を検討中のようです」

「なんと」


 腕を組んで考え込むエンに真鵬はメモを取っていた手を止めた。組んでいる腕に右手の人差し指でトントントン、とリズムを取り始めた。難しい顔をしている。


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